アバウトなつぶやき

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「月映(つくはえ)」展

2015年04月21日 | かんしょう
先週末から愛知県美術館で始まったばかりの「月映」展を観に行ってきました。いつものようにシロウタが一緒。
この展覧会は巡回展で、昨年から宇都宮と和歌山を回ってきました。そちらの広報でこの展覧会のポスターを見た時にどうしても気になってしまい、名古屋に来るのを首を長くして待っていました。





1914年9月、三人の美術学生によって60ページたらずの冊子が世に送り出されました。
田中恭吉・藤森静雄・恩地孝四郎、それぞれが刻んだ木版画と彼らの詩をまとめた「詩と版画の雑誌」、『月映』です。
(中略)
本展では、『月映』が刊行されて100年となるのを記念して、その内容と意義をあらためて見直します。

▲HPより抜粋

特に高名な画家達というわけでもない3人を取り上げた企画だったので、シロウタを誘って良かったのかなと思いながら足を運んだのですが、、、観終わって顔を合わせた私達の感想は「面白かったね!!」
珠玉の名作ってのは無いのですが、あの空間には萌えが詰まってました(笑)

「月映」をテーマにしてはいるけれど、実際はこの3人が一番輝いていた人生ドラマを追いかけている感じです。
シロウタに言わせると「劇場型」演出であり、美術館でありながら映画を見ているようだった、とのこと。うん、そんな感じですね。

3人の情熱、それを取り巻く周囲の温かさ、死を間近にする悲哀、そしてそれらを昇華しようとする姿…それはまさに青春!
田中の死後に萩原朔太郎の「月に吠える」の装丁に使われたりとかも相まってドラマチックな仕上がりになっています。
年表なんかも、「月映」廃刊後が一切無いんですから徹底したもんです。

これも若い人の企画なのかなぁ。
新しい試みだったね!とシロウタが興奮しておりました。

ちなみにこの展覧会、公式サイトがあります。それがこちら→http://tsukuhae.com/

最近、博物館などの公式の文化施設でコミック調のイラストで人物紹介をしているのを見かけるので「若いもんを取り込む作戦に出てるなぁ」と感心していたのですが、今回のこの「月映」公式サイトも3人がツイッターで語り合っている形式の紹介なんかがあって大変面白い。
私は先にこのHPを見ておいて良かったと思いました。
3人の関係性がとてもよくわかるし、この初々しさで脳内変換されるのでマンガ脳の人間には資料以上の想像力をかきたてられます。
この展覧会でマンガが一作品出来ること間違いなし。二次創作も絶対イケる。


▲HPでは月映の3人をイラストで紹介。


マンガ脳ついでにこちらも紹介。↓

▲つい先日、同僚が西南戦争遺跡を訪ねて田原坂(たばるざか)資料館へ行ったんだけど、そこの人物紹介が衝撃的だった。キャラステッカーとか作ってるんですよ。手元に資料が無いのが残念!

きっとこういう手法は賛否両論なんだと思うけれど、なんだって門戸は広い方がイイと思うんです。

刀剣乱舞ってゲームのおかげで刀剣鑑賞する人が増え、徳川美術館の来館者が増えてたりするのだって嬉しことじゃないですか。にわかと言われようとミーハーと言われようと、文化財が注目されるのは喜ばしいことです。
きっかけはなんであれ、興味の対象が広がるというのは人生が楽しくなります。
Jリーガーは「キャプテン翼」を読んでサッカー始めた人も多いし、松岡修造だって「エースをねらえ!」が大好きでしょ。クールジャパン、万歳!!
ついでに刀剣に関しては、日本刀の刃の鑑賞ポイントが全く分からなかった私にレクチャーしてくれる人が現れるのではと期待しています。

