アメリカ北東部にあるマサチューセッツ州のコンコードという自然豊かな町で生まれ育った、DH・ソローは1845年にその地の深い森でほぼ自給自足の生活を2年間過ごしました。この体験を基に、哲学、自然観を記したのが『ウォールデン-森の生活』(1854年刊)です。現在のモノが豊饒な時代に、ある意味、アンチテーゼ満載の1冊です。そして、ミニマリスト必携の、シンプル生活のバイブルです。『モノやお金がなくても豊かに暮らせる。』は『ウォールデン-森の生活』から選び抜かれた110の素晴らしメッセージ集です。
「なぜ感動を買い求めようとするのだろう。外に出て歩けば、一年の四季の変化の中に、千年にも及ぶ感動が待ち伏せている。」
先日、三重県のなばなの里へ行きました。イルミネーションの美しさは格別でした。しかし、日没の夕陽はそれ以上でした。「もののあわれ」を鑑賞する気概を持っていた日本人も自然から離れ、ほんの少しの変化さえも見いだせなくなってしまったのですね。
「必要ないモノはすべて捨てよ。そして決別せよ。たいして欲しくはないモノを買わされるために働く人生と。」
経済の歯車の中にいる私たちは買い物中毒になってはいないだろうか。本当なら自分で作ることが当たり前だったのに。その時間さえも奪われている可能性があります。
「人物の最高点と最深点は所有物の多さではなく、普段の行動と生活の波で決まる。」
このソローの言葉にはぐうの音も出ません。所有物で人を判断するのではなく、その人の所作、その所作を生む考え方ですね。
3つだけ選びましたが、付箋だらけになりました。含蓄ある言葉は生きる力を与えてくれます。
『モノやお金がなくても豊かに暮らせる。―もたない贅沢がいちばん』(ヘンリー・D・ソロー著、増田沙奈訳、興陽館、本体価格1,300円)