アバウトなつぶやき

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山形美術館の名品と荻須が見たパリ画壇

2018年11月27日 | かんしょう
 今まで行ったことが無く、いつか機会があったら行きたいと思っていた稲沢市荻須記念美術館
 今回の企画展「山形美術館の名品と荻須が見たパリ画壇」に合わせて足を運びました。




 私の荻須高徳に抱くイメージは、ユトリロや佐伯祐三に似たパリの街並みを明るめの色調で描く画家、というもの。
 そういう言い方をすると二番煎じっぽい響きがあるので荻須ファンに叱られそうですが、あまり間違ってはいないんじゃないか、とも思う。
 実際に佐伯とは交流があり、早世した佐伯の死にも立ち会っているそうで、佐伯の真似というよりはお互いがユトリロの影響を受けていた時期があった、ということのようです。
 荻須はその後、作風を変化させながらパリの風景を描き続け、パリでの評価も高まっていくわけです。

 今回、山形美術館のコレクション展ということで「へぇ、山形美術館は近代絵画が多いんだな」と思ったのですが、山形美術館は荻須に収集協力を依頼していたとのことで、このコレクションの形成に携わった本人だったわけです。だからココで山形美術館なんだ、と解説を読んで納得しました。

 よく名を知られた20世紀巨匠の作品と、戦後のパリの画家の作品とが紹介されています。
 ルオー、ローランサン、ボーシャン、ヴラマンク、ユトリロ、シャガール、ピカソ、キスリングを巨匠コーナーで紹介し、その他、20世紀の色んな画家を紹介しています。美術館自体が大きくはないのでそれぞれ1点ずつですがこの時代を感じ取れるまとまりのある展示です。
 「チクチクしたタッチ」と評されたジャン・カルズーの《魔法のメリーゴーランド》は青の表現が多彩で深い世界観を持っている気がして気になりましたし、その隣に展示されていたベルナール・ロルジュの《スイカのある静物》は大胆なタッチで描かれたスイカの色がピンクがかった明るい色で美しく、色んな表現が生まれた時代なんだなぁと実感しました。他に気になった画家を覚え書きするならルネ・ジェニ、クロード・ワイズバッシュ、アンドレ・コタヴォと言ったところでしょうか。
 展示数は多くないのですが、平日にもかかわらず人の入れ替わりが多くて観覧者が多い印象を受けました。
 稲沢の文化ゾーンにあるとても雰囲気の良い美術館なので、市民の皆さんに愛されているんでしょうね。

深堀隆介展

2018年11月16日 | かんしょう
 もう終わってしまった展覧会ですが、備忘録としてちょっとアップ。
 樹脂を何層も重ねて金魚を描き、立体風にする深堀隆介氏。刈谷市美術館で展覧会がありました。




 金魚を描き始めた初期の作品から、現在のものまで展示されています。


 2010年代を迎えたあたりからリアル感が増してます。現在の作品はホントにリアルだし、アートとしての幅が広がっているように思います。

 ▲こちらは「平成しんちう屋」と題した、金魚屋さんをイメージしたインスタレーション(かな?)の一部分

 他にも写真は撮れませんでしたが、アンティークの器や家具を利用しているの作品が良かったです。

 一緒に行ったまっちゃんの希望で、帰りには金魚と文鳥の町である弥富の弥富歴史民俗資料館へ寄って、白文鳥のブンちゃんと遊んできました。

 弥富の水の町である歴史を知るとともに、生き物とも触れ合えて、小さいながらも楽しい資料館でした。

京(みやこ)のかたな展

2018年11月15日 | かんしょう
 

 すでに先月のことになりますが、京都国立博物館で開催中の「京(みやこ)のかたな」展を観に行ってきました。
 刀剣ブームのおかげでかなり盛り上がっているこの展覧会。
 もともと刀は興味がなかったし鑑賞ポイントもわからないので敬遠していたのですが、開催に当たってニコ生で放送された解説番組がものすごく面白かったので観に行こうかという気になったのです。金属という素材は好きだし、ブームのおかげで銘を耳にすることが増えて、なんか親しみが湧いてましたしね。

 ブームとはいえ一部のマニアぐらいしか行かないだろうからそんなに混んじゃいないだろーと思って足を運んだら、これまたびっくり。すげー混んでます(汗)
 世の中って広いわぁ。好きな人、多いのね。
 最近、美術館へ行くと自分も含めて中年女性がかなりの割合でいるんだけど、今回は明らかに客層が違いました。明らかに若い女性と年配の男性が多い!
 私だってニコ生見てなかったら行ってないだろうしね。

