アバウトなつぶやき

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「超絶技巧!明治工芸の粋」展

2015年11月16日 | かんしょう
日曜日、次男を連れて、岐阜県現代陶芸美術館で開催中の「超絶技巧 明治工芸の粋」展を観てきました。





 この展覧会の展示作品はすべて京都の清水三年坂美術館の所蔵品です。
京都なら機会をみつけて目にすることが適いそうなのでこの展覧会は後回しにしていたのですが、少し前にテレビ東京『美の巨人たち』で正阿弥勝義の特集をしていたのを見たら行きたくなってしまいました。
 清水三年坂美術館は幕末~明治の美術工芸品をコレクションしていて、村田コレクションと呼ばれています。
 この時代の日本の美術品は輸出によりそのほとんどが海外に流出しており、その数は国内の数十倍と言われています。海外人気がとても高く、市場に出ると海外のコレクターに買われてしまうため国内にほとんど残っていません。
 技術的な水準が現代では到底真似できないほど高いのに、日本人自身がその名品を観る機会がとても少ないのだとか。
 そのためそれを憂れいた館長の村田理如氏は海外から買い戻しています。そしてアーティストを目指す人たちが作品を目にすることでこれを越える作品を作ってくれることを望んでいるのだそうです。

 展覧会は【七宝】【薩摩(焼)】【金工】【漆工】【印籠】【刺繍絵画】【木彫・牙彫】【自在】に分かれています。
 タイトルに「超絶技巧」とあるように、どれを観ても恐ろしいほど繊細で、恐ろしいほど美しい!!
 もともと漆工が好きな私としては蒔絵や螺鈿の細かさにを観て叫びだしたいほどでしたが(鮑の翠色の部分だけを螺鈿細工に用いていた印籠を観た時は動悸がした)、もう館内はどれも素晴らしすぎて声を出さずにはいられません。
 細やかさはミリ単位、いえ、ミクロン単位。平面の絵だとしても細かすぎるほどなのに、これが工芸品なんだから作っている状態は想像を絶しています。
 一緒に行った次男も「あかん、やべぇ!」と言ったほど(こんな語彙で本当にすみません)。「芸術」に興味がなくても、細かい仕事ってのはだれが見ても一瞥で分かりますからね。
 観る機会が少ないとはいえ、国立博物館などにもそれなりにあります。けれど、これだけ一同に浴びるほど超絶技巧を体感するには、やはりこういう企画展かコレクションのある美術館へ行くのが一番だと思います。
 図録で観ても、パソコンの画面で観ても、当然のことながら全然違います。絵ですら本物と図録じゃ全然違うのに、平面と立体なんだから同じわけがない、違わないわけがない。本物、一度観て下さい。ニッポン人、すごいですよ。
 自分がもともと観たいものがテレビで紹介されると「混むじゃないか、余計なことをしてくれて」と思わないわけではないのですが、こういう風にテレビを見ていなければ観れなかったものもあると思うと、やはり良い番組はありがたいなぁと思います。

 そういえばこの9月に観に行った、愛知県美術館で開催された「芸術植物園」展の中に安藤七宝店(林喜兵衛)の「百華文七宝大壷:名古屋市博物館所蔵」があったのですが、それがあまりに繊細で美しかったので印象的でした。
 今回の展覧会の中に同じ図柄の花瓶一双とで三点一揃えになるよう作られたという「花鳥図対大花瓶」があり、「あの壷と同じ!」と、すぐに分かりました。いつもぽーっと作品を観ている私でも、あれだけ素晴らしい作品だと覚えているものです。
 安藤七宝店、現在も宮内庁御用達のお店として名古屋に本店があるんですよね…。買えないと思うけど今度のぞいてこよう。

「丹羽文雄の美術品」展

2015年11月11日 | かんしょう
これまた先週の話ですが、四日市市立博物館で開催中の「丹羽文雄の美術品」展に行ってきました。





丹羽氏は四日市市を誇る作家である事は分かっていても著作物を読んだ事がなく、もちろんどんな方であるかという為人(ひととなり)も「お寺の息子さん」という事以外は知りませんでした。

ところが今回、コレクションを拝見し、ご本人の生い立ちや美術品にまつわるエピソードなどを知った事で俄然興味が湧いてきました。
「この人の書いた作品を読んでみたい」と思わせるに十分です。

まず、コレクションに有名どころがたくさん揃っていてちょっと感動します。
上村松園、加山又造、鏑木清方、竹内栖鳳、そして佐伯祐三。私の好きな人がいっぱい!四日市市の博物館に300円払うだけでこんなに観れるなんて素晴らしい!!
点数は多くないとはいえ、他にも安井曾太郎や富本憲吉の作品もあって、眼福でした。

