能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
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『道成寺』見どころ その3「乱拍子」について

2014-02-22 07:37:16 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介
アイのはからいで、シテは女人禁制の鐘供養の場に入れてもらい舞を舞うことになります。烏帽子をつけ身支度をして舞うのがこの曲の山場の一つ「乱拍子(らんびょうし)」。白拍子の舞を模した舞で、シテと小鼓の二人による特殊な舞です。シテ方は小鼓方の流儀に合わせて舞(型=動き)を合わせます。
初演では幸流の亀井俊一氏のお相手で勤めましたが、今回は大倉流宗家・大倉源次郎氏にお願いしました。
ではまず型についてご説明いたします。

シテは小鼓の掛け声や音色に合わせて片足を少しずつ動かして舞います。
順番としては、まず片足のかかとを小鼓の掛け声に合わせてゆっくりと上げ、次に「ポン」という打音、音色に合わせて前につき出し爪先を上げます。
その後「チ」の甲の音に合わせて足を外へひねり、掛け声に合わせてまたもとに戻し、「ポン」の打音、音色で爪先を下ろし、すぐに掛け声に合わせまたかかとを上げます。最後に大きく抜き足(引き上げ戻す)をして足拍子を踏むところが区切りで、ここまでを一段と数えます。

単純な動作の連続ですが、小鼓に合わせて、姿勢を乱さずに綺麗に静止しながら下半身だけで演じる舞はとても持久力とバランス感覚、そしてスムーズな身のこなし、これらを保つ体力が必要となります。
今回は足拍子を6回踏むため「乱拍子六段」となります。喜多流の動きの流れとしては左へ丸く廻りながら、最後に正面に向き直って足拍子を重ねて踏むところを中ノ段と称して、シテは中啓(ちゅうけい=扇)を右手から左手に持ち変え、続いて「道成の卿、承り、……」と乱拍子を踏みながら、和歌を一句ずつ細切れに謡い込みます。小鼓の呼吸を計り、足を動かしながら謡う、足と口と両方を同時進行させるのが難しく、これは稽古の回数で体得するしかありません。

「乱拍子」の舞は単純な動きです。さて演者はなにを真似て、なにを思い動いているのか・・・。道成寺の階段を蛇のように這い上がる気持ちとも、足拍子を踏む乱拍子という舞そのものを表現しているとも考えられます。私はその両方を思いながらも、道成寺という地、そして鐘への女の思いが、内に抑えようとしながらも、どうしても外へ発散せずにはいられないストレス、それがついには爆発してしまう、そんな冷静と興奮の交錯のような気持ちを表していると思い稽古しています。

もちろん、どう観るかはご覧になる方のご自由です。どうぞご自由に想像していただければ、単純な乱拍子の動きがより一層面白くご覧いただけるのではないかと思います。

写真 
初演の乱拍子 シテ・粟谷明生 小鼓亀井俊一氏 撮影 あびこ喜久三
初演の粟谷能の会番組 表紙 シテ・粟谷能夫 
26年3月2日の『道成寺』成功を祈願して「道成寺観世音祈願」
文責 粟谷明生


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1 コメント

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いよいよ! (どうきゅうせい)
2014-02-23 09:44:32
絶対ぜったいゼッタイ、寝ちゃだめ・・・と自分に言い聞かせるわけだ。
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