事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

恩田陸三昧 その4 「EPITAPH東京」朝日文庫

2020-04-08 | 本と雑誌

その3「私と踊って」はこちら

東日本大震災を経て、東京五輪へ。少しずつ変貌していく「東京」―。その東京を舞台にした戯曲「エピタフ東京」を書きあぐねている“筆者”は、ある日、自らを吸血鬼だと名乗る謎の人物・吉屋と出会う。吉屋は、筆者に「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが…。

将門の首塚、天皇陵…東京の死者の痕跡をたどる筆者の日常が描かれる「piece」。徐々に完成に向かう戯曲の内容が明かされる作中作「エピタフ東京」。吉屋の視点から語られる「drawing」。三つの物語がたどり着く、その先にあるものとは―。これは、ファンタジーか?ドキュメンタリーか?「過去」「現在」「未来」…一体、いつの物語なのか。ジャンルを越境していく、恩田ワールドの真骨頂!! 

(「BOOK」データベースより)

……プロの仕事だなあ。わたしはとてもこんなに上手に要約はできない(笑)。

にしても5年前にこれだけの作品を恩田陸は書いていたんだなあ。タイトルの「エピタフ」は墓碑銘のこと。このタイトルにしたのは、作品のテーマが死であることと、音楽好きの血が騒いでキング・クリムゾンの曲からいただいたのだろう。

子どものころから住居を転々とした彼女は、おそらく東京に対して愛着をいだくと同時に冷めた目でも見ていると思う。その冷静さがこのエッセイと小説のアマルガムを生んだと言える。まるで司馬遼太郎の筆致。さまざまなジャンルに挑む恩田陸のことだから、きっと意識したのだと思います。

不死の存在である吉屋(ヨシュアだ)の、遠い記憶を反芻する様子もいいが、仲のいい女友だちとの会話も意外に痛烈だったりする。むしろ、書きあがった戯曲のほうが(殺人する女性たち)まっとうなくらいだ。

その5「ドミノin上海」につづく


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