また、私が感動したのは黄恭慎先生墨書華草冊という画帖です。
開かれたページにはこんもりとした菊の花が描かれているのですが、そこに



という言葉が書き添えてありました。

(羽を半開きにした蝶の群れが水晶の毬を囲んでいる)という意味で、花弁=蝶の羽、花の形=球体の水晶を表しているのですが、なんて美しい言葉と表現なんだろうと思いました。


展示品の作者があまりに有名な方が多かったので、以下に作者名を羅列します(敬称略)。

加山又造(かやままたぞう)、福田豊四郎(ふくだとよしろう)、田村孝之介(たむらこうのすけ)、月岡英貴(つきおかひでき)、宇田荻邨(うだてきそん)、福田平八郎(ふくだへいはちろう)、永悠(えいゆう)、深江盧舟(ふかえろしゅう)、鏑木清方(かぶらぎきよかた)、竹内栖鳳(たけうちせいほう)、河野通勢(こうのみちせい)、上村松園(うえむらしょうえん)、冷泉〈岡田〉為恭(れいぜいためちか)、村上華岳(むらかみかがく)、
舒慶春・胡青(じょけいしゅん・こけつせい)、黄慎(こうしん)、伝牧谿、
国吉康雄(くによしやすお)、黒松秀志(くろまつひでし)、HIRO TERASAKI、西岡、ジョルジュ・ルオー、安井曽太郎(やすいそうたろう)、鈴木信太郎(すずきしんたろう)、牧野虎雄(まきのとらお)、佐伯祐三(さえきゆうぞう)、竹谷冨士雄(たけやふじお)、横山泰三(よこやまたいぞう)、坂本繁二郎(さかもとはんじろう)、硲伊之助(はざまいのすけ)、
良寛(りょうかん)、会津八一(あいづやいち)、水原秋桜子(みずはらしゅうおうし)、夏目漱石(なつめそうせき)、近藤杢(こんどうもく)、北村西望(きたむらせいぼう)、
濱田庄司(はまだしょうじ)、森有節(もりゆうせつ)、リヤドロ、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)、長崎金富良商店(金富良=コンプラドール:仲買人のこと)、西大由(にしだいゆう)、
富本憲吉(とみもとけんきち)、
田崎廣助(たさきひろすけ)、
林武(はやしたけし)、
吟月=教開(ぎんげつ=きょうかい=丹羽文雄の父)、丹羽文雄(本人)、伊藤春之(いとうはるゆき)、岩田正巳(いわたまさみ)、
三輪勇之助(みわゆうのすけ)、近藤啓太郎(こんどうけいたろう)、清水崑(しみずこん)、生沢朗(いくざわあきら)、中尾達(なかおいたる)、北地莞爾(きたじかんじ)


見応えがあったので、出来ればもう一度行きたいと思っています。
そして、丹羽文雄氏の作品を図書館で借りてこなければ、とも思っています。

地元の皆さん、ぜひ足を運んで丹羽文雄氏への理解を深めましょう。

12月13日(日)までです。

「琳派 京を彩る」展

2015年11月08日 | かんしょう
先週の木曜日、京都国立博物館で開催中の展覧会-琳派誕生400年記念-「琳派 京(みやこ)を彩る」を観てきました。

後期の展示入れ替えで風神雷神図屏風が3点揃ったためか、平日に行ったのにものすごい混雑で、入場まで1時間待ちでした。
もっとも、連休明けだった4日は120分待ちの時間帯もあったようなので、それよりはマシと言ったところでしょうか。





▲ちょっと珍しいタテ開きのリーフレット

館内はどこもすごい混雑です。
特に本阿弥光悦と俵屋宗達の共作「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」の展示ケース前はひどく、順に並んでいても列が動きませんでした。
しかし、それもそのはずです。鶴の姿が流れるように描かれているため、人の間から場面を切り取った状態で観るよりも巻物の前に立ち、右から左に目を移して動きを感じる方が断然素晴らしいのです。止まって観たい気持ちは分かる!でも止まられると困る!!
待っている人があまりに多く、後ろから追い立てられるので、私は早めにその場を離れました。
出来ればもっとゆっくり観たかったです(涙)でも、いつかまた観ればいいか。

後期の目玉とも言える俵屋宗達と尾形光琳と酒井抱一、3人の「風神雷神図屏風」は、同じ部屋に展示されており、一度に見比べることが出来ました。
比べてしみじみと感じる宗達の絵の躍動感。
光琳は宗達を、抱一は光琳を参考にして描いているのだから、やはり本来の持つ動きのようなものが失われていくのを感じざるを得ません。絵としては立派なんですがオリジナルの迫力には適わないと言うところでしょうか。

こう書くと後継の人々を軽んじてるように見えるかもしれませんが、それぞれに素晴らしい作品ばかりです。
尾形光琳はその図案や色使いの大胆さに舌を巻きます。抱一の上品な美しさには息をのみます。
私は抱一の「十二ヶ月花鳥図」が大変気に入ったため、「夏秋草図屏風」が展示入れ替えで観られなかったことを後悔しています。光琳の「八橋蒔絵螺鈿硯箱」が観たかったので後期にしたのですが、前期にも観に来ておけば良かった。前期はこれほど混んでなかったらしいのに。

