2010年陰陽師的開運本~これであなたも絶好調!
「陰陽師的日常」では、当ブログに足を運んでくださったみなさまに「開運本」をお届けします。これを読めば開運まちがいなし!
まず、あなたの基本的な傾向を知らなければなりません。
ふたつの質問から、あなたにピッタリのおすすめ本を見つけてください。
深く考えず、パッと思いついた答えを選んでください。
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Q1. 巧己のお父さんの茂雄には三人の子供がいます。長男が一茂、長女が三奈、では三番目の子供の名前は何でしょう。
1.正興 …と答えた人はQ2.へ
2.二郎 …と答えた人はQ3.へ
3.巧己 …と答えた人はQ4.へ
Q2. 映画を見に行くとします。あなたがもっとも当てにならないと思うのはどれですか。
1.全米が泣いた、というキャッチフレーズ …おすすめ本1へ
2.わたし、怖いのがダメなの、というガールフレンド …おすすめ本2へ
3.「いまなら良い席が取れます」という表示 …おすすめ本3へ
Q3. あなたが一番そのとおりだと思うのは以下のどれですか。
1.「忙しい」という人は、実は時間の管理がヘタ …おすすめ本4へ
2.「友だちが多い」という人は、携帯をやたらのぞく …おすすめ本5へ
3.「統率力がある」という人は、単に声デカいだけ …おすすめ本6へ
Q4.あなたにもっとも当てはまるのはつぎのどれですか。
1.異性のストライクゾーンは広いのだが球が来ない …おすすめ本7へ
2.前から来る人に声をかけられたので「どうかしましたか」と返事をしたら、話しかけていたのは後ろの人だった …おすすめ本8へ
3.トランプ占いで結果が気にいらないと、「今のは練習」と声に出してやり直す …おすすめ本9へ
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◆ Q1. で1.を選んだ人は、茂雄+一茂+三奈で思いついた名字をググりましたね?
思いついたらぱっと検索するあなたは、調べ物が苦にならない人。そんなあなたには、あなたの世界を広げる本をおすすめします。
おすすめ本 その1.
アメリア・アレナス『なぜ、これがアートなの? 』(福のり子訳 淡交社)
1を選んだあなたは調べることが苦にならず、かといって評判にも惑わされない、独自のセンスを大切にする人。そんなあなたにおすすめなのがこの本です。
なぜセザンヌの描いたリンゴの絵は「すばらし」くて、ジャクスン・ポロックを前にすると「わからない」と思ってしまうのか。印象派が画期的だったのは、ほんとうはどういう点で、なぜ現代絵画は「わけがわからない」のか、目からウロコが落ちること請け合い。
おすすめ本 その2.
柳田国男『妖怪談義』(講談社学術文庫)
デートでもホラーを選んでしまうあなたにはこの本を。
オバケは何と鳴くでしょう。実はモーと鳴くらしいのです。「モー」なんて牛でもあるまいし、と思った人は、ぜひこの本を読んでみてください。
おすすめ本 その3.
ピエール・ブルデュー『メディア批判』(桜本陽一訳 藤原書店)
映画会社のキャッチフレーズを鵜呑みにしないあなたにはこの本を。
新聞、テレビなどのマスコミを批判する本は数あれど、なぜわたしたちはテレビでの発言に「権威」を感じるのか、視聴率競争がなぜ番組の質を低下させるか、いろんなことがわかってくる本です。
◆ Q1. で2.を選んだ人は、一茂、三奈という名前の関連から、「二」のつく名前が出てくるにちがいないと論理的に推理した人。そんな人には論理的思考をさらに鍛えるための本をおすすめします。
おすすめ本 その4.
渡辺慧『認識とパタン』(岩波新書)
論理的思考を優先し、しかも時間の使い方に長けたあなたには、新書がおすすめ。この本には「醜いアヒルの子と白鳥」のちがいと「白鳥のペア」のちがいには論理的に見て差がないことが書いてあります。amazonのレビューにはおっかないことが書いてありますが、そんなに怖い本ではありません。
おすすめ本 その5.
町田健『コトバの謎解き ソシュール入門』(光文社新書)
コミュニケーションに関心のあるあなたには、この本を。わたしたちは言葉を使って意思疎通を図っていますが、よく考えるとこれは不思議なことです。ものを直接見せ合っているわけでもないのに、どうしてわたしたちは分かり合えるのか。言葉の不思議について書かれたなかでは、とってもわかりやすい本だと思います。
おすすめ本 その6.
白川静『孔子伝』(中公文庫BIBLIO)
あるべき指導者についてはっきりしたイメージを抱いている人にはこの本を。ちょっと有名すぎて、いまさら、という感じはするのですが。これとはずいぶんちがいますが、谷崎潤一郎が書いた孔子像『麒麟』もおもしろい。これは全集以外では、『明治の文学』シリーズの『永井荷風・谷崎潤一郎』の巻に所収されています。
◆ Q1. で3.を選んだ人は、文章を読み慣れた人。さっと読んでもポイントを逃しません。そんな人には読む楽しさをとことん味わえるものを。
おすすめ本 その7.
野上弥生子『迷路』(岩波文庫)
球が来るまでこの本を読んで待ってください。大丈夫、十分長さがあります。
おすすめ本 その8.
イザベラ・バード『日本奥地紀行』(高梨健吉訳 平凡社ライブラリー)
異文化コミュニケーションというのは勇気だということがよくわかります。知らない人と会話するのも小さな異文化コミュニケーション。とまどうことも楽しんじゃってください。
おすすめ本 その9.
ハインリヒ・マン『アンリ四世の青春』(小栗浩訳 晶文社)
読解力に優れ、やり直しをいとわないあなたには、重厚長大な本がおすすめ。時空を超える歴史文学の楽しさを堪能できます。つづきがまだ読みたかったら『アンリ四世の完成』もあります。
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本年もブログ「陰陽師的日常」ならびに「ghostbuster's book web」を読んでくださってありがとうございました。
ときどき何を読んだらいいか、聞かれます。
自分の読みたいものを読めばいい。それ以上の答えはありません。
けれども「自分の読みたいもの」がわからない。
ガイドというのは、それを知る助けになるものではないでしょうか。
これまでの自分の視界には入ってこなかった本を読む。自分の世界が広がると同時に、それを楽しみ、感動している自分を知る。自分をのぞきこんでいるだけでは決して知ることのできない、自分との出会いでもあります。
本なんて非現実的なことをやっていず、現実を見ろ、という言い方があります。このあいだ「感情的」という言葉に批判的なニュアンスがこめられていることを書いた(「感情的?or 理性的?? ――女はほんとうに感情的か」)のですが、「非現実的」というのも、非難の調子がこもっています。
けれど、現実というとらえどころのないものを、どうやってとらえればいいのでしょう。
現実を理解し、尊重するためには、言葉であるとか人間であるとか社会であるとかを、決まり決まった見方ではなく、見ることが必要なんじゃないか。そのための方法が、他の人の考え方を知る、つまりは本を読むことではないのかと思います。
それまでの自分にはなかった考え方を知り、自分のものにしたとき、人は自分の小さな枠を超えることができます。
行ったことのないところへ。
見たことのないところへ。
――歩きたいから歩く。すると歩くのが目的になる。考えたいから考える。すると考えるのが目的になる。(夏目漱石『それから』)
本と一緒に歩いていきましょう。
2010年もよろしくお願いします。
(※新年一日は残りのオーウェルを訳して、二日、三日とお休みします。余力があれば(笑)更新情報も書きます。)