『天鼓』は中国のお話です。
それならば扮装(装束)は日本を題材にした曲目とは違う、中国風スタイルをした方が、観る側は想像し易いと思います。
そこで、今回はシテ(主人公=王伯)だけではなく、ワキ(勅使)もアイ(官人)にも中国らしい装束を着て頂くことにしました。
前シテは普通「小牛尉(こうしじょう)」というお爺さんの顔の面(おもて)を付けて、白髪の「尉髪(じょうがみ)」を頭に付けます。
この「尉髪」の髷が、とても日本的な感じがするので、今回は「唐帽子(とうぼうし)」を被り中国人カラーを強調したいと思います。
「唐帽子」は、面の眉から上が帽子で隠れてしまうので、お爺さんのお顔の表情が見えにくくなる欠点がありますが、私は敢えて着用してみます。
お爺さんの表情に注目して、気をつけてご覧になるのも面白いかと思います。
次ぎに、後場のシテ(天鼓少年)の舞は「楽(がく)」と呼ばれる音楽に合わせて舞います。普通、喜多流の『天鼓』では太鼓の入らない「黄鐘(おうしき)」という音色が低い調子で舞いますが、今回は特別に、いつもより高い調子の「盤涉(バンシキ)」と呼ばれる調子に、尚かつ太鼓も入れて囃して頂きます。華やかな中国リズムをお楽しみ頂ければと思います。
しかも、ちょっと舞の途中に橋掛に行く動きを入れますので、橋掛を呂水の川、水の流れなどを想像してご覧頂けたらと思います。
権力者(帝)の我が儘で少年から奪い取った鼓は、宮中の者のだれが打っても鳴りません。
まるで鼓に命があるかのように
「ご主人様の天鼓少年を殺した奴なんかに、美しい音なんか聞かせないよ!」と
頑なに音を立てないようにしている鼓、
でも少年の父ならば・・・・と
父が打つと、妙なる音が鳴り響き・・・
帝も反省し親子の情愛に泣くのです。
そのあとどうなるか?
そこは皆様の想像の世界です、ご自由に考えて下さい
それが能、なんですね