去年はやらなかったのですが、ご要望があったので今年はやります。
恒例の「陰陽道的に意味のない“陰陽師的占い”」でございます。
今年のテーマはあなたが来る2011年、「何に気をつけたら良いか」ということです。
どうか星座ごとにあげる「注意点」に留意して、波瀾万丈、何が起こるかわからない新しい一年を、パワフルに、きめ細やかに乗り切っていってください。
【牡羊座】
2011年の注意点:「落とし物」に注意
2011年のあなたが気をつけるべきことは「落とし物」です。
何を落とすのか、いつごろ落とすのか、そんなことはわたしに聞かないでください。牡羊座の人がいったい何人いると思っているか知っていますか? そんな大勢の人が、いちどきに同じ物を落とすはずがないのです。
ともかく、あなたは何かを落とす可能性があります。きっとそれはあなたにとって重要な物。落としたら困る物にちがいありません。物ではなくて、もしかしたら自転車の子載せに乗せた子供かもしれませんが。
ともかく落とし物に気をつけてください。
2011年の年末を振り返って、何も落とさなかったとしたら、わたしのアドバイスが役に立ったということです。感謝してください。
【牡牛座】
2011年の注意点:「拾い物」に注意
世の中にはうっかりした人間が多く、彼らは財布だの携帯電話だの自転車の子載せに乗っている子供だの、ありとあらゆる物を落としていきます。ですからあなたがそうした「落とされ物=拾い物予備軍」に出会う確率は、決して少なくありません。ですから今年、あなたは目の前に落ちている「拾い物予備軍」を前に、態度を決めなければならないでしょう。
拾うか、見なかったことにするか。
拾えばそこからさらに、警察に届けるか、こっそり自分のものにするか……と選択肢が広がっていき、取るべき行動を誤ったら、人違いされてマフィアにつけねらわれることになるかもしれず、CIAにマークされることになるかもしれず、あなたの人生が思いもかけない方向に転がっていくかもしれませんが、見なかったことにしても、同様にそのせいでとがめられたり、儲け話を取り逃がしてしまうことになるかもしれません。
態度を決めるのはあなたです。そこから先どうなるかまでは、わたしの関知するところではありません。自分の好きなようにして、わたしに苦情を言わないでください。わたしに言えるのは、「拾い物」に注意、というところまでです。
来年の大晦日、何にも拾わなかった、と思っても、よくよく考えてみてください。隠喩としての「拾い物」はありませんでしたか? つまり一年、命があっただけでも、「こりゃあ拾い物だったよ」ってことです。
【双子座】
2011年の注意点:「遅刻」に注意
春眠暁を覚えず、といいますが、夏は寝苦しくて朝起きられないし、秋は夜長で起きられないし、まして冬の朝、布団から出られるわけがありません。「遅刻」の危険は一年三百六十五日、休みの日以外、あなたについてまわります。
ですから、この星座のあなたはとにかく「遅刻」に注意してください。
いやなこと、面倒なことを前にすると、わたしたちはとかく億劫になりがちですが、ほんとうの計画は仕事の上にしか成長しません。だからともかく定刻に仕事を始める。そのことだけをとりあえず念頭に置いて、辛抱してみてください。
目覚まし時計を増やすもよし、アラームをセットした携帯を耳元に置くもよし、鳴ったら起きる、が基本です。鳴って止めたら地獄が待っています。学生時代、隣の部屋の目覚まし時計で毎朝起きていたわたしは、その実例をよく見ています。
【蟹座】
2011年の注意点:「待ち人」に注意
世の中には何やかやと言い訳しながら遅刻してくる連中にあふれています。「浜の真砂は尽きるとも 世に遅刻した理由は尽きまじ」と言いたくなるほどです。最近では携帯電話が普及した結果、待ち合わせの時間の変更も容易になりましたが、どれだけ相手が来る時間がわかったとしても、あらかじめ予定を組んでいたあなたの方が待たされることには変わりありません。
ですから今年、あなたが「待ち人」にイライラさせられる可能性は、極めて高いでしょう。あなたの注意点は、ズバリ、「待ち人」でしょう(丸尾君ふうに)。
問題は、待たされている時間をどう使うかです。
佐々木小次郎は「待つこと」しかしなかったために疲弊し、モンテ・クリスト伯は獄中で力を蓄えました。つまりは待っている時間の主導権を自分が握るということです。待っている時間を有効に使ってください。たとえばghostbuster's book web.を見るなどはいかがでしょう。
【獅子座】
2011年の注意点:「ほんとうのこと」に注意
世の中に「ほんとうのナントカ」はあふれています。
ウソを言っている人が大勢いるから?
