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登山、渓流釣りを卒業して四季の花を愛でています

映画「黒部の太陽」 と下の廊下縦走記

2012年01月31日 | インポート
先週の新聞に1968年に一般公開された石原プロと三船プロダクションの共同制作の「黒部の太陽」が44年ぶりにノーカットで一般公開される記事が掲載されていました。
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世紀の難工事として名高い黒部ダムの建設に命がけで挑んだ男たちを描いた超大作です。
黒部ダムは今や観光地になって大勢の観光客で賑わっています、ハイヒールを姿の都会の若者でも簡単に訪れる観光地です。
黒部ダムの工事は1956年に着工して1963年に完成しています、それ以前は容易に人が入り込めない秘境でした。
完成後の記録映画を見て青年時代の私はとても感動しました、日本に人が入った事がない秘境があることと、その自然の素晴らしさに心を打たれました。
ぜひ行ってみたいと思いましたが、でも誰でもいけるところでは無いのでと思ってあきらめていました。

それから20年も経ったある日、友人から黒部に行かないかと誘いをうけて迷いもなく行くことにしました。
コースは黒部ダムより下流の「下も廊下」(しものろうか)のコースです、黒部の谷はダムより上流が「上の廊下」(かみのろうか)、下流を「下の廊下」とよばれています。
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下の廊下を踏破するコースは前夜に黒部ダムのロッジで宿泊して早朝に出発し1日目は阿曽原小屋に一泊して2日目は欅平までの全行程2日間の日程です。

1日目    黒部ダム  ⇒  内蔵助谷出合い  ⇒  十字峡  ⇒  仙人ダム
日電歩道       1時間           3時間30分    2時間

        ⇒   阿曽原小屋(宿泊)
       50分
 

2日目    阿曽原小屋   ⇒  大太鼓   ⇒   欅平駅
水平道           1時間50分    2時間30分


1988年から3年間訪れています、10月8日前日の黒部ダムは雨に煙っていました、その日は黒部湖の左岸にあるロッジで宿泊して明朝5時に出発です。
前日の雨はすっかりあがりロッジを出た時には満天の星空でした、気温は低く水たまりに氷が張っていました、jこれからの難コースで氷で滑らないかと不安になりました。

黒部の三大岩壁の丸山東壁や大ダテカビンの上部には粉砂糖を振りかけたように初雪がで白くなっていました。
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大ダテカビンの岩壁。

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丸山東壁、上部は夜のうちに雪化粧しています。

このコースは谷を埋めている前年の雪がとける夏の終わりから従走路の整備を始め登山者が通行出来るのは10月の初めから1~3週間だけ通ることが出来ます、しかし10月になれば初雪が来るのでその年によってはほとんど通行出来る期間がありません。
ロッジを出てから黒部湖の左岸を40分ほど歩いてダムのゲートに到着した時は暗闇でした、扇沢からの朝一番のトロリーが未だ到着していないので静かでした、それでも何グループかの人が暗闇の中ヘットライトを点けて出発の準備をしていました。
身支度を調えてジグザグ道を谷底に向かって30分ぐらい下って黒部川の本流に着いた頃には夜が明けてダムのゲートが高くそそり立っているのが見えました。
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谷に架かった細い橋を慎重に渡って対岸のルートをたどりました。
歩き始めはさほど高度感がなく黒部の流れに沿ってコースが続いています、ダムを出発してから約1時間で内蔵助谷出合いに着き小休止して朝食を食べました.。
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それから大ダテカビンの下を通り抜け対岸に白布を流した様な新越沢の滝がみえる、かなり高い岩壁から4段の滝が落ちるのは壮観である。
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ここから先は谷の両側が岩壁になり黒部の本流が狭くなって「廊下」とよばれる地形になます、縦走路も岩壁の中腹をわずかに削り取った幅が50㎝~80㎝と狭く一歩踏み外すと数百メートル絶壁の下に転落する嶮しい道が続いています。
実際に転落事故が多発して行方不明の人を探す立て札を何か所も見かけました。
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右側の岩壁の中腹に岩をわずかに削り取った縦走路が見える。

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岩壁の中腹に岩をわずかに削り取って幅が80㎝ぐらいの縦走路が見える、互いに確認しあって一歩一歩慎重に前に進む
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後ろの赤い岩は対岸の岩壁、V字谷も狭くなり両脇が岩壁になり(廊下)、黒部の激流はこの間を流れる。


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従走路で立ったままの休憩、荷物をおろして休む場所もない。

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岩壁の番線につかまって慎重に進む、ザックが岩に当りよろけたらおしまい、このルートは縦長のザックでないと危険、祖母谷小屋の主人の佐伯さんにアドバイスを頂いていた、来てみて本当にわかった。

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前年の雪渓が縦走路をふさいでいる個所は上部の岩壁を廻り込む足場を通り越してゆく、一番危険な個所である、これを越さないと前に進むことが出来ない。

