能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
能の世界も個人の生活もご紹介しています!

能『松風』を父は・・・。

2015-10-16 06:37:50 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介
能の番組は、1.神、2.男、3.女、4.狂、5.鬼の五番立に分けられ、3の女は三番目物と言われ、女性が主役で名作揃いです。代表曲は『井筒』『野宮』『楊貴妃』『江口』『湯谷』『松風』『半蔀』『夕顔』など他にもあります。

玄宗皇帝の愛人・貴妃の『楊貴妃』や光源氏を愛し、正妻・葵上に嫉妬する六条御息所の『野宮』。遊女でありながらも普賢菩薩の化身となる『江口』。これら高貴な身分の高い人物を対象とした作品もあれば、それほどの身分の者でもない『松風』や『湯谷』もあり、これらは同じ三番目物という枠組みに入れられています。ただ、それぞれの曲の人物は、居場所が違うよう私は思っています。演者はそこを演じ分けなくてはいけないのではないでしょうか?

父に「『松風』をどう演じたらいい?」と聞くと「銀座の高級クラブのママの気持ちで・・・」と拍子抜けするような答えが返って来ました。
高級クラブ、しかも銀座!当時バブル全盛のお陰で、お弟子様方に銀座のBARやクラブのママのお顔を拝見することが出来たことは、今とても貴重な時間、と感謝しています。

さて明日の『松風』、どのようなママになれるかは、いささか不安ではありますが、精一杯勤める所存です。
「演者は艶(イロ)が命」も父の口癖で、宮廷や宮中の高位の方から須磨の蜑女までも、能役者・粟谷明生の艶をどのように出すか・・・と、いろいろ考えながら、いざ立ち合い能に挑もう!そう心に決めています。

文責  粟谷明生
写真 『松風』見留 粟谷明生 撮影・あびこ写真店




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