事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

光る君へ 第16回「華の影」

2024-04-21 | 大河ドラマ

第15回「おごれる者たち」はこちら

ひき続き、三兄弟のお話。ブーフーウーで言えば、どうしたって次男のフーの影が薄い。だけれども、

「汚れ仕事はおれがやる」

と道兼が久しぶりにやる気を見せる。悪徳の人に見せて、ウー(道長)への感謝を見せるあたりの仕掛けは、ドラマというものを知り抜いた脚本家だからできたこと。

そして、コロナの話でもある。京に疫病が蔓延する。為政者がどう対応するか、このあたりの描写もうまい。

権力の頂点にいる道隆(井浦新)は、民の苦しみを知ろうともしない。疫病は高貴な者にはかからないとすら放言する。

道長(柄本佑)は民を救おうとして、まひろ(吉高由里子)と再会し……

さて、新型コロナウィルスに翻弄されたわたしたちにとって、長男にはまもなく報いがあるという話はわかりやすいが、どうもそう単純ではない。

医療従事者(ではないが)の代表として紫式部が罹患し、道長は彼女の看護に血道を上げる。それはいい。

ただ、疫病への対処として、なにが正解だったかはわたしたちは今でも見つけられずにいる。道長がまひろの家族すら近づけないあたりの判断はこのご時世に当然のこと。そこを大河ドラマの中心にもってきたのはアクロバットに近い。感染者に同情して接触したまひろこそが、これまでのドラマのキャラクターに似合っていたのだし。

日本の人口の3割までもが感染した新型コロナウィルスについて、後年にどう語られるか。どうしてわたしは感染しなかったのだろう。高貴だから?絶対違う(笑)。誰しもが感染する可能性があり、誰しもが死ぬ可能性があるということを前提に考えられるのが、いい政治家であり、いい市民だという結論でしょうか。

第17回「うつろい」はこちら

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「ちぎれた鎖と光の切れ端」荒木あかね著 講談社

2024-04-20 | ミステリ

此の世の果ての殺人」で、23才で江戸川乱歩賞を受賞した俊英の受賞第1作。このミステリも圧倒的に読ませる。どれだけの才能なんだ。

1部と2部に分かれていて、1部は絶海の孤島で起こる連続殺人。前の殺人の第一発見者が殺されていくのはなぜか。この第1部と2部の関係性がこの作品のキモになっている。荒木あかねおそるべし。

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明細書を見ろ!2024年4月号 今年の給料袋は……

2024-04-19 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2024年2月号「寒冷地手当」はこちら

三年ぶりに新規採用者がやってきたし、人事異動もあったので、事務部報を使って給与等を中心に基礎から解説することにします。

もっとも、ニューカマーの人たちの半数以上がこの「明細書を見ろ!」という高飛車な事務だよりを読んだことがあることに気づいてびっくり。この業界にわたしは長くいすぎたかも。

さて、2024年の春はなんでもかんでも上がっていることが特徴。

・物価が上がっている

・金利が上がっている

・賃金も上がっている

地方公務員として最後のやつは納得できない、と考える人もいるでしょうが、世の中の賃金が上がることで、公務員の給与は連動して上がることになるのです。年末に通帳を見ると納得できるはず。そのあたりの事情はおいおいお知らせします。裏面には、今年の市費配当表を掲載。いやはや、今年も渋いです。

(わたしは給料袋に画像を仕込んでいるので)このふざけた給料袋はなんなんだとお思いでしょうが、我慢してください。スティーリー・ダン、ビル・エヴァンス、アート・ペッパーに続いては、世界でいちばん有名なアルバムジャケット

最初はエベレストで撮影されるはずだったのに、疲れたから、とアビーロードスタジオのすぐそばの横断歩道で撮影されたのは有名な話。

2024年5月号「教職調整額」につづく

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「きこえる」道尾秀介著 講談社

2024-04-19 | ミステリ

いけない」シリーズで、最後の写真でストーリーをひっくり返してみせるなど、果敢な挑戦がうれしい道尾秀介。今回はQRコードを掲載し、音声でひっくり返してみせる。

このアイデアもすばらしいと思ったが、その音声がよくきこえないんだよね。ひょっとしておれのスマホのせい?

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「あのとき売った本、売れた本」小出和代著 光文社

2024-04-18 | 本と雑誌

書店員にドラマあり。

それはいいんだけど、この本を他の店の書店員が読んだら激怒するんじゃないかなあ。というのも、この小出さんは紀伊国屋書店本店の文芸の棚を担当。大手だから取次から配本がないとかいう心配もないし、人気作家もサイン会に来てくれる、出版社の営業も低姿勢……その対極にいるのが地方の中小零細書店だから。

でも、大手には大手でいろいろと苦労が。なるほど。

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「ウルフ・オブ・ウォールストリート」The Wolf of Wall Street(2013 パラマウント)

2024-04-17 | 洋画

レオナルド・ディカプリオは嫌いじゃない。演技のうまさは並ではないし。マーティン・スコセッシが素晴らしい監督であるのは誰もが認めている。特に音楽のセンス。

しかしこのふたりが組むと、どうにも味が濃くなりすぎるというか……

でも、この作品についてはそれが幸いした。

だって、これってはっきりとコメディだからだ。特に、ラリったディカプリオがなんとかクルマに乗り込むあたりの動きは、コメディアンのアクションそのもので、味の濃い演技でなければ、むしろ息苦しい映画になったのではないかと思う。

いやしかしセックス、ドラッグ、そしてマネーまみれの生活が、往時のハリウッドを想起させるあたり、スコセッシがめざしたのは「ハリウッド・バビロン」の喜劇版だったのであろう。マーゴット・ロビーの美乳もおがめてお得な一本。

