hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

川上未映子「乳と卵」を読む

2010年01月09日 | 読書2

川上未映子著「乳と卵」2008年2月、文藝春秋発行を読んだ。

芥川賞受賞作の「乳と卵」と「あなたたちの恋愛は瀕死」の2作。初出は、前者が「文学界」2007年12月号、後者が「文学界」2008年3月号。

「乳と卵」
姉の巻子が娘の緑子を連れて東京の私のところにやってくる。二人は女性としての体に悩みを持ち、39歳の巻子は豊胸手術にこだわりつづけ、思春期の緑子は言葉を話さない。二人は3日間私の家で過ごし、母娘の絆をつなぎとめて、大阪に帰っていく。

「あなたたちの恋愛は瀕死」
女が、新宿の百貨店の化粧品売場、靴屋などをぶらつき、いろいろなことを想像し、待ち合わせまでの4時間をつぶす。
筋もないし、話はどんどん流れていき、まともな面白さはない。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

川上未映子独特の文章は、大阪弁の話し言葉を、頭にうかんだまま切らずにそのままつないでいくという長文で、慣れてくれば特に読みにくいわけではなく、読んでいくうちにテーマ、キャラクターの雰囲気を醸し出すのには効果的なような気がしてくるから不思議で、野坂昭如の「エロ事師たち」も独特のしゃべりがエゲツない主人公を浮かび上がらせていたと思い出しつつ、日本語ってすぐれた言語だとあらためて思い、しかしまてよ、独特の文化を濃密に共有する日本人同士だから通用する言語なんだと気づき、もはやそんな過去の日本社会は崩れだしているから、一部の人々が日本語の危機を叫んでいるのだろうが、土台の社会が変ってしまっている以上、しょせんせんないことで、それどころか、信じられないことに本なんて読まない人が増えているらしく、本は読まない、人の話は聞かない、でも本は書きたい、人にはしゃべりまくりたいという米国発の病が日本を犯していると、巨人好きからアンチ巨人になるような、いつもの米国嫌いで結局話が終わる。



川上未映子は、1976年大阪府生まれ。小説家、歌手。「夢見る機械」「頭の中と世界の結婚」などのアルバムを発表。2007年「わたくし率 イン 歯―、または世界」が芥川賞候補、2007年坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、本書「乳と卵」が芥川賞受賞。



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