アバウトなつぶやき

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吉田博 木版画展-抒情の風景

2017年01月19日 | かんしょう
ただいま名古屋ボストン美術館で開催中の「MOA美術館所蔵 吉田博 木版画展-抒情の風景」を観てきました。

あのダイアナ妃が愛した日本の版画があった!作者は吉田博(ひろし)。もともと水彩画・油彩画で腕をふるっていたが、49歳で木版画の道へ。なぜ?知られざる魅力とは?

水面に写る船の影のゆらめき。山頂に朝日があたる一瞬の光…。ダイアナ妃が執務室の壁にかけていたのが吉田博の木版画。水の流れや光のうつろいを驚くほど繊細に表した。博は大正・昭和に傑作を生んだが、日本ではほとんど知られていない。それはなぜ? 水彩・油彩で才能を発揮していた博は、49歳で木版画を始める。西洋画の微妙な陰影を版画で表現しようという前代未聞の挑戦だった。その超絶技巧を徹底解明、魅力を探る!

日曜美術館でこんな風に紹介されていた吉田博。
※ちなみに次回1/29はアンコール放送なので「木版画 未踏の頂へ~吉田博の挑戦~」を再び見ることができます。

現在、生誕140年ということで各地で吉田博巡回展が開催されています。
そちらは彼の画業を振り返る構成で肉筆画を含むようですが、名古屋で開催されているこの展覧会はMOA所蔵の版画が中心で水彩や油彩画は観ることができません。それはちょっと残念。

最近は美術館もメジャーになりつつあって、アート業界では国内であまり知られていない芸術家を発掘する動きが盛んなように思います。
昨年、5時間待ちという恐ろしい記録を作った伊藤若冲も近年発掘された画家。そういう点では吉田博もその一人でしょう。「ダイアナ妃お気に入り」という謳い文句があるのでメジャーになる素質は十分という気がします。

名古屋ボストン美術館、展覧会のリーフレットに力を入れてるなぁと感じます。
普段からA4数枚分に当たる折り込み・見開きタイプのしっかりとしたリーフレットなんですが、今回は紙の質を変えて2タイプのチラシを作り、そこにプラスして来場者には作品目録とは別に「吉田博と巡る 全国名所の旅」というリーフレットを配る構成です。このリーフレット欲しくて観に来ちゃう人がいるかも、と思えるなかなかの出来です。


▲マットな質感の紙を使い「光る海」をピックアップしたチラシ


▲ツヤコートタイプの紙を使い「亀井戸」をピックアップしたチラシ。裏面はこの2つの絵を差し替えています。

吉田博の版画は版画とは思えないほど色が深くて美しく、驚くほど光の輝きを感じます。
今回、水彩画は展示されていなかったので印刷物の彼の水彩作品を見たのですが、水彩の持つ質感と日本の風土がとても合致した素晴らしい作品を描いていました。
そして、それを木版画という違う技術で再現する技術の高さに驚かずにはいられません。
自費で専属の職人を雇い、普通の木版画が30回程度の刷りで上がるところを吉田博の木版画は多いものでは96回の刷りを重ねているというのですから驚きです。
しかし、それだけの熱意とこだわりがあったからこそあの微妙な色合いを表現することができたのだと頷けます。
水の映り込み、乾いた石、夕日に染まる空間、さざ波のゆったり感、水の泡立ち、しっくい壁、水たまり、、、。
どれもその質感と美しさを十二分に表現しています。
また、ある作品では手前に桜が咲き乱れ奥に建物のある様子が描かれていたのですが、まるで建物にピントを合わせて撮った写真のように手前の桜がぼやけていて、版画の表現の多様さを感じました。



▲来場時にいただいたリーフレット。今回の展覧会の内容を上手にまとめてあります。

版画は色んな場所で見れるという利点がありますね。
肉筆画にも興味があるのですが、木版画だけでも十分に堪能することができたので今回は十分です。また機会があれば彼の作品をもっと観たいと感じる展覧会でした。

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