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「ある男」(2022 松竹)

2024-04-16 | 邦画

原作が「決壊」「ドーン」の平野啓一郎。監督は「愚行録」「蜜蜂と遠雷」の石川慶、脚本が山下敦弘とのコンビが多い向井康介。キャストは妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、柄本明……これだけの作品を、なぜ見逃していたのだろう。ちょっとびっくりするくらいすばらしい映画だった。

離婚して、故郷の宮崎にもどった里枝(安藤サクラ)は、文房具店を営みながらつらい日々をすごしていた。そこへ、画材を求めてある男が訪れ、大祐と名乗ったその青年(窪田正孝)と里枝の距離は次第に縮まり、先夫との子、二人の間の子の四人で穏やかな生活が始まる。

しかし、不幸な事故で大祐は亡くなってしまう。彼の兄(眞島秀和)が訪れ、遺影にお線香をあげるが、兄はいぶかしむ。

「これ、大祐じゃないですけど」

では、彼はいったい何者だったのか。理江は離婚したときに世話になった弁護士、城戸(妻夫木聡)に調査を依頼する。城戸はその調査にのめりこんでいく。彼が在日であることを柄本明に一瞬にして理解されるあたりの仕掛けがうまい。

この、名もなき男の人生こそこの映画の勘所。名を捨てるという選択肢については、そうだろうなとも思いつつ、そうなんだろうかとも。

石川慶は「愚行録」に顕著だったが、エキストラの一人ひとりにまで自然な演技をさせたていねいな監督だ。その特徴はこの作品でも充分に発揮されている。妻夫木、安藤、窪田以外のキャストも、ドラマと有機的にからんですばらしい。

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光る君へ 第15回「おごれる者たち」

2024-04-15 | 大河ドラマ

第14回「星落ちてなお」はこちら

今回ははっきりと兄弟の話。

兼家(段田安則)亡き後、藤原三兄弟はそれぞれの性格を見せ始める。

・長男の道隆(井浦新)は摂政として専横を始め、娘の定子(高畑充希)を中宮にすえるなど、身びいきな人事が露骨。

・次男の道兼(玉置玲央)は汚れ仕事の果てに父親に見放されたと酒におぼれ、妻子とも別居する。

・三男の道長(柄本佑)は、そんな道兼を励まし、表舞台に復帰するように説得をつづける。

なんか、「リア王」というより「三匹の子豚」みたいになってきた。調子こいてる兄たちをしのいで、栄華を極めるのはレンガの家を建てた末っ子だったという定型のオチが見えてくる。

さて、今回はいよいよファースト・サマーウイカが定子によって清少納言を名のることになるエピソードもあった。

あのぉ、歴史どころか古文も苦手だったわたしは、「せい・しょうなごん」じゃなくてフラットに「せいしょう・なごん」と発音していました。どうして誰も指摘してくれなかったんだ。

そのうえに、蜻蛉日記の作者である藤原寧子(財前直見)も大々的にフューチャーされるけれども、蜻蛉日記をわたし読んだことないし、「枕草子」だって橋本治の桃尻語訳でしか……もうちょっと古文を身を入れて勉強していれば、香炉峰の雪なんてフレーズにちゃんと反応できたんでしょうけど。

ああ今となってはすべてが遅すぎる。

第16回「華の影」につづく

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「ギャンブラーが多すぎる」ドナルド・E・ウェストレイク著 新潮文庫

2024-04-15 | ミステリ

「ウェストレイクの小説は、わたしが何度でも読み返す数少ない本のひとつ。『戦争と平和』やプルーストなんて戯れ言は忘れて、無人島に持って行くべき本だ」
ローレンス・ブロック

ドナルド・E・ウェストレイクの作品を読むのって何年ぶりだろう。運の悪い泥棒のドートマンダー(殺さない、というシャレ)のシリーズや、リチャード・スターク名義の悪党パーカーなど、読者を喜ばせずにいられるか、という気合いがうれしい職業作家だったのである。

新潮文庫がロス・トーマスにつづいて未訳作品を発掘。訳者もおなじみの木村二郎さんだ。

タイトルがよかったせいでかなり売れたと編集者は「本の雑誌」で語っていたけれど、わたしのような世代は、ウェストレイク作品をもっと出してくれたら必ず買いますよ。こんなに面白いんだもの。

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ヘアーの不毛 その16「バビロン」Babylon(2022 パラマウント)

2024-04-13 | 洋画

その15「プレタポルテ」はこちら

セッション」でその年のマイワースト。「ラ・ラ・ランド」で熱狂させてくれた、どうにも当たりはずれが激しいデイミアン・チャゼル監督の、いまのところ最新作。

オープニングから度肝を抜かれる。1920年代のハリウッド。映画会社の重役が開いたパーティ。んもうアンダーヘアどころかお宝まで露出する乱交ぶり。というか本来R18+で撮影されていたものが、日本ではミスでR15+で公開されてしまい、急いで修正版に差替えたという信じられないようなエピソード付きである。

パーティに参加していた女優がオーバードーズで倒れてしまい、翌日の撮影に代役を立てることになる。選ばれたのはパーティに潜り込んでいたネリーだった。彼女が現場に行くと「胸がないじゃないか!」と大ヒンシュク。演じているのはマーゴット・ロビー。でもこの人は芸能界でいちばんきれいなお尻をしていると勝手に思っております。

主役はブラッド・ピット。サイレントからトーキーに移行する時代に、大スターである彼はうまくのりきれるか……

結果的にこの「バビロン」は大コケ。コロナの影響とか言われているけれども、お話がどうにも重すぎる。今回はちょっと外した方のチャゼルでした。

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