hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

杉田望「不正会計」を読む

2010年01月07日 | 読書2

杉田望著「不正会計」講談社文庫、2009年11月、講談社発行を読んだ。本書は講談社文庫書下ろし作品。

宣伝文句は以下。
巨大粉飾決算発覚!“無限責任”の嵐が会社を襲う
組織人の心にくい込む迫真の経済小説
分不相応な拡大路線、放漫経営・・・大手監査法人が健全だと判断を下した老舗メーカーに粉飾決算疑惑が浮上した。内部告発が業界を駆け巡り、金融庁も動き始める。監査法人の会計士・青柳は粉飾幇助の疑いから組織を、己の正義を、守ることができるのか?未曾有の企業不正を描く経済小説。<文庫書下ろし>


大手監査法人が、粉飾決算関与、内部抗争を起こした。多数の大手企業の監査を行っていて、その影響が巨大だからこそ解散はないと信じられていたが、金融庁、あるいは謎の権力により崩壊させられる。モデルはカネボウやライブドアマーケティングの粉飾決算にかかわったとされ、結局解散した中央青山監査法人。

物語は老舗メーカー兼高の粉飾決算疑惑に東京地検特捜部が動き出すところから始まる。兼高担当の会計士はベテランで粉飾関与はないと断言する。しかし、この監査法人では、担当会社からの接待など癒着は蔓延し、合併後の派閥抗争も激しかった。あっさり引退した理事長に代わった野心家磐田の奮闘むなしく、徐々に崩壊へと追いつめられていく。
主人公は、この監査法人に務める改革チームの若き公認会計士で、事件を取材することになる新聞記者の恋人がいる。



私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)

テンポよく話が進み、会計処理に関する専門的話もほとんどないので、すらすら読める。
提携する米国監査法人の抜け目ない陰謀、金融庁の責任逃れのための強引な施策、抜きつ抜かれつの取材合戦などを巧みにからませるが、太い流れ、深い洞察は見えてこない。良くある話を丹念に集めてあるといった印象だ。逆に、この種の経済小説にありがちな、巨悪の弾劾といった取って付けたような安直な正義感も見えないので、気楽に読めるのだが。



杉田望は、1943年山形県生まれ、早稲田大学文学部中退、業界紙編集長、社長を務めたあと、1988年に作家として独立。経済小説分野で旺盛な執筆活動を続ける。近著に、「特別検査 金融アドベンジャー」「破産執行人」「総理殉職 四十日抗争で急逝した大平正芳」などがある。




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