もう先月のことになってしまいましたが、職場のまっちゃんと富山県美術館へ行って来ました。
昨年の夏にオープンした(春はプレオープン)富山県美=愛称「TAD」は、富山県立近代美術館の後継として建設されました。
近代美術館のほうはシュールレアリスムにハマっていた20代の頃に一度来たことがあり、初一人旅だったこともあって大変思い出深い美術館でした。ポール・デルヴォーを観てファンになったのもここのコレクションがきっかけでした。
富山はとても好印象だったこともあり移転を聞いてからはうずうずしており、気になる企画展があったら行こうと決めていました。
白羽の矢が立ったのはこちらの展覧会。
今、たいへん人気のある日本画家、千住博氏の高野山金剛峯寺襖絵完成記念展です。
今回は前述の襖絵の公開をメインに、これまでの作品も展示されています。作品が大作であることもあって、総数は25点と、それほど多いわけではありません。
しかし、展示に工夫が凝らしてあるため物足りなさを感じることはありません。
メインの襖絵に関しては金剛峯寺と同じ配置で展示されているのはもちろんのこと、依頼されてから制作までの過程がコンセプトから計画手順、技法に至るまでとても詳しく説明されています。
先週のNHK日曜美術館のアートシーンで会場で流れていた映像が取り上げられてたのでご覧になった方もいるかと思いますが、制作風景もオープンになさっています。
茶の間を飾ることになっている〈断崖図〉の制作にあたり、岩肌を表現するのに紙(雪肌麻紙)を揉んでしわを作っているところを映したり、囲炉裏の間の〈瀧図〉を描く際に「軟靱膠素で焼群青を塗ったところに水を刷毛塗りしてそこに胡粉を流す」というような画材の使い方の説明をパネルにしたりしているのです。
こういう事って、絵を嗜む人にとっては手法をわざわざ紹介しているという程度にしか思わないかも知れませんが、絵を描かない素人(または絵を描き始めた初心者)にとってはたいへん興味深いものです。
実際、私はこの説明を読んで黒だと思っていた部分が墨ではなく焼群青であることを知り、他の滝の絵と比べて見るという楽しみ方ができました。
千住博氏は滝の絵がたいへん有名なため、襖絵の〈瀧図〉もそれの延長だと思っていたのですが、他の滝の絵のような「黒」でなく「深い青みのあるグレー」で暗さを表現しているため絵に美しさと深みを与えていることに気付きます。また、岩絵の具を使うことによる保存の観点からの将来性まで考えていることはなるほどと感心させられました。
そして今時の工夫があるのがコチラ。
この作品は撮影が可能です。SNSにアップするときはハッシュタグ#千住博他をつけてください、という説明付き。
この部屋は数分ごとに照明がフェイドアウトしていき、ブラックライトによって滝が浮き上がるという展示方法です。これはキレイ、これは映える。まさにインスタ映えですわ。
初期の頃の絵を見ていると、確かに美しいんだけれど特別に注目される画家ではなかったんだろうなぁ、と正直思ってしまいます。その後、万人受けするような題材で美しく描いてしまうところとか、見せ方(魅せ方)が上手いところとか、家族構成とか、NYのアトリエがスタイリッシュなところとか、「あぁ、この人は売れるべくして売れたスターだなぁ」と感心させて頂きました。
さて、展覧会も楽しかったけれど、美術館のロケーション自体がもう楽しい。
内藤廣建築設計事務所の設計ですが、メガトラスという架構を使うことで柱が少ない広々とした空間を実現しています。アルミを使った近代的な建物だと思ったら、アルミは富山県の特産物らしいですね。
また、材木置き場だった運河を再開発で生まれ変わらせたという富岩運河環水公園が隣接しており、観光としての要素は抜群です。
館内にあるレストラン、たいめいけんでは昔見た映画「たんぽぽ」で出てきたオムライスも味わえました。
今回は企画展以上に常設展が楽しみだったのですが、その第一弾がコチラ↓
椅子のコレクション~ これ、ずっと見たいと思ってたんですよ。30年近く前はまだ形成されてなかったはず。 ※コレクション展は撮影可能
しかし!お目当ての椅子が出展されてなかった(泣)