とんでもありません。「ほんとう」と言っている人は、それを「ほんとう」だと信じています。つまり、何を「ほんとう」とするかは、その人次第、ってことです。
だから、2011年のあなたが注意しなければならないのは、注意して「ウソの中にあるほんとう」や「ザ・トゥルーエスト・オブ・ザ・ほんとう」を見つけることではありません。
「ほんとうのナントカ」と言う人が「ほんとう」という言葉でいったい何を言おうとしているのか。
「ほんとうの「スイーツ」を食べたことがありますか」と言う人は、このロールケーキを買え、と言っているのだし、「ほんとうの私を誰も知らない」と言う人は、「アタシはあんた何かが思ってるようなチャチな子じゃないのよ」と言いたい。「ほんとうは何がしたいかわからない」と言っている高校生は、やらなければならない勉強をしたくないだけだし、「ほんとうの問題点はそんなところにはない」と言っている人の「ほんとう」は、「てめーら、バカなことばっか言ってんじゃねえよ、オレ様の言うことを聞け」という点にある。
注意して、「ほんとうのナントカ」という言葉にこめられた「ほんとう」を見つけてみてください。それを暴いたって良いことはないでしょうが、とりあえず対策を立てることはできるでしょう。
【乙女座】
2011年の注意点:「正しいこと」に注意
「ナントカが正しい」と言い切るのは、気持ちの良いものです。「あいつが悪い」「あの人さえいなかったら」……と悪い人を断罪するだけで、あなたはちょっとした水戸黄門もしくは遠山の金さんになったような気分になれます。
ただ問題は、そうしたドラマは後日談を描かないというところにあります。黄門様ご一行はどこかへ行ってしまうし、遠山の金さんも遠山景元に戻ってしまい、あとは自分たちで何とかしなければなりません。「誰が悪いか」を明らかにしたところで、実は何の解決にもならないのです。
ところがわたしたちは「誰が悪いか」を見つけただけで、「正しいこと」をしたような気になり、解決することを忘れてしまいます。「正しいこと」は「思考停止」の危険をはらんでいる。だからこそ「正しいこと」には注意が必要。「誰が悪いか」と考え始めたら、「どうやって解決するか」と問題意識をシフトしてください。
【天秤座】
2011年の注意点:「食べ物」に注意
「食べ物に注意」というのは、食材に注意ということなのか、病気になるという意味で注意しろということなのか、太るから注意せよということなのか、ダイエットに注意ということなのか、人によってちがいます。とにかく、「自分の口に入れる物」に注意してください。どう注意したらいいかは、おそらくあなたが一番わかっているはず。
ひとつ言えるのは、食べ物に注意するのをつきつめると、結局、自分で作ってみることに行き着きます。ですから、今年は台所に立ってみてください。ふだんから立っている人はもちろんのこと。
台所はとりもなおさず、火や刃物を使うという場所。つまりは家の中で一番危険な場所ともいえます。たとえ包丁や煮えたぎる鍋が飛び交わなくても、そこにいるだけであなたの危険予知能力はアップするはず。
【蠍座】
2011年の注意点:「飲物」に注意
英語の drink にせよ、日本語の「飲む」にせよ、飲むといったら胃薬……ではなくて、アルコール飲料ということになります。あなたがお酒を飲む習慣がある人なら、「飲む」人はあなたで、某歌舞伎役者のように飲んだあげく「厄介」を背負い込むことになるかもしれませんし、奈良漬けを食べるだけで酔ってしまう人なら、某歌舞伎役者のような「飲む」人に厄介な目に遭わされるのかもしれません。
このように「飲む」という行為は、わたしたちを危険な場所に立たせる可能性をはらんでいるのです。ただ、危険はそれとたわむれると痛い目に遭いますが、避けているだけでは危機回避能力も身に付きません。
「飲物に注意」しつつ、うまくつきあってください。
