大阪の公演も終わり、ほっと安堵しながら演能レポート『木賊』を書いておりますが、先日の粟谷能の会にお越しいただきました横山英行様からご感想をいただき、皆様にもお伝えしたく、ご本人さまの許可を得まして、ここにご紹介させていただきます。
粟谷明生様
三月三日は、素晴らしいお能を拝見し、感動のうちに帰宅いたしました。
あの日は明生さん自らが受付に出られて、わざわざ手ずから書かれたものを皆さんに . . . 本文を読む
女の子へ、小さな恋心を持った小学校時代
大学時代の一寸大人びた、恋物語
結婚してからの夫婦愛
そして親となり子を思う親心まで
すべて、お互いの気持ちが通い合えば上手くいく、のだが・・・
そうはいかないこの世の人、人、人。
『木賊』のシテ・老翁は生真面目で頑固一途な父親だ。
「自分の信じるものに間違いなど無い!」
「私の言う通りしていれば、幸せになる!」
「無駄な事はするな、余計 . . . 本文を読む
3月3日の「粟谷能の会」が終わり、次は3月10日(日)大槻能楽堂にて「大阪大学喜多流能楽研究会自演会」です。
今年は、能『羽衣』舞込を、シテ:坂本直人とワキ:竹迫杏莉、そして地謡は女子6名(地頭:上村緑)が勤めます。
奈良女子大学能楽部観世会と京都大学能楽部金剛会の学生さんにも招待仕舞でご参加いただきます。
阪大喜多会OBの皆様、「応援ご鑑賞に大槻能楽堂集合!」
なにとぞ、よろしくご協力のほ . . . 本文を読む
粟谷能の会を明日に迎え、近所を散歩しながら、綺麗に咲いた梅の花と香を楽しんじゃいましたが、まさにそれは、明日の能『巻絹』の男(シテ連)ようでした。
さて、いよいよ明日、能『木賊』を勤めますが、ご覧になる時、
「ここに注目してほしい!」
と、思うところが三ヶ所あるので、ご紹介いたします。
まず前場の鎌で木賊を切る型が見どころです。
木賊は鑢(やすり)になるほど硬い繊維質の植物のため、鎌の . . . 本文を読む
能楽は、昔からの教えを今に伝承していますが、その教えは古臭いもののように思われがちですが、実はそうではなく、その時代その時代に似合ったものを、その時の人々により変化させ継承されています。
この度勤める能『木賊』は、江戸時代の伝書には
「肩上げした水衣の袖を物着にて下ろす」
と、だけ記載されていますが、近年は掛素袍や子方長絹などを着用する演出が主流となり、これは近年の先人たちの良き工夫であると . . . 本文を読む
3月3日(日)、第102回 粟谷能の会にて能『木賊』を披きます。
難曲、秘曲とされている『木賊』を演者の立場から舞台の進行にそってご紹介いたします。
信濃国 伏屋の里で育った松若(子方)は親に内緒で出家しましたが、 年月が過ぎると故郷の父の事が気になり、師の僧達と故郷の伏屋の里を訪れます。
そこに、老翁(シテ)が従者(シテ連)を連れて木賊を担ぎ登場し、秋の伏屋の里の風景を謡います。
僧 . . . 本文を読む
第102回 粟谷能の会をご鑑賞の日本女子大学の学生さん12名様の内、9名様が事前鑑賞講座にご参加頂きました。
講座は能面「小尉」「増女」「中将」「童子」の4種の能面を、それぞれご希望の面を選んでいただき実際につけて、視界の狭さを体験をして頂きました。
その後、能『木賊』のあらすじをご紹介しながら、見どころなどを、少しお話させていただきました。
お食事をいただきながら、いろいろなお話 . . . 本文を読む
能『木賊』は、特殊な老人(男)の物狂(狂乱)物です。
以前喜多流では『卒都婆小町』などの老女物と同様に、演者は還暦を過ぎなければ勤められない秘曲扱いをしていましたが、近年還暦前に披かれた方々のお陰で、秘曲が神棚から下ろされました。そのため、とても大事にしていた秘曲が現場の能楽師に身近に感じられるようになれた事は、今に生きる能楽師にとって、とても良い事だと思っております。
能『木賊』は、特に後半 . . . 本文を読む
2月21日(木)19時より、国立能楽堂大講義室にて、第102回 粟谷能の会の「能楽鑑賞講座」がございます。
事前に演者自身の演能への心意気などをお聞きいただき、当日の能をより深く、楽しんでいただきたく催しております。
使用する面や装束のこと、演出や工夫など演者の粟谷能夫と明生がお話させていただきます。司会は女優の金子あいが勤めます。
今回の『木賊』について以前、自身で投稿した演能レポー . . . 本文を読む
能『木賊』のシテの面は「小牛尉(こうしじょう)」と伝書には記載されているが、オーソドックスな小牛尉では、頑なでくせのある老翁は表現出来ないだろう。
どのような表情が『木賊』に似合うのか?
あらすじと、舞台展開を短くまとめました。
都の僧(ワキ)が父との再会を望む少年・松若(子方)を伴い、信濃の園原山に着くと、老翁(シテ)が男達(シテ連)を連れて木賊を刈っているところに出会います。
僧が老翁 . . . 本文を読む
私はお酒が好きで、ついつい飲み過ぎてしまう。
気持ち良く酔い、寝れることもあれば、飲み過ぎて失敗もたくさんある。
さて、酒を呑んで常軌を逸することを「酔狂」と言う。
最近ではあまり聞かなくなったが、酒をこよなく愛す高知県人は
「あいつは酔狂やき〜」
と噂話をする。
さて能『木賊』のクセの最後に
「左右に颯々の袖を垂れ、一つは又、酔狂も雑じると人やご覧ずらん・・・」
(左右に袖を使っ . . . 本文を読む
「能面のような表情・・・」
このような表現、まだ使われているのだろうか?
能面は無表情ではない、
色々な表情を見せてくれる。
少し上に向いた状態を
「てる」
といい、晴れた気分に見えて
少し下にうつむいた状態を
「くもる」
といい、暗い表情に見える。
演者は「てり」もせず「くもり」もしない、中庸の状態を良い具合の「ウケ」と呼び、それを終始保ちながら舞台を勤める。
さてこの「ウケ」だ . . . 本文を読む
いよいよ明日『東岸居士(とうがんこじ)』を勤めるが、居士と言うと、戒名を思い出す。
父の戒名は「玄能院妙謡菊生居士」だが、能の『東岸居士』や『自然居士』の居士は在家で仏法を広める禅者の称号だ。
居士達は端的に言うと束縛を嫌う自由な芸能者だと思っている。
その活動には僧籍が有効、且つ便利なので髪は剃らず墨染の衣も着ないが、袈裟は掛け数珠は持つ。
居士は仏法を庶民に分かりやすく広めるために、巧 . . . 本文を読む
我が家には喜多健忘斎古能の伝書がある。
伝書とは先人の習得した技芸を後世へ伝承する文書で、我が家の伝書は先ず通常の型が記載されていて、最後に「こうしたら徳する、これは損だ」と箇条書きされていて、そこが実に面白い。
この度、能『東岸居士』を勤めるにあたり伝書の最後の一文が気になった。
「此の能、橋元にて舞い、謡いて供養を勧めたる能なれば、初めより烏帽子着ける理有り。さりながら曲舞(クセマイ . . . 本文を読む