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両岸の岩壁で川幅が狭まって白い泡を巻き込んで流れ下る白竜峡の流れ。

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十字峡の岩壁を下る。
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十字峡、左から流れる剣沢、右から流れる棒小屋沢、中央を右下から左上方向に黒部の本流、ほぼ同じ場所で二つの支流が向かい合って合流し上空より見ると十文字に見える、このような地形は珍しい。
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十字峡へ対岸から合流する棒小屋沢。





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従走路をひたすら歩く、岩が崩れた所は丸太を並べた上をあるく、滑りやすいので注意して渡る。
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両岸の岩壁に阻まれた黒部川の本流がS字に蛇行して流れるS字峡。

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縦走路より下を流れるS字峡を見る、足元より200mぐらいの岩壁の高さがわかる。

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対岸に岩壁地下にある黒部川第四発電所からの送電線の出口が見える。


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仙人ダム近くのつり橋、おおよそ100mぐらいの長さで定員1人で先の人が対岸に渡り切ったら次の人が渡り始める、中央付近ではバランスを取ってリズミカルに渡らないと揺れるので怖い。

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今日の宿泊予定地の阿曽原小屋、小屋泊まりの人と外のテント場で野営する人がいる。
このコースは1年間に2~3週間しか訪れることが出来ないので小屋は宿泊客であふれる。タタミ1畳に3人寝る、敷き布団を1枚敷いて頭を交互に3人寝る、隣の人の足が顔の前に来る、3人寝たらかけ布団をかける、そのようにして部屋の端から詰めてくる。
洗濯小屋のスノコの上や玄関にも、いたるところで寝ている。
夜中にトイレに行ったら自分の寝る場所が無くなっている、トイレに行けないので窓から出てトイレに行く。
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阿曽原小屋の前で記念写真、ここまで無事に来ることが出来ました。
小屋から100mほど下ると露天風呂の温泉が有る、工事用のトンネルの中から熱い温泉が流れてかけ流しになっている、黒部の流れの音を聞いてゆっくりと温泉に浸かる、湯殿はひとつ屋根もなし囲いもなし、男性と女性で入浴時間を分けている。

翌朝6時に小屋を出発してかなり高い尾根を目指して昇る、朝1の上りは足にきつい、尾根に取り着いたら水平な縦走路が続く、阿曽原より上は戦前の日本電力が電源開発の調査のために縦走路を開発したので日電歩道とよばれていますが、阿曽原より下は水平道とよばれています。
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高い岩壁の上に縦走路が水平に伸びる、縦走路の下は標高差200mの絶壁である、慎重に進む。

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大太鼓とよばれる難所、岩壁を削り細い道が続く、上から垂れている番線は岩壁を削る前に岩肌に丸太を番線で吊るしただけの道を通った時の番線です。

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岩を削った道が崩れて丸太を渡しただけの縦走路を行く、下は断崖になっていて足を踏み外したら助からない。

水平道も終わり近くなると志合谷のトンネルを抜け対岸の奥鐘山の岩壁を見ながら進む。

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山並みの間から雪化粧した餓鬼山が見える、谷間の下から欅平のトロッコ駅の構内放送が聞こえる、鉄塔のある尾根から欅平までの大下りのジグザグ道を標高差500mぐらい下ると欅平駅に到着です。
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事故もなく全員無事に到着です、みんなの顔が達成感で輝いて見えました。

欅平駅に到着したのは10時30分でした、しばらく休憩してから荷物を駅に置いて黒部川支流沿いの道を1時間ほど上って祖母谷温泉小屋へ、温泉に浸かった後のビールは五臓六腑にしみわたりました。
しばらく休憩をとってから小屋を後にして午後3時のトロッコに乗って宇奈月温泉で乗り換え帰宅しました

私はこのコースを50歳前に3年連続で行きましたが、他の山と違って健脚だけでは危険なコースです、歳を重ねバランス感覚が衰えた今では行けないコースです。

映画「黒部の太陽」が上映されるのが楽しみです、あの感動をもう一度楽しみたいと思っています。

長い記事を最後まで読んで頂きありがとうございました。




















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10 コメント

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Unknown (go)
2012-02-15 08:42:57
keikoさんへ  兼六園のライトアップを見に来られたのですね、私は昨年の秋のライトアップ秋の段に行ってきました、今回も行こうと思っていたのですが都合があって行けませんでした。
秋の時はすごい人出で良い撮影ポイントにカメラマンが大勢集まっていて思ったように撮影できませんでした。
記事を楽しみにしています。
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Unknown (keiko)
2012-02-14 22:41:35
今晩は。
ブログ紹介記事の兼六園のライトアップの写真見て
またまた遊びに来ました。
私も先日初めて見てきました。
やっぱり綺麗な姿でしたよ。
今度記事にUPしようと思ってます。
goさんみたいに上手ではありませんが(笑)