もしかしたら「注意」の中味は、デート中にコーラを飲んで、恋人の前で派手なゲップをしてしまうということなのかもしれないし、夏の暑い日に水筒を忘れてしまうということなのかもしれませんが。
【射手座】
2011年の注意点:「余計な一言」に注意
「余計な一言」は甘美な誘惑です。マジメな空気が張りつめているとき、上司や先生がつまらない失敗をしたとき、もっともらしいことを声高に主張する人間が現れたとき、あなたはつい、「余計な一言」を言ってしまいたくなります。
ただ、「余計な一言」を言われて喜ぶ人はあまりいません。たいてい言われた方は、気分を害し、あなたをうとましく思うはず。
このことからわかるのは、自分の気持ちを自分でコントロール(「余計な一言を言わないようにしよう」)するより、人の気持ちをコントロール(「その赤いネクタイ、よく似合いますね。もうちょっと幅が広かったら還暦のよだれかけかと思いますよ」「……(その口をホッチキスで留めてやろうか)」)する方が、よほど簡単だということです。
人を不愉快にして、良いことはひとつもない。となると、「余計な一言」に注意する、ということは、「余計な一言」を口にしたくなったら口を閉ざす、ということにほかなりません。
【山羊座】
2011年の注意点:「忘れ物」に注意
このところ記憶力の減退を感じているあなたの注意点は、ズバリ、「忘れ物」。持っていく物を忘れたり、宿題を忘れたり、電話することを忘れたり、約束を忘れたり、アポイントメントを忘れたり、忘れたことさえ忘れてしまうかもしれません。
「忘れ物」の問題点は、相手がいる、という点にあります。宿題を忘れたら、先生からお目玉をくらうことになるし、報告書を忘れたら、会議の席で、並みいる出席者の非難の視線を浴びながらプレゼンしなければなりません。
運が良ければ、相手も忘れてくれて「なかったこと」になるかもしれませんが、多くの場合、忘れられた方は、あいつ、忘れたな、といつまでも執念深く覚えているもの。
忘れることがないように、メモを取る、冷蔵庫の前に貼る、手の甲に書いておく、など、さまざまな予防手段を編み出してください。出がけに「帰りに練り辛子買ってきて」と頼まれて、手の甲に「練り辛子」と書き、つぎに手の甲を見るのは、帰宅して手を洗うときかもしれませんが。
ただ、忘れてしまった失敗だけは、くよくよしても始まらない、これだけは忘れたもん勝ちです。
【水瓶座】
2011年の注意点:
「過去のまぼろし」に注意
仕事の期限や試験の期日が間近にせまってくると、誰でも焦りを感じ、疲れてくるものですが、こんなとき、自分は何と頭が悪いのだろう、という考えも起こりがち。ついでに過去の出来事を振り返って、自分が失敗したり、批判されたりした記憶を呼び出して、自分の頭が悪い証明までしてしまうものです。こんなことをしてしまうと、これから良い仕事ができるはずがないし、受かる試験まで失敗してしまいます。
同じように、気分の晴れないとき、大昔に言われた悪口や、意地の悪い批判を思い返して腹を立てたり、恋人に振られて悲しかったことを思い出し、ふたたび涙を流してしまうかもしれません。
でも、終わったことは終わったこと。いまのあなたの仕事を妨げているのは、過去のまぼろしにとらわれてくよくよしている「いまの自分」だし、「悪口」をもう一度、いまの自分に聞かせているのも、ほかならぬ「いまの自分」です。
いまのあなたに必要なのは、自分のしでかした失敗や、受けた侮辱を検討することではなく、そんなことをくよくよ思い返している自分を笑い飛ばすこと。「悲劇の主人公」ぶっている自分なんて、冷静に眺めればきっと笑えるはずです。
【魚座】
2011年の注意点:「占い師」に注意
