事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「おみおくりの作法」Still Life (2013 ビターズ・エンド)

2024-04-12 | 洋画

阿部サダヲが主演した「アイ・アム まきもと」の元ネタになった作品。だからわたしはリメイクの方を先に見たことになる。

こちらは主役のエディ・サーマンの個性が影響してか、徹底的に静かな(原題どおり)映画になっている。どちらがいいというわけではなくて、どちらもすばらしい作品になっている。

死をあつかう以上、この映画のようにしみじみした画調を優先するか、まきもとのようにあのラストを強調するか、好き好きでしょう。

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「オッペンハイマー」Oppenheimer(2023 ビターズ・エンド)

2024-04-11 | 洋画

製作はユニバーサルだから、本来であれば日本では東宝東和によって配給されるはずだった。監督はクリストファー・ノーランだから内容は折り紙つきだ(彼の映画がつまらなかったことは一度もない)。

キリアン・マーフィロバート・ダウニー・Jrエミリー・ブラントと雰囲気のある役者をそろえ、くわえてマット・デイモン、ケネス・ブラナー、ラミ・マレック(どうしてあんなに小さな役にボヘミアン・ラプソディの彼を……と思ったらそう来たかあ)、アインシュタインには「戦場のメリークリスマス」でミスター・ローレンスをやったトム・コンティ、そしてトルーマン大統領は……と豪華キャストなのである。世界興収は10億ドルに近い大ヒット。

しかし、日本公開は北米よりも半年も遅れ、配給会社もビターズ・エンドに変更された。なぜかと言えば、この映画はロバート・オッペンハイマーを描いた作品だからだ。

オッペンハイマーとはすなわち、原子爆弾を開発した人なのである。日本人にとっては、微妙な話だと。

ノーランのことだから、原爆プロジェクトは大成功だぜバンザイ、的な単純な話にするわけがない。複雑な個性をもつオッペンハイマー(女好きなユダヤ人で、左翼的傾向がある)が、なぜマンハッタンプロジェクトを成功させえたか、そして広島、長崎を経過し、彼がどんな思いでいるかがていねいに描かれている。

被爆者の悲惨さが描かれていない、という指摘はもっともだと思う。しかしそれをやると、主人公であるオッペンハイマーから観客の心が離れてしまうという懸念もまたあっただろう。まあ、セックスシーンで浮気相手をトップレスにしたためにR指定になったぐらいだから、少しは残虐な描写があっても観客はドン引きなどしなかっただろうと思うが。

アカデミー賞の主要部門をほぼ独占したこの作品を、はたしてアメリカ人自身がどう見たのか、そちらの方がわたしは気になる。とにかく、傑作です。必見。

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「許されざる者」レイフ・GW・ペーション著 創元推理文庫

2024-04-11 | ミステリ

北欧ミステリの大家が描く、CWA賞受賞作。有能で鳴らした元警察官僚が倒れ、しかし懸命に少女殺害事件を追う。途中で気づきました。わたし、これ1回読んでる(笑)

こういうことがこれから増えていくんだろうなあ。だから犯人はわかっているし、その後の展開も知っている。でも面白い。それは、初老の男の回復の物語だから。自分が年を取って、この方面で楽しめるようになりました。

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日本の警察 その145「新・教場」長岡弘樹著 

2024-04-10 | 日本の警察

その144「陰の季節」はこちら

風間公親の教場シリーズ最新作。風間が警察学校の教官になりたてのころ。このシリーズの魅力は、警察をめぐる小ネタが徹底的にぶちこまれていること。警笛を庭に埋めておくと、土壌のpHが変化してそこに咲くアジサイの色が変わる。そんな事象を、学生たちの人生にからめるあたりがうまい。

最後に参考文献が掲載されているけれど、意外に下世話な書が多い。北芝健の警察内幕ものとか。しかしこれは、あの「新宿鮫」の初期でも大沢在昌は雑誌「ラジオライフ」から引用していたりしていたので、日本警察小説の伝統芸と言えるかもしれない。

その146「警視庁いきもの係」につづく

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うまい店ピンポイント 春休み何でもあり祭りVol.09 白南風&龍上海東根店&翠苑

2024-04-09 | 食・レシピ

Vol.08「哲&高砂&丸亀」篇はこちら

「伍長、やることはやってたんですね」

「やってたの。翠苑の冷麺とか龍上海東根店とか白南風とか。」

「春休み何でもあり祭りもこれで終了。さみしい」

……っていうか、こういう毎日違う店に意地でも通うというバカなまねは、今年度限りかあ。いや待てよ。おれのことだから(T_T)

遠征して四十番篇につづく

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「チャンバラ」佐藤賢一著 中央公論新社

2024-04-09 | 本と雑誌

地元作家、佐藤賢一による宮本武蔵伝。意外なことに技術としての剣術が徹底して描かれる。

たとえば巌流島。佐々木小次郎を倒すために武蔵が繰り広げる小細工の数々。奸計と断言できるほど卑怯なテクニック。わたしは佐藤のあまりいい読者ではなかったけれど、こういう時代小説ならまた読んでみたい。いやはや面白かった。