お時間あると気にでも覗きみしてくださいねぇ。
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Unknown (go)
2012-02-10 11:42:08
keikoさん コメントを有難うございます。
少し前から貴方のサイトにお邪魔して充実した記事を読ませて頂いております、これからも宜しくお願いします。
黒部のこのコース3回行っています、初めは友人に誘われて行きましたが自分でも最後までいけるか半信半疑でした。それでも2度、3度と足を運んだのは黒部の自然の美しさです。
歳をかさねた今では行けないところです、富山を代表する
黒部川の清流の美しさには感動します。
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Unknown (keiko)
2012-02-09 23:20:43
今晩は。

すごいですねぇ~!!
私は、絶対足がすくんで歩けれそうにないです。
写真みてるだけで、うわぁーとか雄たけびあげてます。
黒部川の水の綺麗さには感動ものですよね。
どこを見ても絶景です。
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Unknown (go)
2012-02-01 17:56:20
KURIさん 私も始めて行く時は怖かったです、でもそれ以上に黒部の谷の核心部を見たい気持ちが強かったようです。
20歳台より夢に見ていた黒部渓谷をこの目で見てきたことは、今考えても良い時期に行ったと思っています。
私は20歳代はギターに凝っていて山にはほとんど行っていませんでした、30歳ぐらいから近くの山に登る程度でした、本格的に山に登りだしたのは白馬岳に上ってからでした、夏の綺麗な高山植物の花園に魅せれてからです。
それからは家内を誘って一緒に北アルプスの山に上るようになりました、もちろん夏山だけです。
この黒部のコースは3回行きました、その内一回は家内と行って来ました。
私の写真を見て娘も友人とこのコースに行ってきましたが帰ってきて開口一番、2度と行きたくないと言っていました。、
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Unknown (KURI)
2012-02-01 11:26:49
写真を見ているだけで足がすくみます。
ご家族が見られたら「もう行くのやめて!」とおっしゃるのではないでしょうか?
おっしゃるように健脚だけではなし得ないことですよねぇ。
今の私は同時のgoさんと同じく50前ですが、これからここへ行こうとは思いません。やはりもっと若い頃からいろいろな面で鍛えていらっしゃったから到達出来たのでしょうね。恐れ入りました。

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Unknown (go)
2012-02-01 10:03:33
幸村さん 私も初めて行った時には日本にこんなところが有るんだなと思いました、冬は岩壁を埋め尽くす雪で埋もれていてここへ行ける期間が限られているので自然が守られているのでしょう。
昔、白山の渓流釣りに行った時も岩壁の上の崩れやすい道を通ったことが有りましたね、ざらざらと崩れる道で私も怖かった思い出が有ります、地元ではオンマイ壁と云っています。あの時に蝮を取ったことを一緒に行った社長が今でも時々云っています。
仙人みたいな人は今でも年賀状が来ます、その人の里があの岩壁の下流の村ですから自分の庭のようなものです。
兄の友人のヨネキチさんも黒部で荷物担ぎをしていたようですね、車が通れないところは人力で運んだのでしょう、危険な仕事だったと思います。
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Unknown (幸村)
2012-01-31 22:08:02
わ~あ、って感じですね、岸壁にわずかに溝を作ったようなもんでしょう、一歩踏み外すと数百メートル、考えただけで足元がゾクゾクします。
 昔、白山の麓からイワナ釣りに連れて行ってもらい、ちょっと崩れた道では、はるか下に渓流が見え帰りもまたここ通るのかと思ったら、いやでしたよ。帰りは竿もリュックに背負ってたのに、あの白山の主みたいな方は魚缶を持って片手で岸壁を登って行ちゃうんですからすごい、あの方は仙人
そう言えば、上の兄の友達のヨネさん?も黒部で荷物運びしたって言ってましたね
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Unknown (go)
2012-01-31 21:18:07
ただのいなかものさん  初コメント有難うございます。
いつも寄せて頂いて記事を読ませて頂いております、これからも宜しくお願いします。
私が20歳代の頃に黒部ダムは完成しました、その頃の黒部の太陽の映画や記録映画を見て青年時代の私は黒部にあこがれていました。
でも簡単に行けるところで無いのであきらめていました、山仲間が誘ってくれなかったら行けなかったと思います。
危険なコースでしたが事故にも合わず無事に帰ってこられました。
今の私は山歩きで歩く事には自信が有りますがバランス感覚が歳とともに衰えているのでこのコースは行けません。
良いタイミングに行ってきたと思っています。
今後とも宜しくお願いします。
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Unknown (ただのいなかもの)
2012-01-31 17:43:52
とても真似が出来るような事ではなく、ただただ凄いの言葉しかありません。
黒部ダムと立山、宇奈月には2回程行きましたが、やっぱりツアーで楽して連れて行って貰う方がいいかも。
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