語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~

2014年12月13日 | 社会
 衆議院解散前日(11月20日)付けで、
萩生田光一・自民党筆頭副幹事長および福井照・報道局長から、
在京テレビキー局編成局長および報道局長宛て、
要請文書が出された。いわく、選挙があるので「公正中立」と「公正」な放送を心がけろ、うんぬん。
 萩生田は、総裁特別補佐も務める安部総理の側近。ゆえに、この文書は安部総理に代わって発出された、と受けとめられた。

 「公正中立」や「公正」の文言がある要請だから問題なしか、というと、それは全く違う。
 (1)A41枚の文書の中に「公正中立」、「公正」という言葉を13回も繰り返し強調していて、本気だぞ、という脅しをかけている。
 (2)「出演者の発言回数及び時間等」「ゲスト出演者等の選定」「テーマについて」「街角インタビュー、資料映像」など具体例を挙げて要請している。・・・・こうした問題について自民党は日ごろから文句を言っているので、言われたテレビ局は個別に何をするなと言われているのかがピンと来るようになっている。具体的な圧力なのだ。
 (3)テレビ朝日の報道局長の発言が問題となって国会で証人喚問が行われた例(いわゆる「椿事件」)を(具体名を出さない形で)引き合いに出している。・・・・政権党として、言うことを聞かないと国会に呼びつけるぞ、そして、政府は放送免許剥奪の権限があるぞ、と脅しをかける意味合いがある。

 自民党の今回の文書発出は、どう見ても政権与党として禁じ手だ。
 明らかに憲法が保障している表現の自由への重大な挑戦だ。
 これが他の先進国で起きたら、単なる政権批判だけではすまない。政権そのものが揺らぐ大問題になるはずだ。

 ところが、驚くべし、この文書を受け取ったテレビ局や、それを知った他の報道機関の多くが、本件を重大な問題だと受け止めていない。自民党の「暴挙」を知りながら、日本の報道機関はほぼ1週間放置した。テレビ局は、報道したら安部総理に睨まれるから、ということでおとなしくしていた。政府を監視するというマスコミの役割を果たす気力も能力も持っていなかった。
 官邸詰めの記者クラブにいたテレビ局以外の新聞社の記者たちも、うすうすと知っていたらしい。しかし、どの新聞も通信社もこれを報道しなかった。
 インターネットテレビ「ニューズオブエド」が、最初に報道した。
 しかし、その後もテレビ局はニュース番組でこれを取り上げていない。・・・・これは、結果的に、在京キー局が選挙に際して自民党擁護の役割を果たすことになる。偏向以外の何ものでもない。これこそ、放送免許剥奪につながる問題ではないか。

 「国境なき記者団」が発表している「報道の自由度」世界ランキングによれば、日本はG7の中ではダントツのビリだ。
 先進国でも、異例の下位にあり、2014年は何と59位だ。
 民主党政権時代は、10位台か、悪くても20位台だった。
 第一次安倍内閣の時も51位を記録しているから、安倍総理は構造的に報道に対して弾圧的だと世界にも認識されているわけだ。

 日本は独裁国家へ至る会談を着実に歩みつつあるように見える。
 政府が報道機関に圧力や懐柔をかけてくる「ホップ」。
 国民が洗脳されていく「ステップ」。現在はこの途上だ。
 次は、洗脳された国民をマスコミが煽り、選挙による一党独裁が実現する「ジャンプ」。
 そして、その先に戦争が待ち受けている。

□古賀茂明「自民党の圧力文書 ~官々愕々第135回~」(「週刊現代」2014年12月20日号)
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1 コメント

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野党に投票しよう (AMEKAZE)
2014-12-13 11:34:25
安倍総理は平成15年10月からの消費税10%増税を景気条項に基づき延期することを決定し、この決定について国民に信を問うために衆議院を解散した。しかし、国民は国会における立法により景気条項を認め、景気条項による判断を内閣に委ねたのであるから、景気条項に基づく消費税増税の延期について改めて国民に信を問う必要はない。安倍総理による今回の解散の決定は、野党の選挙準備が整わないうちに選挙を行うことにより、政権の延命を図ろうとするものであり、真意を隠す偽装解散である。政治を私物化するもので大義はないが、今回の解散による総選挙は安倍政権の政権運営そのもの、すなわち公約違反を繰り返し、国民の意見に耳を傾ける姿勢がなく、また多くの国民に生活苦をもたらした政権に対して、国民が審判を下す絶好の機会である。野党が強くならないと国民の意見が無視され政権のやりたい放題となり、国民の間にある意見の相違や利害の対立を調整することが本来の使命である政治が機能しなくなることを安倍政権が証明した。
野党を強くするために、大義なき解散に怒りをもって投票に行こう。

安倍政権のこの2年間は、公約になかった特定秘密保護法を国民の意見を無視し国会で十分な審議も行わずに成立させ、また憲法改正によることを公約していた集団的自衛権の行使容認も公約に違反して閣議決定でおこない、国会での審議も全く不十分のままである。さらに、安倍総理は「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指します。」と公約していたが、原発を「重要なベースロード電源」とすることや核燃料サイクルを維持する公約違反の「新エネルギー基本計画」を閣議決定した。また原子力規制委員会の委員長が「規制基準に適合しても原発が安全とは言わない」と発言しているにもかかわらず、原子力規制委員会の審査を通ったものは安全性が確保されたとして再稼働を進めており、行政機関としての統一性がなく無責任である。
安倍総理は積極的平和主義を唱えているが、平和を達成するために、紛争当事国やその友好国、国連などに、また近隣諸国との友好関係を増進するために韓国や中国などに積極的に働きかけを行っている姿勢が見られない。積極的な外交により平和を構築する努力をせずに、安倍総理は、集団的自衛権の行使容認など、自衛隊が海外で武力を行使する活動範囲を広げることばかりを行っている。また安倍総理は従来の原則武器の輸出を禁止した武器輸出三原則を防衛装備移転三原則に変更したが、これは武器輸出を認めるものである。安倍総理の積極的平和主義は、その実、積極的海外武力行使主義であり、防衛装備移転三原則は武器輸出解禁三原則である。積極的平和主義も防衛装備移転三原則も実態を隠すために用いた用語法であり、今回の偽装解散もこれと同列のものである。
さらに、アベノミックスの経済政策により貧富の格差が増大し、とくに若者や女性の生活苦は増すばかりである。アベノミックスによる経済成長と国民生活の安心は幻想である。
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