能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
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久しぶりの『通小町』のツレ役

2014-10-06 08:34:47 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介
先日「塩津能の会」で『通小町』のシテ連を勤めた。ツレは2年前の式能『土蜘蛛』の胡蝶役以来2年ぶり。そういえば、あの時も喉の調子が良くなかった。

『通小町』のツレは、昭和55年にシテ吉田一芳氏(素人)のお相手が最初で、今回で13回目。シテは亡父・菊生が一番多く3回、従兄弟能夫のツレは2回、そして塩津哲生氏も今回で2回目となった。

『通小町』は前場にシテが登場しないので、ツレが最初の舞台進行役を任される。そのため役割は重く喜多流では大事な扱いとなっていて、未熟な若者にはなかなかこの役がまわってこないのが現況だ。

前場、ツレ自ら「市原野に住む姥ぞ」と名乗りながらもその姿は一番年若い「小面」を付け、着ている装束も「紅入唐織」であるから見た目と謡っている内容が矛盾する。

これは、中入で後見座にクツログ演出のため着替えが出来ない。そのため後場の格好を重視し、前後を後場の格好で済ませようという演者側の工夫の結果ではないだろうか。

近年では前場を「曲見」「紅無唐織」にして一度中入して、着替えて出直す演出も試みているが、今回は「従来通りで」とのシテのご意向で、敢えて年寄りでも若い格好をする演出で勤めた。

さてこのツレ役。私はやはりツレツレらしく、が一番良いと思っている。「『通小町』のツレだから・・・」と意識しすぎると、馬鹿丁寧な重ったるいツレとなりがちで、それは似合わない、と思っている。

今回、馬鹿が付かない程度にサラリ丁寧に、と心がけたが・・・・どうであったのだろう。

今回使用した小面の銘は「初草」これは粟谷家所蔵ではない。裏面に「初草」とある。

能役者は当て物を付けて自分の顔に合うように微調整します。

「小面」を下から撮影して当て物に焦点を当てました。



今週は粟谷能の会で『清経』を勤めるが、ツレの清経の妻を佐藤 陽が勤めてくれる。長時間、ワキ座に座るのがツレの宿命だ。綺麗な姿勢を保ちながら座り、良い謡いを聞かせてくれることを期待している。

粟谷能の会のチケットはSS席以外はまだ若干ございます。A席もキャンセルがあり、数枚ございますので、皆様のご来場をお待ち申し上げております。

お申し込み先
akio@awaya-noh.com
粟谷明生


文責 粟谷明生
写真 粟谷明生 撮影 青木信二



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