占い師はあちこちにあふれています。テレビをつければ太ったおじさんが偉そうに能書きを垂れているし、ネットには有料無料の占いサイトが花盛り。315円という価格がどこからきたものか、2000円のところにくらべてどれほど当たらないものなのか、いったい誰に説明できるのでしょうか。それでも、2000円の方が、無料のサイト(たとえばこんなページ)より「当たる」ような気がするのは、あなたが言われるとおり、自分に言いきかせているからです。
つまり占い師はばくち打ちに向かって「あなたはばくちを打つでしょう」、守銭奴に向かって「あなたはお金を貯めこむでしょう」と言っているようなもの。占い師のひとことで、あなたは「ばくち打ち」になったり「守銭奴」になったりするのです。
占い師の言葉によって、あなたは自分に一種の呪いをかけています。そうしてそれが予言を成就させていることを忘れてはいけません。
誰の身の上に起こることでも、すべて思いがけないもの。
自分だけ、それを先に知っておこうとすると、結局自分に呪いをかけてしまうことになります。
思いがけない一年を、どうか楽しんでください。
2010年もブログ「陰陽師的日常」とghostbuster's book web.をご愛顧くださってどうもありがとうございました。
ちょっと「リアル」の方がいろいろ忙しくなってしまって、更新が滞っていたのですが、まあぼちぼちとやっていきたいと思っています。
2011年も世間は忙しそうですが、世間のあわただしい動きと一歩離れて、あれやこれやの話と英米短編の翻訳を、歩く速さでやっていきたいと思います。
気が向いたときで結構です。息長くおつきあいくだされば幸いです。
新年は一月二日までおやすみして、三日から始めます。どうかみなさま、良いお年を。
2011年もどうぞよろしく。
恒例の「陰陽道的に意味のない“陰陽師的占い”」でございます。
今年のテーマはあなたが来る2011年、「何に気をつけたら良いか」ということです。
どうか星座ごとにあげる「注意点」に留意して、波瀾万丈、何が起こるかわからない新しい一年を、パワフルに、きめ細やかに乗り切っていってください。
陰陽師的2011年占い
【牡羊座】
2011年の注意点:「落とし物」に注意
2011年のあなたが気をつけるべきことは「落とし物」です。
何を落とすのか、いつごろ落とすのか、そんなことはわたしに聞かないでください。牡羊座の人がいったい何人いると思っているか知っていますか? そんな大勢の人が、いちどきに同じ物を落とすはずがないのです。
ともかく、あなたは何かを落とす可能性があります。きっとそれはあなたにとって重要な物。落としたら困る物にちがいありません。物ではなくて、もしかしたら自転車の子載せに乗せた子供かもしれませんが。
ともかく落とし物に気をつけてください。
2011年の年末を振り返って、何も落とさなかったとしたら、わたしのアドバイスが役に立ったということです。感謝してください。
【牡牛座】
2011年の注意点:「拾い物」に注意
世の中にはうっかりした人間が多く、彼らは財布だの携帯電話だの自転車の子載せに乗っている子供だの、ありとあらゆる物を落としていきます。ですからあなたがそうした「落とされ物=拾い物予備軍」に出会う確率は、決して少なくありません。ですから今年、あなたは目の前に落ちている「拾い物予備軍」を前に、態度を決めなければならないでしょう。
拾うか、見なかったことにするか。
拾えばそこからさらに、警察に届けるか、こっそり自分のものにするか……と選択肢が広がっていき、取るべき行動を誤ったら、人違いされてマフィアにつけねらわれることになるかもしれず、CIAにマークされることになるかもしれず、あなたの人生が思いもかけない方向に転がっていくかもしれませんが、見なかったことにしても、同様にそのせいでとがめられたり、儲け話を取り逃がしてしまうことになるかもしれません。
態度を決めるのはあなたです。そこから先どうなるかまでは、わたしの関知するところではありません。自分の好きなようにして、わたしに苦情を言わないでください。わたしに言えるのは、「拾い物」に注意、というところまでです。
