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日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

旧歌、「夏の名残」その他

2012年08月19日 | 日記
 この時期の歌を、くりぷとむねじあ歌物語・歌集から。
1首めは、五の巻、「憂い」から、2~4首は、七の巻、「名残」からです。


よのうれい ひとのうれいも なくせみの いまをかぎりと ねをのみぞきく
世の憂ひ 人の憂ひも 鳴く蝉の 今を限りと 音をのみぞ聴く
(世には多くの憂いがあり、人にも多くの憂いがあります。蝉はそんな憂いは何もないかのようにひたむきに鳴き、私はその蝉の声をひたむきに聴いています)


ゆうつかた あめふりそめて いとまあれや みずきてにおう なつひのなごり
夕つ方 雨降りそめて いとまあれや 水漬きて匂ふ 夏日の名残
(夕方、雨が静かに降り始め、地上の草葉に散り敷き、まもなくあたりは雨音に降り込められました。その中を、陽に温められた日向の匂いが、懐かしい夏の思い出となって、立ちのぼってきました)


よるのあめの やみゆくおとを かぞえつつ ねざめもしらぬ しじまやふかき
夜の雨の 止みゆく音を 数へつゝ 寝覚めも知らぬ しゞまや深き
(夜になり、雨が降り止んでいく音空間は、いつのまにか深い眠りを誘い、目覚めることもないような、眠っているのか目覚めているのか区別がつかないような、深い静けさに浸っています)


うすぐもる なつのなごりを おしむがに せみしぐれみつ もりのかなしき
うす曇る 夏の名残を 惜しむがに 蝉しぐれ満つ 森のかなしき
(うす曇りの日、過ぎ行く夏を惜しむかのような、命の限りを尽くす蝉時雨が、うら哀しく森に満ちていました)


ホームページ「日守麟伍ライブラリ」http://book.geocities.jp/himringo/index.htm


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