陰陽師的日常

読みながら歩き、歩きながら読む

サイト更新しました

2005-12-03 22:50:03 | weblog
先日こちらに連載していた「ほんの動物 ――わたしたちと「隣人」をめぐるささやかな考察」アップしました。
http://f59.aaa.livedoor.jp/~walkinon/
いつものことではありますが、ブログ掲載時のものに大幅に加筆しています。とにかく全部書いてしまわなきゃどうにもならない。どうもそういうやりかたしかできないみたいです。

ちょうど忙しい時期にぶつかったこともあって、いろんな意味できつい時期だったんですが(日によっては20分ぐらいで書いたのもあります)、頭のあちこちから、ネタ出しをするのはおもしろいものでした。ほんとはトマス・ハリスの『羊たちの沈黙』だの、スティーヴン・キングの『ペット・セマタリー』だのも出てくる予定だったんですが、涙を呑んで? 没にしたのもずいぶんあります。

***

今日、駅から出たところで、背の高いスーツ姿のふたりぐみのお兄ちゃんに声をかけられました。若い、純朴そうな顔をしたアメリカ人。そうです、モルモンズです。
「英会話を教会でやってます。習いに来てください」とチラシをくれようとしたので、
「あー、わたし、英語、わかんないんですよー」と言って、とっとと帰ってきました。いや、ほんと、教会に習いに行ったほうがいいかもしれないんですが(笑)。

モルモン教徒といえば、その昔、こんな経験があります。

高校時代、冬休みに友だちが「ウチ、いま親いないから遊びにおいでよ」と電話をくれたんです。
親には「Mちゃんちに勉強に行ってくる」と言って、家を出ました。
彼女の家にいくと、おどろいたことにリビングにそのスーツ姿のモルモンズがいるんです。
なんでも、布教に来たんだけど、宗教の話はしない、ということで、ピザをご馳走してあげることにしたんだ、と。

帰国子女で英語と日本語が同じくらいに話せるMちゃんは、せっせとピザを焼いていました。何も話すことがなければ、黙っていることにしているわたしは、本を広げて読み始めました。
そしたら、それは何の本? なんてことを聞いてくるわけです。そこでぼつぼつと話していたら、ピザをオーブンに入れたMちゃんが戻ってきて
"**は絵がとってもうまいのよ"みたいなことを言う。
じゃ、ぼくらも描いて、みたいな話になって、わたしも話すよりは絵を描いていた方がラクだったので、ひとりずつ、似顔絵をあげました。

十九歳と二十歳であること、大学在学中に、必ず二年間、外国で布教活動をしなければならないこと。ひとりのお兄ちゃんは、大学を卒業したら、一般の企業に就職するつもりだ、と言っていましたが、もうひとりのお兄ちゃんは、聖職者になろうかと、いま迷っている、みたいなことを言っていました。

そのほかにも、ユタ州のハイスクールでも、プロム(高校のダンスパーティ)があるの、とか、当時流行っていたマドンナの話とか、わたしが持ってきた数学の参考書を見て、わー、こんなむずかしいのやってるんだ、とか、ごくふつうの高校~大学生の話をしました。

すると、ひとりのお兄ちゃん(就職すると言った方)は、わたしの描き終えた絵に、髪の毛を書き加え始めたのです。クルーカットの短い髪は、おそらく伸ばすこともできないのでしょう。わたしのたいして似てもいない「似顔絵」でも、どうなっているのか、見てみたかったのだと思います。

納得したのか、自分が描き加えた肩までの髪の毛を、消しゴムで消して、わたしに、もういちど描き直して、と言いました。厚かましいヤツだなー、とは思ったけれど、まぁいいや、と、特別サービスで、もういちど描いてあげました。

Mちゃんの家でピザを食べ、コーラを飲み(カフェイン飲料、良かったのだろうか?)、ああだこうだくっちゃべって、おそらく教会の方は布教で廻っていた、ということにしているのでしょう、なんだか街頭で見かける、笑顔を貼り付けた感じのモルモンズではない、そこらへんのふつうのお兄ちゃんのような感じで、ああだこうだおしゃべりして、そうしてわたしの描いた似顔絵を、ふたりともフォルダーのなかに納めて帰っていきました。

わたしは絶対にそういうことはできないので、Mちゃんがいなければあり得なかった体験だったと思います。
おそらくもうモルモンズと話をすることもないと思うんだけど。

わたしの描いたへたくそな似顔絵、ユタ州にいったんでしょうか。

* * *

明日からまた翻訳の連載を始めようと思っています。ああ、それにしても、わたしってほんとうに働き者!
クリスマスネタは、もう少し引っ張ります(笑)。