真保祐一著「最愛」2007年1月、新潮社発行を読んだ。
小児科医の押村悟郎の携帯電話が鳴った。18年間音信不通だった姉が、意識不明で救急病院に搬送された。重傷の火傷、頭部の銃創。それは婚姻届を出した翌日の出来事だった。しかも、姉が選んだ最愛の夫は、かつて人を殺めた男だという。姉のアパートで見つけた不審な預金通帳、姿を現さない新婚の夫。噛み合わない事実。逃げる男と追う男。「姉さん、あなたはいったい何をしていたんだ……」感動恋愛長編。
うたい文句は以上。なぜなのか、と一気に読んでしまったが、それだけ軽く、細かいところの破綻も目立つ。なにより、「いまどき、またこれかよ!」という最後にがっかり。派手な場面もあり映像化しやすそうなので、TVや映画の脚本には良いかも。と思って、作者について調べたら、脚本でも活躍している人だった。
初出は「小説新潮」2006年4月号-8月号。
真保祐一(しんぽ・ゆういち)は、東京生まれ。千葉県立国府台高等学校を卒業後、シンエイ動画入社し、1991年「連鎖」で江戸川乱歩賞受賞。その後もアニメや映画の脚本などを書きながら小説を書く。1995年「ホワイトアウト」で吉川英治文学新人賞、
1996年「奪取」で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞長篇、2006年「灰色の北壁」で新田次郎文学賞短編集受賞。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)
いじめられている人を見ると、どんな乱暴者にも果敢に挑みかかっていく姉。不幸な子供時代のためとはいえ、大人になってもそのままとは、少し極端な性格設定だ。謎めいた刑事なども乱暴な作りだ。携帯小説を作り込んでいったような小説だ。
作者のあざとさに快く乗ることができないミステリーを私は好きでない。真保祐一もミステリー作家と決め付け、今まで読んだことがなかった。謎で引っ張っていく力は十分なので、極端さを押さえ、細かいところを修正すれば、良い作品になると思う。ど素人に言われたくないだろうが。