hiyamizu's blog

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香山リカ「おとなの男の心理学」を読む

2010年01月24日 | 読書2
香山リカ著「おとなの男の心理学」ベスト新書、2007年12月、KKベストセラーズ発行を読んだ。

表紙裏にはこうある。
「おとなの男」が精神医学の対象として浮上したのは、ごく最近のことである。平均寿命が伸び、定年後の人生が長くなるにつれて、これまで成熟や達観の年代とされていた「老年期」に、中年期の危機(ミッドライフ・クライシス)がずれ込んできた。目まぐるしい社会の変化と、日進月歩のテクノロジーがそれに拍車をかけ、かつてなら人生の完成期に権威顔をしていた男たちが、実は、いちばん変化に弱い心性の持ち主であることがわかってきたのだ。老いを愉しむ男(フィロバット)になれるか、反対に、恐れる男(オクノフィル)にしかなれないか、それは日々の暮らしの中の、ちょっとした気のもち方にかかっている。


定年後自室にこもり、いつまでも会社時代の書類などを整理していて、一向に気持ちの切り替えが出来ぬ夫。「同じ部屋にいたら寒気がする」、「夜、寝たらそのまま起きて来なきゃいいのに、と毎晩、思う」。
熟年妻の訴えは強烈だ。暴力や不貞といった明確な理由というより、ひたすら夫が「生理的にイヤでたまらない」ために、こころに変調を来す例が多い。

男と女の違いはどこにあるのか。
自分で自分を評価し、その価値を認めること、これを心理学では「自尊感情」と呼ぶ。男性の場合は、肩書きや収入がそのまま自尊感情につながるが、女性の場合は、逆に肩書きや収入が高ければ高いほど、この自尊感情が目減りする、というおかしな現象が起こることがある。


キャリアのシングル女性は、自分の肩書きや仕事での成果ではなくて、「存在そのもの」が必要とされていないと嘆く事が多い。
妻は、これまでの、そしてこれからの人生を真剣に見つめ、自分らしい人生をまっとうしたいと考える。対して夫は、仕事し家族を養ったという自負から人生の達成感に浸りがちだ。夫のリタイア後、「完成途上の人生」と.「完成済みの人生」が衝突する。

専業主婦は、夫からのサポートがほとんど唯一の情緒的ケアとなる。・・・それにもかかわらず、夫たちは自分の妻が専業主婦だからとくに気づかい、繊細にケアする、ということはないだろう。・・・「妻の話なんか聞けるか」と言っている夫たちも、実は自分の仕事の話はけっこう妻に聞いてもらったり、落ち込んでいるときは妻に慰めてもらったりしているのだ。・・・夫が「おい、あれ」と言ったときにそれが何を指しているか妻がわかるのは、・・・以心伝心というより、妻の努力です。


年間3万人もが自ら命を絶つ日本人のうち、50代以上の男性は約半数強を占める。老年期が「長老」だった時代から、どこにでもいる単なる年配者になって、熟年男とは、じつは人生の危うい時間を生きているのだ。

第1章 おとなの男の心理学
第2章 壊れる自尊心
第3章 ちょいモテオヤジか更年期男性か
第4章 なぜ妻に逃げられるのか
第5章 親を"卒業"できない
第6章 老い方を知らない男たち
第7章 健康との上手なつきあい方



香山リカは、1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。精神科医。立教大学現代心理学部映像身体学科教授。学生時代から雑誌などに寄稿。その後も、臨床経験を生かして、新聞、雑誌などの各メディアで、社会批評、文化批評、書評など幅広く活躍。
私が読んで、感想を書いた著書は、「女はみんな『うつ』になる」、「精神科医ですがわりと人間が苦手です」「親子という病」、「弱い自分を好きになる本」「いまどきの常識」だ。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

男性は仕事や生活の面では「変わりたくない。変わったらおしまい」とこだわっているのに、外見的な若さや美しさにはあまりこだわろうとしない。男性の美容整形もそれほど普及していないし、年をとってから服装や小物に気をつけるようになった男性の話もまずきかない。体重のコントロールについても無頓着な人が多い。
ただ、ひとつだけ例外がある。それは、「毛髪が薄くなること」、つまりハゲを防ぐことに対する異常なまでのこだわりだ。


毛髪が不自由な人」に書いたように、この話は禁句だ。

「会話が少ないから夫が嫌い」なのではない。「中身がないから嫌い」なのだ。
話せばかえってボロが出る場合もある。
もうだいぶ前の私事だが、会社で「日本人ももう少し奥さんを褒めたりした方がよい」という話で盛り上がった。車で5分位の距離の自宅について、玄関に出てきた奥さんを見て、何か違うと気づいた。ここだ!と思い言った。
「美容院行ったね」
プイと横向いて奥さんが言った。
「もう、一週間も前です!」



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