小さなまちのミュージアムは,いくらユニークな取組を試みても,来館者の増加をそうそう見込めるものではありません。背伸びをするより,地域の施設としてまずはほんとうに市民,地域に親しまれるものとして生まれ変わる必要があります。運営予算も配置スタッフも限られているなか,いずれの地域ミュージアムも大なり小なり似通った事情があるでしょう。
市民・地域に親しまれるとは,ミュージアム運営の目線が市民本位に転換していくということです。運営はわたしたちに委ねられているのですから,わたしたち自身が率先して市民目線に立てなくてはなりません。というか,市民の発想なり交流なりがミュージアムの風通しをよくしていく,そういう視点に立たなくてはならないのです。市民の間に「おらがまちのミュージアム」意識が醸成されない限り,あってもなくても大差がないお荷物施設になるだけでしょう。そういう危機感を,そこに身を置く者が持つことが重要です。
運営に責任のない人たちは,たとえば私の身近な人でさえ,「入館料を払ってまでして行くのはなあ」「もっと人が入りやすい工夫をせな」などと感想を語ることも。勝手ないい方だなあと思うことがありますが,その人たちが収める税金が運営予算になっているのですから,どんな声にも耳を傾けないわけにはいきません。声に出して発言していただくのは,逆にありがたいことです。
わたしは,まさに声なき声から危機感を感じ,ミュージアㇺを❝交流ひろば❞にしていくという発想に立たなくちゃと強く思っています。交流ひろばをいい換えると市民参加です。もっと平たくいえばリビングです。そこには気取りがありません。あるのは普段着の思想です。本年度から始めた市民ギャラリーの設置(下の上写真),ボランティアの募集,プラネタコンサート(下の下写真)の実施などはその具体策です。
策を打ち上げた以上,地道に継続できるように手を打つ必要があります。他のスタッフに任せるのは不可能です。余力がないからです。それはわたしのしごとになります。わたしは,統括係でもあり,渉外係でもあり,案内係でもあり,学芸員風小道具係でもあります。一人数役は当たり前のこと。
つい先日は,市民オーケストラのリーダーであるYさんに連絡して,プラネタコンサートへの出演を依頼しました。これは渉外係としてのしごとです。Yさんは近頃は趣味としてバイオリン演奏を楽しんでいらっしゃるとかで,その音色を聴かせていただこうと思ったのです。
わたしが説明する構想にのってくださり,出演を快諾していただきました。7月に『七夕の調べ』(仮題)と銘打って開きます。ご夫婦での出演になりそう。なんともありがたい話です。こういうお誘いがきっかけになって,バトンタッチ風に次々と出演者層が厚くなっていくことを期待しています。
月に1回のペースでコンサートを開催します。時間帯は夜間です。これで10月まで予定が埋まりました。
ミュージアムが地域づくり,まちづくりのお手伝いができることを逆にたのしめたらいいなと願っています。こんなわけで,ミュージアムは少しずつ,そして確かに変わっていきつつあります。