館のHPで紹介されているリートフェルトの「レッド・アンド・ブルー」と倉俣史朗の「ミス・ブランチ」が両方ともなかったんですよ
「レッド・アンド・ブルー」は専門学校時代の授業でレプリカを作った思い出の椅子だし、「ミス・ブランチ」は購読していた「室内」という雑誌で一目惚れした椅子。当時はアクリルにハマってて、私の卒業制作はアクリル素材の鏡台だったくらいです。
今回、二作品が見れなかったのはもっとも残念だった案件です。。。また、機会あったら行くんだ。ぐすん。
でも他にも気に入った椅子があったのでそれをご紹介。
左から順に川上元美氏の「CCC」(写真左上)、倉俣史朗氏の「硝子の椅子」、エットーレ・ソットサスJr&マルコ・ザニーニの「イーストサイド」。
川上元美氏の椅子はどれも背もたれと座椅子の角度が私の好きなデザインで、他にも「ブロンクス」というアルミと樹脂素材を使った椅子も好きでした。倉俣史朗氏の椅子は「ミス・ブランチ」と同じく透明感の醸し出す美しさが際立っていて、座り心地というよりオブジェとして美しい椅子です。逆に、座り心地が良かったのは「イーストサイド」。クッションの固さが硬すぎず軟らかすぎずで本当にちょうど良かったんです。カラーも可愛い上に、接地面にアクリル(もしかしたらガラス)があしらってあってキュンとしました。
そうだ、木と革で作られてるボーゲ・モーゲンセンの「スパニッシュ・チェア」も素敵でした。
椅子はどれもこれも欲しくなっちゃいますね。
コレクション展といえば、絵画のほうは思い出のポール・デルヴォーの〈夜の汽車〉が出てました!
あれ、こんなサイズだったっけ。もっと大きかったと思ってましたが。
印象が強かったので、〈こだま〉とかのサイズと混同していたようです。記憶って曖昧なんだなぁ。
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こんな感じで、富山県美術館を楽しんできました
この後、富山市内の富山市ガラス美術館にも寄ったので、そのレポートは次の記事で。
昨年の夏にオープンした(春はプレオープン)富山県美=愛称「TAD」は、富山県立近代美術館の後継として建設されました。
近代美術館のほうはシュールレアリスムにハマっていた20代の頃に一度来たことがあり、初一人旅だったこともあって大変思い出深い美術館でした。ポール・デルヴォーを観てファンになったのもここのコレクションがきっかけでした。
富山はとても好印象だったこともあり移転を聞いてからはうずうずしており、気になる企画展があったら行こうと決めていました。
白羽の矢が立ったのはこちらの展覧会。
今、たいへん人気のある日本画家、千住博氏の高野山金剛峯寺襖絵完成記念展です。
今回は前述の襖絵の公開をメインに、これまでの作品も展示されています。作品が大作であることもあって、総数は25点と、それほど多いわけではありません。
しかし、展示に工夫が凝らしてあるため物足りなさを感じることはありません。
メインの襖絵に関しては金剛峯寺と同じ配置で展示されているのはもちろんのこと、依頼されてから制作までの過程がコンセプトから計画手順、技法に至るまでとても詳しく説明されています。
先週のNHK日曜美術館のアートシーンで会場で流れていた映像が取り上げられてたのでご覧になった方もいるかと思いますが、制作風景もオープンになさっています。
茶の間を飾ることになっている〈断崖図〉の制作にあたり、岩肌を表現するのに紙(雪肌麻紙)を揉んでしわを作っているところを映したり、囲炉裏の間の〈瀧図〉を描く際に「軟靱膠素で焼群青を塗ったところに水を刷毛塗りしてそこに胡粉を流す」というような画材の使い方の説明をパネルにしたりしているのです。
こういう事って、絵を嗜む人にとっては手法をわざわざ紹介しているという程度にしか思わないかも知れませんが、絵を描かない素人(または絵を描き始めた初心者)にとってはたいへん興味深いものです。
実際、私はこの説明を読んで黒だと思っていた部分が墨ではなく焼群青であることを知り、他の滝の絵と比べて見るという楽しみ方ができました。
