アバウトなつぶやき

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岐阜県美術館 所蔵名品展

2018年07月26日 | かんしょう
 今年の秋(2018.11.4)から岐阜県美術館では改修工事が始まり、来年の秋(2019.11.2)まで休館です。
 それに伴い、しばらく会えない所蔵品をじっくり見ておきましょうという企画で「さよなら、再会をこころに。」という副題を付けた所蔵名品展が開催されています。
 「これは見ておかねばなりますまい」ということで、先週行って来ました。





  岐阜県美術館は個人的に好きな美術館のうちの一つです。市街地にあり立地が良かったり新しくて綺麗だったりサービスが充実している美術館も素晴らしいと思うけれど、私が好きなのはちょっと不便な場所にあっても、落ち着いた雰囲気でコレクションが好みの美術館。
 岐阜県美術館は企画展よりもコレクションの印象が強い美術館で、ルドンや川合玉堂、山本芳翠が印象的です。
 だから、今回の所蔵名品を改めてじっくり見てみるという企画はとても良いですね!(前回の「曝涼展」を観てないし)
 無理に有名どころの企画展を持ってくるよりも、コレクションをゆっくり楽しんだ方が美術館への愛情や思索が深まる気がします。

 今まで何度も訪れてきましたが、観たことのない作品もたくさん出品されていました。
 特に気に入ったのはコチラ↓

▲神戸智行〈いつもの時間〉

 木曽川を描いているらしいのですが、水の澄んだ様子だとか棲んでる生き物だとかが愛らしくて美しいです。
 8月に開催される水うちわ作りのワークショップ、担当はこの神戸智行さんらしく、申込みが終わっていることに地団駄踏むことになりました。あと2日早く気付いてたら申し込んだのに...(抽選とはわかってるけど)
 この絵の隣にあった東正之〈青釉壺〉は、セルリアンブルーに近い青色というか水色の発色がとても美しく、ぼうっと光っているかのようです。
吸い込まれるような、でも透明な空気を吐き出しているようなその色が、水を描いた隣の絵と呼応しているように見えて、とても美しい空間を作り出していました。
 出口間際の展示だったので、とても清々しい気持ちで展示室を後にすることになりました。

 対照的に、入り口近くにあり、ものすごく目を引いた川崎小虎〈うどんげの花を植える女〉。ここに描かれてる女性、カゲロウの羽を持ってます。
 うどんげの花=ウスバカゲロウの卵、らしいのですが、植物の優曇華(うどんげ)の花は3千年に一度咲くと言われていて、吉凶のどちらともつかない珍しい現象を意味するようです。
 それを加味せずとも絵の持っている不思議な雰囲気は抜群です。
 この川崎小虎という方、東山魁夷の義父なんだとか。調べると大和絵を学んだ方ということで「地味で堅実」とか「甘美な情緒の漂うロマンチックな画情の持味」という言葉が出てくるのだけれど、他の作品と比べて明らかに異質な気がします。でも、私はこの絵が好き。

 それから、ゆっくりと観れる状態だったので、いつもは流してしまいがちな焼物と織物もじっくり観ました。
 荒川豊蔵が数点出ていたのもさすが岐阜、という感じでしたが、それより今回気になったのは小山冨士夫〈種子島茶碗 銘柴垣〉でしょうか。
 赤い肌もですが、高台の形がちょっとゴブレットを思わせるような形をしていて個性的なのです。
「種子島茶碗」というのが形状を指すのか産地を指すのかが分からなかったので監視員さんに尋ねてみたら、調べてくださいました。どうやら小山氏は種子島で作陶をしていた時期があり、その後も種子島から土を取り寄せて使っていたそうです。
 私も検索かけてみたら、小山氏というのは陶芸をお好きな方なら名前を知らない人はいないという有名人らしいです。。。人柄も、人を愛する懐の深い方だったようで、私にとって気になる人物となりました。
 織物も普段は何気なく見てしまいがちだったのですが、糸を染めてからこの文様に織っているのかと考えながら見ると、なんというセンスと計画性、そして卓越した技術だろうと感心せずにいられません。特に宗廣力三〈藍地縞に丸文様絣着物〉が、その流れるような連続性に魅せられました。あれ、着たら格好いいだろうなぁ~

 この日はこの後、岐阜県図書館にも寄って、ロダンのモデルになった唯一の日本人女性「花子」の企画展も見てきました。
 幼いころに家から離れることになったり恋に敗れたりする苦労の多い人生でありながら、外国に己の道を見出したり、帰国後は文化人と交流をしながらも晩年は表に出ず余生を送るなど、花子さんの意志の強さがうかがえるヒストリーが印象的でした。
 小説や映画もあるらしいので、読んでみたら面白そうです。

扇田克也-光のカタチ展〈富山市ガラス美術館〉

2018年07月08日 | かんしょう
 富山県美術館へ行った後、富山市ガラス美術館へも寄ることにしました。

 
 市街地にあるので隣の立体駐車場に車を止めて中に入ると、、、 なんだ、ココ!?カッコイイ!!
 
