アバウトなつぶやき

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戦後70年記念「20世紀日本美術再現 1940年代」展

2015年08月22日 | かんしょう
今週の半ばから週末にかけて、三重県美術館の県民ギャラリーでは武蔵野美術大学 校友会展覧会「第32回 び・SAM展」を開催していました。
同僚のまっちゃんが出品しているので、この数年は毎年足を運んでいます。
彼女はいつも「時間があったらもっと描き込みたかった」と言うんだけど、私から見ると完成してるとしか思えない美しい絵を描きます。
日本画のような淡い色彩の油絵。普通は色を重ねると深い色になりそうなものだけど、彼女は重ねて重ねて淡い色を表現するのです。
今年の絵は彼女自身の思惑に近い表現が出来ているようで、ぜひポストカードにして頂きたい。

現在、美術館の企画展では、戦後70年記念「20世紀日本美術再現 1940年代」展を開催中。

▲持ち帰る時に折ってしまったリーフレット。痕が付いてしまった(汗)

平日に搬入したまっちゃんから「人が全然いなくてガラッガラだった」と聞いてたんだけど、さすがに土曜日はそれなりに人が入っていました。
それも小~中学生ぐらいの子が多く、中学生のグループが展示室横の読書スペースでレポートのようなものを書いていて夏休みを感じました。
実際、県民ギャラリーでも「夏休みのレポートのために来たの」と言う次男の同級生のご家族に会いました。県内の中学校では夏休みの宿題に美術館レポートを推奨してるのかもしれません。

さて、企画展示室に入ると見事に黒・灰・茶色のトーンの暗い作品ばかりです。

▲モノクロなのは写真だけで絵画や陶芸は違います。それでもリーフレットをカラーでなくグレートーンにしたのは経費の問題だけではないと思われます。

戦争を題材としている作品は写真にせよ絵画にせよ華やかで美しいものはありません。美しいものをあげるなら、懸命に生きる人間の生命力でしょうか。
暗いトーンの部屋の中に富士山の四季を描いた横山大観の絵がありました。戦争の中にあっても優美な富士山の姿を描いています。
横山大観は国粋主義だったので、日本の象徴ともいえる富士山を描くことによって戦意昂揚を図っていたのかも知れません。
モノトーンの展示室の中で色彩を見つけたものと言えば戦時中は富士山、戦闘機、雑誌のタイトルに使う赤い文字と言った日本を称えるモチーフです。
その後、終戦辺りの時代になると原爆を含めて本当に悲しい場面が多くてはっきりとした色を見つけるのが難しいのですが、その中に廃墟の向こう側に見える空の青を見つけました。
その絵の空の青には希望を感じるのではなく、不変の自然と人間の愚かさの対比を見た気がします。
戦後は時代の流れや芸術家たちの苦悩と昇華を感じる作品になっていきます。
その様子を見ていて、人間というのはどんな時代も生きることを選び続けるんだと感じました。

今年、戦後70年を迎えてテレビでも新聞でも戦争の話題を目にします。
そして戦争を知る人が数少なくなっていること、その人たちが語り伝えることが急務であることが注目されています。
自分の子どものころを振り返ってみると「戦争は悲惨である」ということだけを聞いてきた気がします。そしてそれを聞くたびに「恐ろしい」思いと「自分はその時代に生まれなくて良かった」という安堵の思いがセットでありました。
しかしそのセットは皮肉なことに「自分とは関係のない話」として受け止めないと不安で押しつぶされそうになる部分を孕んでいました。
そうした時、自分の感性に近い当時の人の話を聞くことによって「平穏な日常を脅かすもの」として戦争を身近なこととして受け止めることができるのです。
ああ、当時の人も同じように毎日を暮らしていたんだ。なのに、戦争のせいであんなこともこんなことも変わってしまった。今ならばあの歌もダメ、あの本もダメ、あれも食べられない、こんなことも言えない、ああ、なんて不自由でクレイジーなんだろう、、、と。

