語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】非公開会議による報告書の書き換え ~核燃料サイクル~

2012年05月29日 | 震災・原発事故
(1)内閣府原子力委員会(近藤駿介・委員長)は、審議会等の一つ(2001年1月6日、中央省庁再編)【注1】。
 同委員会には、事務局のほか、現在、小委員会(原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会)、専門部会(政策評価部会・原子力防護専門部会・食品照射専門部会・研究開発専門部会・原子力試験研究検討会・核融合専門部会・新大綱策定会議)、懇談会(市民参加懇談会・国際問題懇談会)が設置されている【注1】。

(2)事務局には、電力会社の出向社員が4人、非常勤職員として採用されている【注4】。原子炉メーカーの社員も【注3】。

(3)原子力委員会は、原子力を推進する最高機関で、原子力政策大綱の改定も審議する【注3】。核燃サイクル問題とあわせて政府のエネルギー・環境会議に複数の改定案を示し、政府は他のエネルギー政策とともに「国民的議論」を経て決める【注3】。
 昨年9月、原子力政策大綱の見直し作業が再開されたが、策定会議メンバー27人は事故前とほぼ同じで、八木誠・電気事業連合会長/関西電力社長、鈴木篤之・日本原子力研究開発機構理事長、田中知・東京大教授/日本原子力学会長ら原子力関係者が目立つ【注7】。

(4)原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会は、原発から出る使用済み核燃料の処理方法を議論し、5月16日の会議で、(a)「全量再処理」(従来路線の核燃料サイクル政策を推進する)、(b)「全量直接処分」(地下へ直接燃料を埋める手法で再処理工場が不要になる)、(c)両者の「併存」・・・・の三つの選択肢を示した【注2】。近く政府の「エネルギー・環境会議」に報告し、今後の政策が決まる【注2】。

(5)事務局は、電力会社など原発推進の側だけを集めた「勉強会」と称する非公開会議を昨年11月から今年4月まで計23回開催した【注5】。
 「勉強会」では、核燃料サイクル政策の見直しを議論する小委員会の審議前に、資料を業者に流していた【注3】。 会合に小委員会から出席していたのは座長のみ【注3】。報告書案は、事業者に有利になるよう書き換えられた【注3】。

(6)4月24日の非公開会議では、核燃料サイクルの方向性をめぐる議論が大詰めを迎えた【注6】。鈴木達治郎・原子力委員会委員長代理/核燃料サイクル技術等検討小委員会座長、日本原燃(青森県六ケ所村で使用済み核燃料再処理工場を運営)、電気事業連合会幹部ら約30人が顔をそろえ、日本原燃幹部は、再処理工場の存続を求めた【注2】。その場で配られた元資料(事務局作成)には、「全量直接処分」について「総費用においては優位」と言い切る表現だったが、5月8日の小委員会の資料では、経済的には「優位となる可能性が高い」と表現が後退し、直接処分よりも全量再処理や併存に優位性があって再処理工場の存続が有利ともとれる表現ぶりに書き換えられた【注2】。
 密室で恣意的な議論誘導がなされている(疑惑)【注6】。事務局を通じて利害関係者が情報を入手し、委員を差し置いて政策を取り仕切ろうとしているのだ(「ムラ」の構図そのもの)【注3】。
 「原子力ムラ」のなれ合い体質が、推進側の最高機関である原子力委員会に温存されていたことが露呈した【注6】。
 近藤委員長は非公開会議に4回出席【注5】。事務局を通じて利害関係者が情報を入手し、委員を差し置いて事業者が情報を間断なく入手できる環境を整える仕組みに、近藤委員長が「お墨付き」を与えたように見える【注6】。

(7)別の委員会に属する浅岡美恵弁護士は、審議が事務局に誘導されたり、実際の議論と事務局がまとめる内容に隔たりがあったりすることを詳細な資料にして提出している。【注3】

(8)<日本はいつまで原子力ムラの横暴を許し続けるのだろうか。今こそ、核燃料サイクルを見直す時である。巨額の核燃マネーは、被災した方々や子どもたちのために活用してほしい。>【注8】

【注1】「原子力委員会」【ウィキペディア】
【注2】記事「核燃再処理、評価を有利に修正 非公開会議で原子力委」【朝日新聞デジタル記事2012年5月24日18時03分】
【注3】社説「原子力委員会―この反省のなさは何だ」【朝日新聞デジタル記事2012年5月25日00時50分】
【注4】記事「電力業界の原子力委出向見直し 細野原発相が表明」【朝日新聞デジタル記事2012年5月25日11時49分】に拠る。
【注5】記事「「あいさつしただけ」 原子力委員長も非公開会議に出席」【朝日新聞デジタル記事2012年5月25日13時50分】に拠る。
【注6】記事「原子力委、推進派だけで会議 批判噴出、政権火消し躍起」【朝日新聞デジタル記事2012年5月26日03時00分】
【注7】記事「事故後も組織そのまま 役割一変、薄れる存在意義」【朝日新聞デジタル記事2012年5月26日03時00分】
【注8】武藤北斗(会社員、大阪府茨木市、36歳)「核燃サイクル 今こそ見直せ」 【朝日新聞デジタル記事2012年5月29日03時00分/朝日新聞「声」欄】
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