来年の大晦日、何にも拾わなかった、と思っても、よくよく考えてみてください。隠喩としての「拾い物」はありませんでしたか? つまり一年、命があっただけでも、「こりゃあ拾い物だったよ」ってことです。
【双子座】
2011年の注意点:「遅刻」に注意
春眠暁を覚えず、といいますが、夏は寝苦しくて朝起きられないし、秋は夜長で起きられないし、まして冬の朝、布団から出られるわけがありません。「遅刻」の危険は一年三百六十五日、休みの日以外、あなたについてまわります。
ですから、この星座のあなたはとにかく「遅刻」に注意してください。
いやなこと、面倒なことを前にすると、わたしたちはとかく億劫になりがちですが、ほんとうの計画は仕事の上にしか成長しません。だからともかく定刻に仕事を始める。そのことだけをとりあえず念頭に置いて、辛抱してみてください。
目覚まし時計を増やすもよし、アラームをセットした携帯を耳元に置くもよし、鳴ったら起きる、が基本です。鳴って止めたら地獄が待っています。学生時代、隣の部屋の目覚まし時計で毎朝起きていたわたしは、その実例をよく見ています。
【蟹座】
2011年の注意点:「待ち人」に注意
世の中には何やかやと言い訳しながら遅刻してくる連中にあふれています。「浜の真砂は尽きるとも 世に遅刻した理由は尽きまじ」と言いたくなるほどです。最近では携帯電話が普及した結果、待ち合わせの時間の変更も容易になりましたが、どれだけ相手が来る時間がわかったとしても、あらかじめ予定を組んでいたあなたの方が待たされることには変わりありません。
ですから今年、あなたが「待ち人」にイライラさせられる可能性は、極めて高いでしょう。あなたの注意点は、ズバリ、「待ち人」でしょう(丸尾君ふうに)。
問題は、待たされている時間をどう使うかです。
佐々木小次郎は「待つこと」しかしなかったために疲弊し、モンテ・クリスト伯は獄中で力を蓄えました。つまりは待っている時間の主導権を自分が握るということです。待っている時間を有効に使ってください。たとえばghostbuster's book web.を見るなどはいかがでしょう。
【獅子座】
2011年の注意点:「ほんとうのこと」に注意
世の中に「ほんとうのナントカ」はあふれています。
ウソを言っている人が大勢いるから?
とんでもありません。「ほんとう」と言っている人は、それを「ほんとう」だと信じています。つまり、何を「ほんとう」とするかは、その人次第、ってことです。
だから、2011年のあなたが注意しなければならないのは、注意して「ウソの中にあるほんとう」や「ザ・トゥルーエスト・オブ・ザ・ほんとう」を見つけることではありません。
「ほんとうのナントカ」と言う人が「ほんとう」という言葉でいったい何を言おうとしているのか。
「ほんとうの「スイーツ」を食べたことがありますか」と言う人は、このロールケーキを買え、と言っているのだし、「ほんとうの私を誰も知らない」と言う人は、「アタシはあんた何かが思ってるようなチャチな子じゃないのよ」と言いたい。「ほんとうは何がしたいかわからない」と言っている高校生は、やらなければならない勉強をしたくないだけだし、「ほんとうの問題点はそんなところにはない」と言っている人の「ほんとう」は、「てめーら、バカなことばっか言ってんじゃねえよ、オレ様の言うことを聞け」という点にある。
注意して、「ほんとうのナントカ」という言葉にこめられた「ほんとう」を見つけてみてください。それを暴いたって良いことはないでしょうが、とりあえず対策を立てることはできるでしょう。
【乙女座】
2011年の注意点:「正しいこと」に注意
「ナントカが正しい」と言い切るのは、気持ちの良いものです。「あいつが悪い」「あの人さえいなかったら」……と悪い人を断罪するだけで、あなたはちょっとした水戸黄門もしくは遠山の金さんになったような気分になれます。
