アバウトなつぶやき

i-boshiのサイト:「アバウトな暮らし」日記ページです

第66回 日本伝統工芸展

2019年10月05日 | かんしょう

ただいま名古屋三越で開催中の、第66回日本伝統工芸展を観に行ってきました。


昨年、初めてちゃんと観に行った伝統工芸展。
美しくて素晴らしい技術の作品の数々を目の当たりにして、すっかりこの展覧会のファンになってしまった私はずっとこの時期になるのを待っていました。

昨年、会期中に随時作品解説を行っているのを知らずに行って聞き逃してしまったので、今年はちゃんと朝イチに着くように到着しました。
おかげで、午前の漆芸の解説と午後の陶芸の解説、おまけにビデオギャラリーも観れて大満足。10〜15時まで、なんと5時間も三越に居てしまった…。

伝統工芸展は全国各地を廻りますが、全てが出展されるのは東京展だけです。およそ千四百点もあるので展示しようと思うとスペースを確保するのは難しいようです。
それでも、名古屋展は陶芸作品は全ての入選作が出展されているのだとか。陶芸作品を全て見ることが出来るのは東京と名古屋だけということで、さすが東海地方。古窯を多く抱えるだけのことはあります。
ちなみに陶芸は応募に対する入選の割合は3割弱。漆芸が6割程度なのを考えると狭き門です。それでも近年の応募減少の影響か入選率は上がっているのだとか。

作品解説を聞くと、色んな裏話も聞くことが出来ます。
私が来訪した日は午前が漆芸、午後に陶芸の作品解説がありました。
漆芸の鵜飼敏伸先生は「蒟醤(きんま)」という、文様を彫った凹みに色漆や金などを埋めてから磨き上げるという技法を使った作品を出品しています。同じ様に金を使った「沈金」や「蒔絵」との違いを分かりやすく説明してくれたり、お知り合いの先生の作品に対する制作意図なども話してくれるのでとても面白いのです。
鵜飼先生は増村紀一郎氏に学んだ事があるとかで、今回の増村先生の「瀑」という銀を用いた作品について、着想を得たエピソードと共に「増村先生は長い間朱い作品を作っておられたのですがもう『飽きた』と仰られて」とか「仕事柄、銀もたくさんお持ちですから『断舎利だ』って仰ってね」というお話をして会場を笑わせてくれたりしました。

陶芸の解説は鈴木徹(てつ)先生で、東海地方の陶芸作家さんのコーナーを中心に解説して下さいました。それぞれの見所を順次教えて下さるスタイルです。
コーナー内には(東海地方のご出身ではありませんが)日本工芸界総裁賞(最高賞)を受賞した望月集先生の《花文大鉢「椿」》も展示されており、解説中に望月先生をお呼びしたので、作品に対する思いを直接聞くことが出来ました。
NHK日曜美術館をご覧になった方もいらっしゃると思いますが…とのお話で先々週の録画を見ていなかったことを思い出し、見てこなかったのを悔やんでいましたが、ご本人の意図した所と私が作品を見た時の印象がほぼ変わらなかった事で少し安堵。
ちなみに、会場運営にはその地区の工芸会員さんが携わっているようで、会場内に作家さんが結構いらっしゃいます。
漆芸では安藤源一郎先生をお呼びしましたし、陶芸では望月先生の他に酒井紫羊先生、梅本孝征先生、田中孝先生のお話をお呼びして話を伺いました。
鈴木徹先生のお話でもっとも印象的だったのはご自身の作品に対する向き合い方で、自分は作品の意図について語らないようにしている、と言うことです。作品は見る人それぞれの受け止め方をしてもらいたいとのことで、ご自身の作品を購入した方が「うちの裏の山の景色に似ている」と言われたのがとても嬉しかった、作者冥利に尽きる、とおっしゃったのに懐の深さを感じました。

工芸展は写真撮影不可のため、画像でお伝えできないのが残念です。
けれど、写真では伝わらないのが芸術品。絵画は構図を伝えることが出来ても色が伝わらない。工芸品は色や質感のみでなく立体としての奥行きまでもが伝わらないので、写真で伝えることはさらに難しい。
プロが撮影した図録を見ても、実物の良さが伝わらないものが多くあるため記憶を呼び起こすための手段でしかないんだなぁと改めて思います。
そして、図録に収録されていても名古屋展で見れなかった作品の中で、諸工芸(七宝・ガラス・石など)の部門に気になる作品がいくつかありました。他の会場まで足を運ぶ気力はないけれど、まだまだたくさんの作家さんがいらっしゃることに日本も捨てたもんじゃ無いな、と勇気づけられる思いです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