能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
能の世界も個人の生活もご紹介しています!

アウトバーン

2013-08-16 08:43:56 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介
ドイツのアウトバーン(高速自動車専用道路網)ではご存知のように走行速度は無制限だ。どんなに速く走っても警察に捕まることはない。その代わり事故が起きたら、それは全て自己責任となる。

ドイツが誇るポルシェや、BMW、メルセデス・ベンツの高級車は、アウトバーンを300キロ以上で走行する。日本にはアウトバーンに似たところはない。

さて、ポルシェや、BMW、メルセデス・ベンツといった外車と、日本が世界に誇るトヨタや日産の車との違いはなんだろう?

いろいろ違いはあるだろうが、ひとことで言えば、ドイツの車を作る技術者は、300キロを超える速度でも止まれるブレーキを考える。日本車にはそれがない。どんなに速く走っても200キロを超えるぐらいを制限と考え、ブレーキを作る。

ドイツでも、せいぜい最高速度は350キロぐらいらしいので、そのあたりで落ち着いてしまえばいいのだが、ドイツの車社会、技術者達は猛反対する。

なんと言って反対するか?

その答えがいい。

制限されたものの中で作るのでは、技術力は増さない。無制限だから、最高速とそれに伴う制御の技術が生まれる、と。

この考え方、能の世界にも導入したい。
能はいろいろな制約がある様式美を重視しているが、それだけに凝り固まっていては、現代に沿った芸能にはならないと思う。

古典芸能であっても、今の時代に合わせる必要がある。なにも能の形態を壊せ、と言っているのではない。それまで演じてきたやり方がいい、それしかない、と枠組みを決めるのではなく、古典芸能も今に照らして無制限に演出することは誤りではないだろう。いやそう努めなくてはいけない、と思う。

秋の粟谷能の会で勤める『葛城』の小書「神楽」は、囃子方が宗家揃いの古式な手法が伝書にあるので、それに再度挑む。前回は伝書の通り再現したが、長時間の演能は今の観客はもとより楽屋内にも不評なところがある。今回、冗長な神楽の舞を、神楽の持つエネルギーを保ちながら、時間的には短縮した形で試演したいと考えている。

そしてその結果がよければ、好評であれば、特殊な神楽、正式な神楽というのではなく、たとえば「大和神楽」とでも新規に名称をつけて、後生に残せればいい、と思っている。

秋の大94回粟谷能の会は10月13日(日)12:45開演 於 国立能楽堂

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粟谷明生
akio@awaya-noh.com

文責 粟谷明生

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