ただ問題は、そうしたドラマは後日談を描かないというところにあります。黄門様ご一行はどこかへ行ってしまうし、遠山の金さんも遠山景元に戻ってしまい、あとは自分たちで何とかしなければなりません。「誰が悪いか」を明らかにしたところで、実は何の解決にもならないのです。
ところがわたしたちは「誰が悪いか」を見つけただけで、「正しいこと」をしたような気になり、解決することを忘れてしまいます。「正しいこと」は「思考停止」の危険をはらんでいる。だからこそ「正しいこと」には注意が必要。「誰が悪いか」と考え始めたら、「どうやって解決するか」と問題意識をシフトしてください。
【天秤座】
2011年の注意点:「食べ物」に注意
「食べ物に注意」というのは、食材に注意ということなのか、病気になるという意味で注意しろということなのか、太るから注意せよということなのか、ダイエットに注意ということなのか、人によってちがいます。とにかく、「自分の口に入れる物」に注意してください。どう注意したらいいかは、おそらくあなたが一番わかっているはず。
ひとつ言えるのは、食べ物に注意するのをつきつめると、結局、自分で作ってみることに行き着きます。ですから、今年は台所に立ってみてください。ふだんから立っている人はもちろんのこと。
台所はとりもなおさず、火や刃物を使うという場所。つまりは家の中で一番危険な場所ともいえます。たとえ包丁や煮えたぎる鍋が飛び交わなくても、そこにいるだけであなたの危険予知能力はアップするはず。
【蠍座】
2011年の注意点:「飲物」に注意
英語の drink にせよ、日本語の「飲む」にせよ、飲むといったら胃薬……ではなくて、アルコール飲料ということになります。あなたがお酒を飲む習慣がある人なら、「飲む」人はあなたで、某歌舞伎役者のように飲んだあげく「厄介」を背負い込むことになるかもしれませんし、奈良漬けを食べるだけで酔ってしまう人なら、某歌舞伎役者のような「飲む」人に厄介な目に遭わされるのかもしれません。
このように「飲む」という行為は、わたしたちを危険な場所に立たせる可能性をはらんでいるのです。ただ、危険はそれとたわむれると痛い目に遭いますが、避けているだけでは危機回避能力も身に付きません。
「飲物に注意」しつつ、うまくつきあってください。
もしかしたら「注意」の中味は、デート中にコーラを飲んで、恋人の前で派手なゲップをしてしまうということなのかもしれないし、夏の暑い日に水筒を忘れてしまうということなのかもしれませんが。
【射手座】
2011年の注意点:「余計な一言」に注意
「余計な一言」は甘美な誘惑です。マジメな空気が張りつめているとき、上司や先生がつまらない失敗をしたとき、もっともらしいことを声高に主張する人間が現れたとき、あなたはつい、「余計な一言」を言ってしまいたくなります。
ただ、「余計な一言」を言われて喜ぶ人はあまりいません。たいてい言われた方は、気分を害し、あなたをうとましく思うはず。
このことからわかるのは、自分の気持ちを自分でコントロール(「余計な一言を言わないようにしよう」)するより、人の気持ちをコントロール(「その赤いネクタイ、よく似合いますね。もうちょっと幅が広かったら還暦のよだれかけかと思いますよ」「……(その口をホッチキスで留めてやろうか)」)する方が、よほど簡単だということです。
人を不愉快にして、良いことはひとつもない。となると、「余計な一言」に注意する、ということは、「余計な一言」を口にしたくなったら口を閉ざす、ということにほかなりません。
【山羊座】
2011年の注意点:「忘れ物」に注意
このところ記憶力の減退を感じているあなたの注意点は、ズバリ、「忘れ物」。持っていく物を忘れたり、宿題を忘れたり、電話することを忘れたり、約束を忘れたり、アポイントメントを忘れたり、忘れたことさえ忘れてしまうかもしれません。
