アバウトなつぶやき

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昭和美術館 「青を愛でる」展

2019年06月30日 | かんしょう
 
ずっと前からいつか行こうと思いつつ訪れないままになっていた昭和美術館
ちょっとしたキッカケがあって行ってみようかという気になりました。
 名古屋市昭和区にある昭和美術館は茶道具が主な収蔵品であり、施設はお茶会や展示会で利用できるのだとか(文化・芸術・教育・学術に関する行事に限る)。
本館の裏手には庭園が広がっており、旧武家の別邸であった「南山寿荘」(旧正門も同様に移築)、茶室「有合庵」、腰掛待合などを備えています。これらは地域の文化遺産として指定されています。
 
▲愛知県指定文化財の「南山寿荘」 毎年11月3日のみ全体を公開するとか
 
昭和美術館は夏季と冬季は閉館しており、春の上期展示と秋の下期展示の2期にわたるコレクション展を開催しているようです。
今年の上期展示は「青を愛でる」と題した、青磁や青絵付けなどの青いやきものが中心の展示でした。
 
青磁の説明に、青磁は「砧青磁」「天龍寺青磁」「七官青磁」の3種(宋の時代とか龍泉窯とかの分類?)があるとし、それぞれの説明がなされていました。
もちろん砧青磁が最上であり均整がとれており釉も美しく半透明、天龍寺は作りが大振りで色が黄味を帯びて濃くなります。七官青磁は青緑に濁りがあり侘びがあるものとなりますが、一室のなかに青というテーマで並んでいるためつぶさにその違いが見て取れて、特徴がよくわかり勉強になりました。
また、作品名により「祥瑞(しゅんずい)」という言葉も知る事が出来ました。
※祥瑞(しゅんずい) 中国明時代末期(17c前半)に景徳鎮で日本向けに作った染付のうちやや紫がかった青、紺青色で祥瑞文といわれる吉祥柄や幾何学模様が埋め尽くすように配され、透明釉がムラなくかけられたもの
さすが茶道具に秀でた美術館という感じです。
 
私は茶道具に詳しくありませんが、茶道を嗜んでいる方には非常に身近な美術館だと思います。
今回は陶磁器が主でしたが、きっとほかにもたくさんの名器をそろえておられるんでしょうね。

増山雪斎展とボタニカル・デザイン展

2019年06月15日 | かんしょう

 先月から、体調を崩したりして延び延びになっていた二つの展覧会。会期終了目前の今日、やっと観に行くことができました。

 まずは三重県立美術館の増山雪斎展。

 三重県にこんな文人大名がいたとは、この展覧会が開催されるまで知りませんでした。あまりに立派で、ホント申し訳ない気持ちになりました。。。

  三重(伊勢国)大名というと、つい南勢(伊勢の方)を連想してしまうのですがこの方は長島藩の第5代目藩主です。つまり南側でなく三重の最北、尾張と接する側の地域の大名です。

 増山雪斎は諱(名)を正賢(まさかた)と言い、1754〜1819年に生きた人物です。

 当時、大名の仕事の一環として地産の記録として絵を必要としたようですが、それ以上の才が雪斎には備わっていたようで花鳥画の様な芸術性の高い絵を描くようになります。(当時「芸術」という概念かどうかはともかく)

 雪斎の絵は博物学として捉えても十分な見識を持って描かれているとの事で、動植物の特徴を見事に表現しながら緻密で美しい絵を描いています。虫豸帖(ちゅうちじょう)という図譜は特に優れているようで、現代の学者が見てその種類がほぼ同定できるのだとか。

 雪斎は長島藩のお抱え絵師である春木南湖を長崎に遊学させていますが、雪斎の死後数年経った1823年にシーボルトが来日しています。

シーボルトがもう少し早く生まれていたら、というか雪斎がシーボルト級の人物に出会っていたらこの辺りの本草学は尾張でなく伊勢が主流になっていた事間違いなしですよ。惜しい!

 雪斎の人物像を語るにあたり木村蒹葭堂という人物は欠かせない事も知りました。

 展覧会内でこの木村蒹葭堂から煎茶道の偉人、売茶翁の茶器を譲り受けた、という逸話込みの絵が展示されていました。ここでも始めて知る「売茶翁」という人物。なんだそれ、煎茶道って今時の人が美味しいお茶を飲むために作ったポップカルチャー的なのじゃなくて、近世から続く伝統的なものだったの?とまた新たに知ることが増えました。

 煎茶道って、調べると結構面白くて意外なことに後で見に行ったボタニカルデザイン展にもつながります。

 三重県立美術館で増山雪斎展を観た後、三重県総合博物館に寄って企画展「ボタニカル・デザイン」を観てきました。

 この企画展は全てが撮影OKとの事で、メモを取らずに観れるので嬉しい(^^)

 広々としたスペースに見やすい展示。可愛らしくてセンスある解説と手書きの学芸員コメントなど、わかりやすくてしかも楽しめる、とても良い展示だと思います!

展示物の中にいくつかの模型があったので「へぇ〜、これ大きくってわかりやすくてイイじゃん♡」と思ってキャプションを見たら「ミュージアムパーク茨城県自然博物館」って書いてありました。

すごいな茨城県。さすが、つくば学園都市を抱えてるだけあって良い博物館がいっぱいあるのね。

 最近、ワダちゃんと地被類を愛でることが増えてるんだけど、そこも網羅。

 この展覧会の最後の方は人のくらしの中にあるボタニカルデザインって事でさまざまな利用の仕方が紹介されているんですが、その中に盆栽の紹介がありました。

 ここで知る、盆栽の愛でられ方!

 盆栽って確かに立派なのが豪邸の床の間にあるイメージありました。でも、縁側でおじちゃんがハサミをパッチンパッチンしてるイメージも強くて、なんというか園芸好きの高じた最たる姿っていう気がしていたんですよね。

盆栽って未来の枝ぶりを想像して整えるわけですから途方も無い時間と知識の必要な芸術です。素人がちょっと手を出して成せる類の分野じゃありません。

 で、この盆栽を床の間に飾ってたのが先に出てきた煎茶道と知って「なるほど!」と頷く事しきりです。

 抹茶を頂く「抹茶道=茶道」が形式化しているのを嫌って生まれたのが煎茶道。(もっとも、普及するうちに色んな作法や美意識が生まれて結局は形式化していくのですが)

形式にとらわれず会話を楽しむ事で、文人から愛好されたというのもうなずけます。侘びを重んじる茶道に対し、古代中国の隠遁する賢人のような自由と精神の気高さを表す風流を重んじたのが煎茶道。そして床の間は茶道が生け花なのに対して盆栽が飾られたわけですね。

 

と、いう感じでいつもは展覧会は一日一つにしたいと思っていましたが、この展示は二つセットで正解でした。体調が芳しくないんだけど、無理めでも行った甲斐がありましたぁ。