あの鉄腕アトムを現代によみがえらせた問題作。数あるアトムのエピソードのなかで、浦沢が漫画家をめざすきっかけとなった「地上最大のロボット」を、アメリカのイラク攻撃や人権問題といった現実をからめて戦略的にリメイクしている。単行本1冊目ラストのアトム登場シーンは衝撃的。行きつけの書店では発売当日にすべて売り切れてしまうほどの人気。みんな、首を長くして待っていたんだなあ。
浦沢は「マスター・キートン」や「MONSTER」あたりから物語ることのコツをつかんだのか“読者の胸ぐらをつかんで引きずり回す”ぐらいうまくなっている。もはや漫画界ではダントツの存在だろう。現在他誌で連載中の「20世紀少年」にしても、いったいどこまで行ってしまうのか、と不安になるぐらい。憂鬱な夜を吹き飛ばすのに最適な一冊。ぜひ。
2006年5月24日付事務職員部報「彼」より。
浦沢のストーリーテリングは、「パイナップルARMY」「マスター・キートン」で有能な原作者(工藤かつや、勝鹿北星)と組んだことにより培われたのだろう。長崎尚志もからんで、なかなかむずかしい問題もあったようだが。
「20世紀少年」特集はこちら。
「PLUTO」完結特集はこちら。
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