 外観はアルミとガラス、内観は木とガラスを組み合わせてあり、光がきらきらしています。開放的な空間でありながら有機的で、なんとも独特なのです。
 富山市立図書館も併設されているのですが、各階が間仕切られることなく図書館の中もガラスの向こうに透けて見えます。物語に出てきそうな雰囲気です。
 後で分かったのですが、この建物、設計は隈研吾氏でした。
 どおりでカッコイイわけだ

 さて企画展の「扇田克也-光のカタチ展」、もちろん見ます。楽しそうです。




 ココも撮影可能で、SNS発信推奨中。
 先日のTVで言ってたけど、富山県ってSNSの利用率が全国トップらしい。なるほどね。
  
 コールドキャストという手法の流し固めたガラスは氷砂糖のような質感でとってもカワイイ
 透明なクリスタルガラスも好きだけど、こうやって重量感があるのに光がぼんやりと、でも濁らずに透けるガラスも大好きです。
 

 水玉プラネットと題した、この色ガラスのコールドキャストを研磨したカタマリときたらもう
 いやぁ、偶然の出会いだったけど、イイ作品に出会えました。

 ここはもちろん、企画展以外に常設展示も行っています。
 特に最上階の6階では、グラス・アート・ガーデンと銘打ったデイル・チフーリという方のインスタレーションが展示されています。
 私は知らなかったけれど、現代ガラス美術の巨匠らしいです。
 とても大胆な作品を作っておられますが、この、暗いところに鏡を使った作品は、水に浮かぶように見えるガラスの姿がとても幻想的でした。
 

 富山市って、私の住んでいる市と人口はほとんど同じなのに、美術館は4~5はあるし、科学博物館、天文台、動物園、城址、大学もあって路面電車まで走ってるし、街を歩いたら24時間利用可能のレンタサイクルまであるんですもの。あまりの利便性の良さにびっくりしました。
 新幹線もやってきて観光にはとても良さそう。冬は寒いかもしれないけど、かなり住みやすい町なんじゃないかなと思いました。
 富山、また行きたいな。

高野山金剛峯寺襖絵完成記念 千住博展

2018年07月08日 | かんしょう
もう先月のことになってしまいましたが、職場のまっちゃんと富山県美術館へ行って来ました。





 昨年の夏にオープンした(春はプレオープン)富山県美=愛称「TAD」は、富山県立近代美術館の後継として建設されました。
 近代美術館のほうはシュールレアリスムにハマっていた20代の頃に一度来たことがあり、初一人旅だったこともあって大変思い出深い美術館でした。ポール・デルヴォーを観てファンになったのもここのコレクションがきっかけでした。
 富山はとても好印象だったこともあり移転を聞いてからはうずうずしており、気になる企画展があったら行こうと決めていました。

 白羽の矢が立ったのはこちらの展覧会。




 今、たいへん人気のある日本画家、千住博氏の高野山金剛峯寺襖絵完成記念展です。
  

 今回は前述の襖絵の公開をメインに、これまでの作品も展示されています。作品が大作であることもあって、総数は25点と、それほど多いわけではありません。
 しかし、展示に工夫が凝らしてあるため物足りなさを感じることはありません。
 メインの襖絵に関しては金剛峯寺と同じ配置で展示されているのはもちろんのこと、依頼されてから制作までの過程がコンセプトから計画手順、技法に至るまでとても詳しく説明されています。
 先週のNHK日曜美術館のアートシーンで会場で流れていた映像が取り上げられてたのでご覧になった方もいるかと思いますが、制作風景もオープンになさっています。
 茶の間を飾ることになっている〈断崖図〉の制作にあたり、岩肌を表現するのに紙(雪肌麻紙)を揉んでしわを作っているところを映したり、囲炉裏の間の〈瀧図〉を描く際に「軟靱膠素で焼群青を塗ったところに水を刷毛塗りしてそこに胡粉を流す」というような画材の使い方の説明をパネルにしたりしているのです。
 こういう事って、絵を嗜む人にとっては手法をわざわざ紹介しているという程度にしか思わないかも知れませんが、絵を描かない素人(または絵を描き始めた初心者)にとってはたいへん興味深いものです。
 実際、私はこの説明を読んで黒だと思っていた部分が墨ではなく焼群青であることを知り、他の滝の絵と比べて見るという楽しみ方ができました。
 千住博氏は滝の絵がたいへん有名なため、襖絵の〈瀧図〉もそれの延長だと思っていたのですが、他の滝の絵のような「黒」でなく「深い青みのあるグレー」で暗さを表現しているため絵に美しさと深みを与えていることに気付きます。また、岩絵の具を使うことによる保存の観点からの将来性まで考えていることはなるほどと感心させられました。