あと、非常に気に入った作品に「藤袴図屏風」と「草花図襖」がありました。
これらの作品は画家の個人名で知られる作品でなく、「宗達派」という宗達の工房による作品です。
工房の担当者が1人で描いているのか分業しているのかは私にはわかりませんが、とにかく書き込みが繊細で美しいのです。
こんなレベルの高い工房を運営できるなんて、本当に俵屋宗達は実力者でもあると同時に幸運だとも思います。
後世に名を残したわけではないけれど、こうやって作品を残して感動を与える人というのはどの時代にもいるんだろうと思うとなおのこと感動してしまいました。

人気の高い展覧会、感動もするけれど疲れもしますね。
それも含めて記憶には残るので、忘れっぽい私には良いのかもと思っておくことにします。
あぁ、疲れた。
11/23(祝)まで開催してますけど、紅葉狩りとセットで予定している方は時間配分にお気をつけくださいませ。

平成27年度 第67回「正倉院」展

2015年11月02日 | かんしょう
先週の木曜日、平成27年度 第67回「正倉院」展に行ってきました。




正倉院展が混雑するのは有名なため、ずっと興味がありつつも二の足を踏んでいました。
しかし、ただいま職場でこの時代の話が絶賛飛び交い中。一度は観ておかないとイメージがわかないという事態になったため、展覧会づいてる今秋、一念発起して足を運びました。

小学校で読み聞かせをしてから行ったら、到着が11時頃。
すると設置テントの最後尾近くまで行くことに。行列覚悟だったとは言え、どんだけかかるのと不安になります。
でも、入場制限しないおかげで列は結構早く進んで、40分ほどで入場。まぁ入場制限しないって事は中は人で溢れてるんですけどね。


中の混雑は本当にすごくって、人混みに入っていかないと展示ケースにたどり着けないほど。
なんで展覧会にこんな苦労をってげんなりするんだけど、でもやっぱり本物を観ると仕方がないのかなぁと思っちゃう。そういう魅力がありますね、お宝って。
この時代にこれだけの細工が!って思うと本当に観る価値を実感します。
あと、やっぱり混雑覚悟で見に来る人達って本当にこういうのが好きらしく、耳にする会話がとても意識の高い内容が多くて殺伐としていないのがイイと思いました。混んでるときに文句言ってるのを聞くのっていやな気分ですもんね。

今回の目玉は、まるでルイ・ヴィトンのモノグラムのような「紫檀木画槽琵琶」のようで、ポスターや図録の写真を飾っています。
他にも鏡とか鏤尺とか目に見えてきらびやかな装飾のものがあります。まぁ、説明は↓のHPでご覧下さい。
奈良国立博物館 第67回正倉院展
図録を購入したので展示内容を説明しようと思えば出来なくもないのですが、消化し切れてないのでただいま書く気になれません。
ただ、今回は年中行事に関わる宝物が多数出陳ということで、手芸に関わるものがたくさんありました。
決して華美なものではないのだけれど、これが私にはとても面白かった。
とりあえず手芸は嫌いではないので、その時代の女性の手仕事に携わる気持ちや作業が伝わってきてこの時代をとても身近に感じました。

14時頃にはすっかり外の混雑はおさまっていました。とは言え、中の人はまだたくさんいらっしゃるんだけども。


期間中、正倉院の外観を観られるので歩いて行くと紅葉が始まっている木もありました。でも、まだまだこれからという感じ。
紅葉狩りと正倉院展を一緒に楽しむのは無理なのが残念。


いつもは展覧会を観た後は会期情報とオススメの一言を入れてますが、正倉院展は嗜好がハッキリしてるので初心者の私はあえて書きますまい。
好きな人は混んでても行くし、何が出陳中かも調べてらっしゃる事でしょう。
しかしまぁ、11/9まで休館なしですので忘れてたって方は今週、都合つけて行ってください。


---おまけ---

少し前、職場のおかーさまに草木染めの本を貸したらすごく気に入っちゃってね。私が以前にクサギで染めた作品の写真見せたら「これで染めたい!」とおっしゃったので久しぶりにトライしたんです。
その時に、特に作りたいものもなかったので私は羊毛を染めたんですよ。
そしたらなんだかフェルト小物作りたくなっちゃいまして。正倉院展で毛氈を観た後だったので、余計です。

それで作った最新作がこれです。
 
同じく職場の同僚、まっちゃんの愛車スバルR2がモデル。家族にウケが良かったのでアップじゃ。
これの前にクジラ作ってまっちゃんにあげたらすごい喜んでくれたので、また喜んでくれると嬉しいな~。