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「コントが始まる」(2021 日本テレビ)

2024-04-08 | テレビ番組

妻は日テレ「コタツがない家」に夢中だった。

「とにかく面白いの。で、泣かせてくれるの」

そっかー。あの人はあいかわらずやってるんだなあ。

あの人……脚本の金子茂樹のことです。かつて「俺の話は長い」で盛大に笑わせ、そして泣かせてくれた人。無愛想な登場人物たちがくりひろげる悲喜劇。ほぼ引きこもりだった生田斗真が、“生活”に立ち向かうことをラストで決心する姿には勇気づけられたものだった。

この「コントが始まる」もほぼ同じ構図。菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀という強力な三人がコントトリオを組み、そして解散を決めて……

オープニングで彼らのコントが披露され、その回のコンセプトを象徴するネタになっている。そして一気にドラマになだれこむ。

高校時代の思い出、うれない芸人の悲哀、家族の愛情(「光る君へ」の義賊役でブレイクした毎熊克哉が菅田将暉のお兄さん役。元エリートのひきこもりという設定が泣かせた)などなど、よくもまあこんなにとうなるほどドラマが濃い。泣いた泣いた。

トリオの三人はもちろんだが、マネージャー役の中村倫也がすばらしい。トリオにクールに接しながら、しかし彼らに自分の果たせなかった夢を仮託しているあたりが渋い。

そしてそして、トリオが通うファミレスの店員を演じた有村架純が魅力的。いやもちろん朝ドラ「ひよっこ」はよかったですよ。でもこのドラマの彼女は同時に艶めかしくもある。いかにも、生身の女性なのだ。

彼女の妹役が有村架純が築山殿を演じた「どうする家康」をかきまわした古川琴音。そして二年後の大河の主役が仲野太賀とは。大河っぽいドラマでもありました。いやあすごい。もう一回観ちゃおうかな。

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「アポカリプト」Apocalypto(2006 ブエナビスタ)

2024-04-08 | 洋画

マヤ文明のお話をメル・ギブソンが監督。どうにも見る気になれなくて今まで未見。いやーびっくり。圧倒的なアクション映画でした。部族間の争いの果てに、ラストに至って……的なアイデアもたっぷり仕込んであってすばらしい。ごめんねメル。

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光る君へ 第14回「星落ちてなお」

2024-04-07 | 大河ドラマ

第13回「進むべき道」はこちら

これまでドラマを引っ張ってきた藤原兼家(段田安則)が亡くなり、後継者争いは……長男の道隆(井浦新)であっさり。次男の道兼(玉置怜央)は怒り心頭(決まり文句)。しかし平安時代の「ゴッドファーザー」を標榜するこの大河では必然。

汚れ仕事をまかせた人間に自分の跡目を継がせるはずがない。継がせるはずがないからこそ汚れ仕事を任せたのだし。

それは、ゴッドファーザーでマーロン・ブランドが、可愛がっていたアル・パチーノに殺人をさせてしまったときの悲痛な表情によく現れている。

レストランのトイレに拳銃を忍ばせ、“実行”したあとにその拳銃を放り投げるパチーノの演技はすばらしかった。マフィアは後始末もちゃんとしているというストレートな表現でもあったんだろう。

さて、大河では恋愛模様がつづく。まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)はふたたび出会ってしまう。まあ、そんなに広い世界ではないんでしょう。

ここで試されるのは昔の女(はっきりと、そうなっている)と出会ったときに男はどんな態度がとれるかだ。

今だから言えますけど、わたしはグダグダでした。頬は引きつり、えーと後はなんも言えません(笑)。

野球が始まった。大好き。これまでの大河でわたしはどう対処してきたんだろう。今日みたいにデーゲームならいいんだけど(そして巨人が勝ってくれればもっといいんだけど)ナイトゲームのときはどうしてたんだっけ。

あ、わたしはBSでの視聴を優先し、それから野球に走ったのでした。えらいぞ俺(なのか?)

第15回「おごれる者たち」につづく

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今月の名言2024年3月号PART3 ばかやろう

2024-04-05 | 国際・政治

Steely Dan - Home at Last - Sony Music Center, NYC January 2000

「鳥山明と江口寿史」篇はこちら

「ばかやろう」

次回の衆院選に出馬しないとする二階元幹事長が記者会見で。「出馬しないのは、政治資金の責任か、あるいは年齢の問題ですか」との記者の質問に激昂。

「お前もその年がくるんだよ」と吐き捨て、ばかやろうにつながっている。

誰でも思い出すのが(いやリアルタイムではもちろん知りませんよ)吉田茂が国会で「バカヤロー!」と怒鳴り、結果的に解散することになったエピソードだ。

いわゆるバカヤロー解散である。後年に二階俊博がどのように評価される政治家なのかはまだわからない。しかし、この罵倒すら彼のオリジナルではなかったあたりが、どうにもこうにも。

本日の1曲はスティーリー・ダンの「HOME AT LAST」このセンスはただごとじゃないっす。チャリで聴きながら震えがきました。

4月号PART1「静岡の人」につづく

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