今、安保法案で日本は揺れに揺れています。
特定秘密保護法なんかも含めると本当にきな臭くって、出生率が男児のほうが高いって話を聞いてもドキリとしてしまう。いやだ、いやだ。
子どもの躾じゃあるまいし、暴力は痛い、他人と自分は違う、他人のものは欲しがるべきじゃないって分かっていれば戦争なんて起きないのに。
…色々と話が散らかってきました。戦争の話題は簡単にまとめられないのでこの辺で。
画家たちの個を表現しようとする姿に、現代の我々が自分の個性を発信しようとする姿が重なって時代を身近に感じたと言いたかったんです、はい。

この企画、名古屋市美術館とタイアップしてます。→「画家たちと戦争」展
同じ時代なので同じ画家の作品がたくさん紹介されています。
日本美術史上、重要な位置を占めている画家という理由もあるでしょうが、あの時代に作品を残せる人はそう多くなかったという事もあるんでしょうね。

クレマチスの丘 -クリスティアーネ・レーア展-

2015年08月09日 | かんしょう
夏休み恒例の子連れ美術館めぐり、今年は静岡にあるクレマチスの丘に行ってきました。

ここはクレマチスの咲き乱れる庭園を中心に、美術館やレストラン他の施設が配された複合文化施設です。
美術館スケジュールを見ていて行ってみたくなりました。

ここはヴァンジ彫刻庭園美術館。

イタリアのジュリアーノ・ヴァンジという彫刻家の作品を常設コレクションにしています。この館内は撮影可能です。



近代的だけれど落ち着いた空間に彫刻がほどよく配置されています。
いろんな素材を扱う方のようで作品がとても変化に富んでいますが、余裕のある空間なので隣にまったく雰囲気の違う作品があっても気にはなりません。

館名に庭園、と謳っているだけあって庭園はお見事です。
四季を通じてクレマチスを楽しめるような植栽や、秘密の花園を思わせる小径、そしてグリーンの芝生の中や建物に姿を見せるヴァンジ氏の彫刻達。
とても気持ちの良い空間です。

今回ここへ来たいと思わせた企画展、「クリスティアーネ・レーア 宙をつつむ展」はこのヴァンジ彫刻庭園美術館で開催されていました。



植物や動物の毛などを使って作られた作品達。
何の形と特定するのでもなく、ただふんわりとそこに「在る」感じが心地よいです。

少し離れたところにはベルナール・ビュッフェ美術館があります。こちらは撮影不可です。

企画展はフリースクールに興味のあるママならご存じ、シュタイナー教育で有名なルドルフ・シュタイナーを紹介する「ルドルフ・シュタイナーからのメッセージ展」でした。
黒板ドローイングが紹介されており、「見に見えない世界」を説明しようとする様子が読み取れます。
しかし展覧会だけでは到底シュタイナーの思想を理解するのは不可能です。思想としては大変興味深いので、機会を見つけて書物などを探ってみたいと思いました。
なお、本来の常設であるベルナール・ビュッフェの作品はとても力強く、迫力がありました。


迫力ありすぎたのか、同行した次男に「なんでかーちゃんの観る絵はこんなんばっかりなん(ーー;)」と言われました。先月は片岡珠子だったし、確かに力技の画家が続いてるかも…。
そういう意味で、人物画よりも静物画が観やすかったですね。ビュッフェは。
この館はこども美術館も併設されていて家族向きです。とってもかわいいカフェやショップがあります。


また、隣には井上靖文学館があり、駿河平自然公園(町営)と隣接しているため周囲の雰囲気もばっちりです。

美術や文学好きの方だけでなく、観光地としても十分すぎるほど楽しめる場所だと思います。
月曜日でなく、水曜日がお休みなのも他との差別化がはかれるのかもしれません。
とても美しい空間だったので中学生の次男も気に入りました。あ~、良かった♪