能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
能の世界も個人の生活もご紹介しています!

現場から

2012-10-27 09:13:09 | 言いたいこと・伝えたいこと 
「躍る大捜査線」の青島刑事役の織田裕二が
「室井さん、事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!」
と叫ぶ。名セリフだ。このセリフ、いつまでも私の身体に鳴り響いている。では能楽師の現場から。

能楽師、と言ってもこれは自分のこと。もっと観客の立場になって舞台を勤めた方がよいと、このごろ反省している。演者側のご都合が優先された興行は、少々控えめにした方がいい、と思い直している。
能役者というものは個人の会を立ち上げ、自身の能の道に、年令や習得した技量に似合った演目をハードルのように並べ、それを越えて行く、そう教わり実行して来た。それは間違ではなく、出来れば早いスピードでそのハードルを跨げればそれにこしたことはない、とさえ思って来た。
しかし、この事だけにしがみついているのは50歳過ぎにはどうも格好悪く思えて来た。今の自分には似合わなくなって来た、と思える。
「そろそろ転換期かもよ」と、もうひとりの私が信号を送ってくる。

なぜこんなことを思うようになったのか? やりたい曲を優先し、跨ぐスピードが速過ぎたかなと、贅沢な悩みと言われば返す言葉もないが、そういうこともある。とにかく転換期なのだ。やりたい曲を蔑ろにはしないが、やってほしいと思われる曲を再演し、作品の塗り替え作業も必要だと、観客の立場から眺めて判った。

今、粟谷能の会に対して、観客の皆様がなにを望まれているのか、誰の何を観たいのか、そこが知りたくなって来た。たくさんの鑑賞者に来ていただける環境作り、
「次回もまた来よう」というリピーターを増やすこと。課題はいろいろある。

これまでも、粟谷能の会ではいろいろな新企画を行ってきた。研究公演をはじめ、事前の「能楽鑑賞講座」の開講、曲目の現代語訳の無料配布。当日は開演前に鑑賞案内のお話も入れている。新企画に挑んでいるが、しかしまだまだ
「会議室でやっているなあ、主催者はわかってないな」と思われる点もあるかもしれない。
「こう変えて、こんな番組にして、これは困る」などの現場のご意見、ご希望をどんどんお知らせいただきたい!
ご意見はこちらに akio@awaya-noh.com

以上、現場から。

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2 コメント

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能楽堂 ()
2012-10-28 10:53:45
ちょと違うかもしれませんが能楽堂で感じた事を書かせて頂きます。
長島茂の会、昨年の大島輝久さんの道成寺拝見させて頂きました。どちらも10月の開催で折りしも学園祭シーズ真っ最中でした。
乱拍子の小鼓の音と声、演者の息使いさえも聞こえてきそうなその時に隣の体育館から生バンドの演奏音が、ジャカジャカ・・今年は大丈夫かななんて思っていたらまた・・集中力が途切れてしまいました。
せっかくの素晴らしい舞台なのに残念だなと思います。
年間計画なので難しいとは思いますが、この時期は外して欲しいです。

それといちいち連れの方に説明するご婦人、鐘の中に何が入ってるとかどうだとか、アイの説明したり・・今回は両隣がこういう方で集中出来なかったです。
これは見所のマナーの問題ですが、年に数回しか能楽堂に行けない人間にとっては貴重な時間なのであえて苦言を言わせて頂きました。
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お返事 (粟谷明生)
2012-11-07 16:40:27
花様
コメント有難うございました。
お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした。

杉野の学園祭は、困ったものですね。
どちらかが、移動するしかないのでしょうか?
防音設備はしているのですが・・・限界でしょうね

見所のマナー違反は困ります、
特に、お隣や周りにご迷惑をかける人たちは困ったちゃんですね、オバサマが多いように思われますが。どうしたらいいのでしょうかね?

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