千住博氏は滝の絵がたいへん有名なため、襖絵の〈瀧図〉もそれの延長だと思っていたのですが、他の滝の絵のような「黒」でなく「深い青みのあるグレー」で暗さを表現しているため絵に美しさと深みを与えていることに気付きます。また、岩絵の具を使うことによる保存の観点からの将来性まで考えていることはなるほどと感心させられました。
そして今時の工夫があるのがコチラ。
この作品は撮影が可能です。SNSにアップするときはハッシュタグ#千住博他をつけてください、という説明付き。
この部屋は数分ごとに照明がフェイドアウトしていき、ブラックライトによって滝が浮き上がるという展示方法です。これはキレイ、これは映える。まさにインスタ映えですわ。
初期の頃の絵を見ていると、確かに美しいんだけれど特別に注目される画家ではなかったんだろうなぁ、と正直思ってしまいます。その後、万人受けするような題材で美しく描いてしまうところとか、見せ方(魅せ方)が上手いところとか、家族構成とか、NYのアトリエがスタイリッシュなところとか、「あぁ、この人は売れるべくして売れたスターだなぁ」と感心させて頂きました。
さて、展覧会も楽しかったけれど、美術館のロケーション自体がもう楽しい。
内藤廣建築設計事務所の設計ですが、メガトラスという架構を使うことで柱が少ない広々とした空間を実現しています。アルミを使った近代的な建物だと思ったら、アルミは富山県の特産物らしいですね。
また、材木置き場だった運河を再開発で生まれ変わらせたという富岩運河環水公園が隣接しており、観光としての要素は抜群です。
館内にあるレストラン、たいめいけんでは昔見た映画「たんぽぽ」で出てきたオムライスも味わえました。
今回は企画展以上に常設展が楽しみだったのですが、その第一弾がコチラ↓
椅子のコレクション~ これ、ずっと見たいと思ってたんですよ。30年近く前はまだ形成されてなかったはず。 ※コレクション展は撮影可能
しかし!お目当ての椅子が出展されてなかった(泣)
館のHPで紹介されているリートフェルトの「レッド・アンド・ブルー」と倉俣史朗の「ミス・ブランチ」が両方ともなかったんですよ
「レッド・アンド・ブルー」は専門学校時代の授業でレプリカを作った思い出の椅子だし、「ミス・ブランチ」は購読していた「室内」という雑誌で一目惚れした椅子。当時はアクリルにハマってて、私の卒業制作はアクリル素材の鏡台だったくらいです。
今回、二作品が見れなかったのはもっとも残念だった案件です。。。また、機会あったら行くんだ。ぐすん。
でも他にも気に入った椅子があったのでそれをご紹介。
左から順に川上元美氏の「CCC」(写真左上)、倉俣史朗氏の「硝子の椅子」、エットーレ・ソットサスJr&マルコ・ザニーニの「イーストサイド」。
川上元美氏の椅子はどれも背もたれと座椅子の角度が私の好きなデザインで、他にも「ブロンクス」というアルミと樹脂素材を使った椅子も好きでした。倉俣史朗氏の椅子は「ミス・ブランチ」と同じく透明感の醸し出す美しさが際立っていて、座り心地というよりオブジェとして美しい椅子です。逆に、座り心地が良かったのは「イーストサイド」。クッションの固さが硬すぎず軟らかすぎずで本当にちょうど良かったんです。カラーも可愛い上に、接地面にアクリル(もしかしたらガラス)があしらってあってキュンとしました。
そうだ、木と革で作られてるボーゲ・モーゲンセンの「スパニッシュ・チェア」も素敵でした。
椅子はどれもこれも欲しくなっちゃいますね。
コレクション展といえば、絵画のほうは思い出のポール・デルヴォーの〈夜の汽車〉が出てました!
あれ、こんなサイズだったっけ。もっと大きかったと思ってましたが。
印象が強かったので、〈こだま〉とかのサイズと混同していたようです。記憶って曖昧なんだなぁ。
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こんな感じで、富山県美術館を楽しんできました
この後、富山市内の富山市ガラス美術館にも寄ったので、そのレポートは次の記事で。
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