 私は今まで刀を「武器」であると思っていて、強いて言えば拵えの立派な工芸品だと思っていました。だから、鞘などの装飾には興味はあっても、刀身への興味が薄かったのです。
 今回解説を聞いて大変興味を持ったのが、「刀=武器ではない」というものです。
 刀が武器として主流であったことは歴史の上で一度もない、強いて言えば幕末はよく使われたが、戦の場での殺傷能力はそれほど高くはない。飛び道具である投石のほうが武器としては優秀である、と。
 刀は三種の神器に「草薙剣」があるように、権威を示すのに有効なものであり、立派な刀を持っていること自体に意味がある、という見解です。刀にとって切れ味が良いというのは当然の条件であり、それ以上に価値を高めるのはその美しさであるというのです。
 確かにその考え方なら、刀は武器ではなく、美術品でしょう。
 また、刀は歴史が面白いと思いました。
 源平の合戦で草薙剣が失われたため後鳥羽天皇は初めて三種の神器の揃わない状態で即位した天皇になってしまった。そのため、不完全な状態を補おうとして刀への執着が強くなった。自ら鍛冶場へ赴いて刀剣を打つこともあったという。 
 天皇が足を運ぶため、当然、刀鍛冶の地位は高くなる。そういった歴史が日本人が職人へ尊敬の念を抱くに至り、ひいては現代の「ものづくり日本」の礎になった…というのです。
 なんて面白い考え方なんだ。
 そういう視点で刀を見ると、博物的価値に魅力を感じます。

 さて、刀、しかも刀身のみがずらりと並んだ展覧会です。
 刀剣乱舞で知られたものに名刀が多いのはよくわかりますが、それ以外に素晴らしいと思う刀がたくさんありました。
 それぞれに違いがあることを意識して見ると、違いって感じるものですね。
「あ、これイイ。」と思ってキャプションを見たら国宝だったりして、なるほど良いと思うものは素人でもわかるんだなぁと感心しました。
 が、1階に降りるころには私ときたら慣れないもの見たせいか疲れてしまってました。終わったらぐったりしてるなんて、、、私が刀を語る日が来るかは甚だ疑問ですわ。

萬古焼の粋展

2018年11月09日 | かんしょう

四日市というとコンビナートが有名ですが、古くからの産業の一つに萬古焼(ばんこやき)があります。
幕末~明治の陶磁器輸出ブームの頃に絶頂期を迎えたこの焼き物、始まりは江戸時代後期の沼波弄山という人物でした。
今年はその沼波弄山の生誕300年の年に当たるため、市内では関連事業がいくつも開催されています。その一環として、ばんこの里会館では「萬古焼の粋」と題した展覧会が開催中です。


 リーフレットを見た時、白を基調にした明るく清潔感のあるデザインだったので「これはイケてる」と感じました。私が萬古焼の中で一番美しいと感じている古萬古の写真を使っているのもポイント高し。
 足を運ぶと思った通り、かなり現代的な展示方法の洒落た空間が出来上がっていました。

 少し前に四日市市立博物館でも萬古焼の展覧会がありましたが、あちらは博物館なので歴史的な流れや多様性の紹介が前面に出ていた気がします。だから出展数もかなり多く見ごたえがある代りに、見栄えというものは犠牲になっている部分がありました。
 しかし、この展覧会は数は多くないけれど出来の良い美しい作品を木で囲まれた穏やかな空間の中に配置しており、美術展寄りというか高級なセレクトショップかインテリア店のディスプレイのようです。
 中は撮影も可能で、インスタグラムに投稿する際のタグも明示。そうそう、今時の展覧会は厳しい版権がないのなら、こうして発信していかなくっちゃね。

 ばんこの里会館でもこんな展示ができるんだ…と思ったら、プロデューサーにBANKO archive design museum の内田鋼一氏が入っていました。道理でオシャレなわけだ、と納得。
 入場料は500円。行きやすい価格設定だし、色んな人がばんこの里会館へ足を運ぶようになってくれたらなぁと思います。
 会館内のレストラン、ランチが良いと聞いたことがあるので私もトライしなくては。
 会期中、何度でも観覧できるパスポート券もあるようです。3回以上観に行くならそちらのほうがお得です。