「忘れ物」の問題点は、相手がいる、という点にあります。宿題を忘れたら、先生からお目玉をくらうことになるし、報告書を忘れたら、会議の席で、並みいる出席者の非難の視線を浴びながらプレゼンしなければなりません。
運が良ければ、相手も忘れてくれて「なかったこと」になるかもしれませんが、多くの場合、忘れられた方は、あいつ、忘れたな、といつまでも執念深く覚えているもの。
忘れることがないように、メモを取る、冷蔵庫の前に貼る、手の甲に書いておく、など、さまざまな予防手段を編み出してください。出がけに「帰りに練り辛子買ってきて」と頼まれて、手の甲に「練り辛子」と書き、つぎに手の甲を見るのは、帰宅して手を洗うときかもしれませんが。
ただ、忘れてしまった失敗だけは、くよくよしても始まらない、これだけは忘れたもん勝ちです。
【水瓶座】
2011年の注意点:
「過去のまぼろし」に注意
仕事の期限や試験の期日が間近にせまってくると、誰でも焦りを感じ、疲れてくるものですが、こんなとき、自分は何と頭が悪いのだろう、という考えも起こりがち。ついでに過去の出来事を振り返って、自分が失敗したり、批判されたりした記憶を呼び出して、自分の頭が悪い証明までしてしまうものです。こんなことをしてしまうと、これから良い仕事ができるはずがないし、受かる試験まで失敗してしまいます。
同じように、気分の晴れないとき、大昔に言われた悪口や、意地の悪い批判を思い返して腹を立てたり、恋人に振られて悲しかったことを思い出し、ふたたび涙を流してしまうかもしれません。
でも、終わったことは終わったこと。いまのあなたの仕事を妨げているのは、過去のまぼろしにとらわれてくよくよしている「いまの自分」だし、「悪口」をもう一度、いまの自分に聞かせているのも、ほかならぬ「いまの自分」です。
いまのあなたに必要なのは、自分のしでかした失敗や、受けた侮辱を検討することではなく、そんなことをくよくよ思い返している自分を笑い飛ばすこと。「悲劇の主人公」ぶっている自分なんて、冷静に眺めればきっと笑えるはずです。
【魚座】
2011年の注意点:「占い師」に注意
占い師はあちこちにあふれています。テレビをつければ太ったおじさんが偉そうに能書きを垂れているし、ネットには有料無料の占いサイトが花盛り。315円という価格がどこからきたものか、2000円のところにくらべてどれほど当たらないものなのか、いったい誰に説明できるのでしょうか。それでも、2000円の方が、無料のサイト(たとえばこんなページ)より「当たる」ような気がするのは、あなたが言われるとおり、自分に言いきかせているからです。
つまり占い師はばくち打ちに向かって「あなたはばくちを打つでしょう」、守銭奴に向かって「あなたはお金を貯めこむでしょう」と言っているようなもの。占い師のひとことで、あなたは「ばくち打ち」になったり「守銭奴」になったりするのです。
占い師の言葉によって、あなたは自分に一種の呪いをかけています。そうしてそれが予言を成就させていることを忘れてはいけません。
誰の身の上に起こることでも、すべて思いがけないもの。
自分だけ、それを先に知っておこうとすると、結局自分に呪いをかけてしまうことになります。
思いがけない一年を、どうか楽しんでください。
* * *
2010年もブログ「陰陽師的日常」とghostbuster's book web.をご愛顧くださってどうもありがとうございました。
ちょっと「リアル」の方がいろいろ忙しくなってしまって、更新が滞っていたのですが、まあぼちぼちとやっていきたいと思っています。
2011年も世間は忙しそうですが、世間のあわただしい動きと一歩離れて、あれやこれやの話と英米短編の翻訳を、歩く速さでやっていきたいと思います。
気が向いたときで結構です。息長くおつきあいくだされば幸いです。
新年は一月二日までおやすみして、三日から始めます。どうかみなさま、良いお年を。
2011年もどうぞよろしく。