hiyamizu's blog

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レベッカ・ブラウン「体の贈り物」を読む

2010年01月02日 | 読書2
レベッカ・ブラウン著「体の贈り物」2001年2月、マガジンハウス発行を読んだ。

原題は、”THE GIFTS OF THE BODY”で、翻訳は、雑誌「オリーブ」、「鳩よ!」に掲載された7編に、初訳3編を加えた11の連作短編集。

歩き、食べ、風呂に入るなどの日常生活が徐々に難しくなっていくエイズに侵された人たち。ホームケア・ワーカーとして、身のまわりを世話する私と彼らの交流。死は逃れようもなく、次々を彼らは旅立ち、切ない思いと、残されたかけがえのないいろいろな形の贈り物。ささやくような静溢で心にしみる短編集。



私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)

訳者あとがきで柴田さんが言っている。
「・・・この本の内容をざっと要約してみると、たとえば「エイズ患者を世話するホームケア・ワーカーを語り手とし、彼女と患者たちとの交流をめぐる、生と死の、喜びと悲しみの、希望と絶望の物語」と言った具合になるだろう。
 むろんそういう要約で、「読んでみようかな」と思ってくださる方もいらっしゃるだろう。でも反面、そう聞いて「あ、俺、そういうのパスね」「私それってちょっと」と思ってしまわれる読者の方も大勢いるのではないかと思う。けれども、まさに「そういうのパス」「それってちょっと」と思われる方々のなかに、実は、この本を読んだら気に入ってくれる方が絶対いるに違いない、とかなり確信をもって思うのである」

そういう人、絶対いる。私がそうだから。押し付けがましく、紋切り型で、作者がすっかり入り込んでしまっている感動もの、しらけものでは、絶対ない。悲しかった、嬉しかったなどの直接的感情表現はほとんどなく、シンプルな言葉で、真正面から事実を淡々と重ねて行く、静かな物語だ。それだけに胸に響く。

この本に出てくるエイズ患者救助組織UCS(都市共同体サービス)のシステムが良く出来ている。支援者は何かを提案できるが、選択は利用者が行うという原則、利用者との対応マニュアル、利用者との間で生じた困難な問題を皆で話しあう月例会合、前回会合の報告・問題解決のヒントなどが載ったニュースレターなどだ。欧米はこのようなシステム作りが上手い。

米国の社会は、競争社会で、弱いもの、弱くなったものが生きていくには厳しい。個人主義で人間関係もベタベタせず、日本より人と人の距離が遠いのではと思う。しかし一方では、慈善、ボランティアが根づいていて、助けを求めたときには、快く、しっかりと、そしてさっぱりと助けてくれる場合があるように感じる。
べたべたしない愛のかたちが私は好きだ。



著者レベッカ・ブラウン、Rebecca Brownは、1956年、アメリカ生れ。シアトル在住。本書「体の贈り物」でラムダ文学賞、ボストン書評家賞、太平洋岸北西地区書店連合賞を受賞。その他、「家庭の医学」「私たちがやったこと」「若かった日々」。著者もエイズ患者を自宅看護する仕事についていたという。

Wikipedia(英語版)で、“Rebecca Brown(author)には、以下のようにレスビアンと書いてある。私に偏見はないつもりだが、それでエイズになった人を献身的にサポートしたのか、などとつい考えてしまう。これでは、興味本位で作者自身を知ることが作品鑑賞にマイナスになる典型だ。
”Rebecca Brown is an American lesbian author whose work has contributed significantly to contemporary gay and lesbian literature.”


柴田元幸(しばた もとゆき)は、1954年東京生まれ。東京大学大学院教授、専攻現代アメリカ文学。翻訳者。訳書は、ポール・オースターの主要作品、レベッカ・ブラウン「体の贈り物」など多数。著書に「アメリカン・ナルシス」「それは私です」など。村上春樹さんと翻訳を通してお友達でもある。



汗の贈り物
いつもリックの好物シナモンロールを買っていく私は、今日電話をかけると、「手ぶらできてくれればいいんだよ。びっくりさせるものがあるんだ」とすごく元気そうにいう。ところが行ってみると、彼は倒れていて病院へ運ばれて行った。台所に入っていった私は息を止めた。そこには・・・。

涙の贈り物
いよいよホスピスに入るほどになったエドは、長く待たされた入居可の電話を受けて、迷う。「だんだん良くなっているんだよ」悪くなり方が、ゆっくりになってきただけなのだが。「よくなったら、帰ってこさせてもらいえるの?」「当然よ」と私は言ったが、ホスピスから帰ってくる人はいない。よくなる人なんていない。彼は笑って言った、「嘘ばっかり」

以下略


コメント (1)
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