 そして今時の工夫があるのがコチラ。




 この作品は撮影が可能です。SNSにアップするときはハッシュタグ#千住博他をつけてください、という説明付き。
 この部屋は数分ごとに照明がフェイドアウトしていき、ブラックライトによって滝が浮き上がるという展示方法です。これはキレイ、これは映える。まさにインスタ映えですわ。

 初期の頃の絵を見ていると、確かに美しいんだけれど特別に注目される画家ではなかったんだろうなぁ、と正直思ってしまいます。その後、万人受けするような題材で美しく描いてしまうところとか、見せ方(魅せ方)が上手いところとか、家族構成とか、NYのアトリエがスタイリッシュなところとか、「あぁ、この人は売れるべくして売れたスターだなぁ」と感心させて頂きました。

 さて、展覧会も楽しかったけれど、美術館のロケーション自体がもう楽しい。
 
 内藤廣建築設計事務所の設計ですが、メガトラスという架構を使うことで柱が少ない広々とした空間を実現しています。アルミを使った近代的な建物だと思ったら、アルミは富山県の特産物らしいですね。
 また、材木置き場だった運河を再開発で生まれ変わらせたという富岩運河環水公園が隣接しており、観光としての要素は抜群です。


 館内にあるレストラン、たいめいけんでは昔見た映画「たんぽぽ」で出てきたオムライスも味わえました。


 今回は企画展以上に常設展が楽しみだったのですが、その第一弾がコチラ↓
 
 椅子のコレクション~ これ、ずっと見たいと思ってたんですよ。30年近く前はまだ形成されてなかったはず。 ※コレクション展は撮影可能

 しかし!お目当ての椅子が出展されてなかった(泣)
 館のHPで紹介されているリートフェルトの「レッド・アンド・ブルー」と倉俣史朗の「ミス・ブランチ」が両方ともなかったんですよ
 「レッド・アンド・ブルー」は専門学校時代の授業でレプリカを作った思い出の椅子だし、「ミス・ブランチ」は購読していた「室内」という雑誌で一目惚れした椅子。当時はアクリルにハマってて、私の卒業制作はアクリル素材の鏡台だったくらいです。
 今回、二作品が見れなかったのはもっとも残念だった案件です。。。また、機会あったら行くんだ。ぐすん。

 でも他にも気に入った椅子があったのでそれをご紹介。
  
 左から順に川上元美氏の「CCC」(写真左上)、倉俣史朗氏の「硝子の椅子」、エットーレ・ソットサスJr&マルコ・ザニーニの「イーストサイド」。
 川上元美氏の椅子はどれも背もたれと座椅子の角度が私の好きなデザインで、他にも「ブロンクス」というアルミと樹脂素材を使った椅子も好きでした。倉俣史朗氏の椅子は「ミス・ブランチ」と同じく透明感の醸し出す美しさが際立っていて、座り心地というよりオブジェとして美しい椅子です。逆に、座り心地が良かったのは「イーストサイド」。クッションの固さが硬すぎず軟らかすぎずで本当にちょうど良かったんです。カラーも可愛い上に、接地面にアクリル(もしかしたらガラス)があしらってあってキュンとしました。
 そうだ、木と革で作られてるボーゲ・モーゲンセンの「スパニッシュ・チェア」も素敵でした。
 椅子はどれもこれも欲しくなっちゃいますね。

 コレクション展といえば、絵画のほうは思い出のポール・デルヴォーの〈夜の汽車〉が出てました!

 あれ、こんなサイズだったっけ。もっと大きかったと思ってましたが。
 印象が強かったので、〈こだま〉とかのサイズと混同していたようです。記憶って曖昧なんだなぁ。
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 こんな感じで、富山県美術館を楽しんできました
 この後、富山市内の富山市ガラス美術館にも寄ったので、そのレポートは次の記事で。