展覧会のドラマ性ばかりに注目してしまいましたが、作品もそれぞれ素晴らしかったと思います。
「ボクの心のやらかい場所をしめつける」って感じの作品が多いです。

版画好きの方や文学好きの方の他、二次創作の好きな方にもぜひ観て頂きたい展覧会でした。

「空飛ぶ美術館」展

2015年04月02日 | かんしょう
ただいま三重県立美術館で開催中の「空飛ぶ美術館」展をシロウタ母子と一緒に観てきました。



空や飛翔に関する今回の展覧会。観ていてすがすがしい作品が多く、とても晴れやかな気持ちにさせてくれます。
第1章 空の表象
第2章 空飛ぶ生物への関心
第3章 空想飛翔
第4章 飛ぶためのテクノロジー

という4部構成で、それぞれのテーマに沿った作品なのがまた観やすいです。作家のもつイメージに捕らわれることなく楽しむことができます。
かわいらしい絵やモダンな作品が多いため「これ、うちにあったら良いなぁ」と思いながら観てきました。


カミーユ・ピサロ《ライ麦畑、グラット=コックの丘、ポントワーズ》1877年 静岡県立美術館
このような王道の絵画って感じの印象派絵画から


本多錦吉郎《羽衣天女》1890年 兵庫県立美術館

竹内栖鳳《散華》1910年 京都市美術館
飛翔をテーマとした様々な作品、


北脇昇《空港》1937年 東京国立近代美術館
近代以降、人間が飛ぶことができるようになり空が身近になって、なお鮮明に浮き上がる空への憧憬を感じる作品などが集められています。

HPから拝借してるので、気になった作品の画像がないわけですが…
黒田清輝の「雲」という6枚組の作品は近寄ると粗い筆使いなのに、まるで雲の写真集を見ている気分にさせてくれます。
空飛ぶ生物=鳥を描いた竹内栖鳳のスケッチは羽根の質感まで感じる素晴らしさ。
また、永沼理善「自重力BOY 2007:"Inba"」という作品(リーフレット裏、中央上)は天井から吊したワイヤーで金属製のからくりマシンが振り子の原理を使ってゆったり動く姿が大変優雅というか愛しい動きをしていて目を奪われました。3時間ぐらいかけて上から下へ降りてくるそうで、何もしない時間が許されるならずっと見ていたいと思えます。
そして、私が一番気に入ったのはイリヤ・カバコフの「自分を良くする方法/翼」という作品。
展示ケースの中には革の胸部ホルダーと白い天使の羽根のような人工物を使って作られた簡易装着できる翼が入っています。そして、その横にはイラスト入りの説明文。
絵が美しいとか造形が凝っているとかじゃなく、語られている内容が面白いのです。
人は誰しも良い自分でありたいと思う。そんな自分を手に入れるためにこの翼を装着して数分(だったかな?)過ごし(しかもひっそりと)、外して2時間ほど過ごす。それを繰り返していけばいい、というような内容なのです。
この、わけのわからない提案の説得力がたまらない!擬似天使体験?ともいうようなこの提案に思わず乗っかってみたくなります。
イリヤ・カバコフさんをググるとウクライナの前衛芸術家って紹介されてますね。他にはどんな作品を発表してるのか気になります。


さて、現在企画展はこのように空を紹介しているのですが、三重県立美術館2階の常設展示は「海の上の美術館」と題して海を描いた作品がたくさん展示されています。これもまた、対照的でとても良いです。
特に三重県内の海を題材にした作品が魅力的です。「地元」という泥臭い雰囲気でなく「海」という美しい洗練された世界が広がっています。

今回の企画展はとても面白いし作品も粒ぞろいだと思うのですが、観覧者が少なくてとても静かでした。春休みなのに!
若い学芸員さんが企画なさってるとか。私はこの感覚、とても好きです。
家が近かったら何度でも行くんだけどなぁ~。ホントもったいない。

5月6日まで開催してるので、もしも時間があったら後期展示も観てみたいところです。(ちょっとキビシイかな)