新城薪能のあとは、恒例の打上会のため、宿泊する豊橋までタクシーで移動する。
運転手さんに「早く、早く~~急げ!急げ!」と
言わんばかりの私の形相が窓ガラスに映っている。
今回は、いつもの4名の他に、最近我が家で面倒をみている、
能楽師を目指す、S・Y君と、やはり同じように能楽師になりたい、
T・Y君も同席した。
いろいろ話を聞いてみると、二人とも能楽師という華やかな
表舞台のイメージが強く、憧れて来たようだ。
ここで夢を壊すようで申し訳ない!と思ったが~~~
実際のところ、裏側を忌憚なく(?)
ぶっちゃけで話した。
能楽師になるには、まずは裏方の仕事を覚えなくてはいけない。
私も家の子という特権はあったものの、糸針作り、作物の作成、
装束管理などなど、下積みも一応の時間をかけてやってきた!
という自負はある。
それらをこなして来たからこそ、
ようやく40代からぼちぼち表に出られるようになったのだ
と思っている。
能楽師を目指すならば、
現場での経験が一番だ。
私がそうであったから、間違いない!
近年の喜多流の歴史で世襲以外の人がこの世界に来るのは極めて珍しい。
だから、S・Y君にはいろいろ重圧もあると思うが、
ここは耐えて立派な能楽師になってほしい。
いやなこともあるだろうが、また喜びもあるはず。
我慢が必要、そしてあまり時間があるわけではないから、
急がなくてはいけない。
短期間にいろいろなことを的確に習得してほしい。
知らないことや失敗は付きもの、恥をかいて覚えるのだ。
そして大事なのは、その後の処理。
どこでもそうだろうが、能楽の世界も同じ、
最初の一、二度はやさしく指導されるが、三度目に同じ間違いは
どなられ、殴られる。
殴られる前に覚えたいものだ。
土曜日の楽屋での出来事だ!
小鍛冶の装束を着けるときに
「おい!腰帯取ってくれ!」
「。。。。。。」
「どれか判らないか~~」
「はい」
「源氏香だ!」
「。。。。。。。。。」
「これだよ!覚えておけよ」
「はい!」
普通ならこれで終わりだが~~
しかし、こう続いた。
「腰帯の模様が源氏香になっているだろう、
源氏香ということがわかるか?
源氏物語の52帖(桐壺と夢浮橋をのぞく)を
図であらわしているんだよ。
こういうマークがいろいろあるんだよ。覚えた?」
これで次回、
「源氏香の腰帯!」と
言われてすぐに取れなかったら~~~
あなたなら~どうする?
写真の左、青い狩衣の下に見えるのが、源氏香の腰帯
今、日本人が日本の文化に疎くなってますもんね~
学ぶ側も、ご指導される側も大変かもしれませんね。
(観客も演者も大変?)
ところで、どうして源氏香の腰帯を使うか・・・は
ご指導されたんですか?
もしかして企業秘密でしょうか???
例外もあります、例えば赤い腰帯でも男性が使うこともあります。
一般的にはどの柄を選ぶかは演者の自由です。
今回は演者ではなく装束を提供した者の選択によるもの、決して深い理由などないと思います。
興味深く読ませていただきました。
私も能楽師は無理としても、お能に関係するお仕事に就けたらと思っている一人です。
おまけに女性のためことさら難しいのではないかと思っているのですが、挑戦してみたいです。
今は分かりやすいエンターテイメントばかりがもてはやされていますが、少し分りにくい部分があるお能はすごく魅力のある芸能だと思います。
そんなお能を広めることができたらと・・・。
何事も難しいのがお能の魅力なのかもしれません。
「日本の伝統芸能」の案内人?
ゲストとして活躍されています。
今朝も、多分再放送だと思いますが放映されていました。
彼らは、芸は勿論、おしゃべりも達者なのでうってつけです。
能、狂言を広めるのにはそれに適した人、とそうでない人がいると思います。
私は後者でして~~人前での話は下手、へたくそでして~~
でも、能を広めたいという気持ちはありますよ、
どうぞお能を広めるお仕事や、それに関連したことでの
ご活躍を期待しております。
コメント有難うございました。
例えば、源氏香の腰帯を使う時に、
お弟子さんが、
源氏香の腰帯!ではなく
腰帯!と言われただけで、
更には、何も言われなくても、
源氏香の腰帯を差し出せるようになると良いですね。
舞台芸術の宿命として、能楽も
観客がいなければ成立しません。
玉手が能楽の入り口までご案内した友人たちが
能楽のトリコになり、
更に、その友人たちへ・・・と、
現在、玉手の周囲では
能楽愛好菌増殖中!!!
勿論、
粟谷菊生さんや友枝昭世さん、野村万作さん・・・
といった方々の
すぐれた舞台あればこそですが~