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日本の人骨発見史10.一の谷中世墳墓群(中世):日本最大級の火葬遺構

2014年01月19日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

 一の谷中世墳墓群は、静岡県磐田市に所在します。磐田市教育委員会による発掘調査が、1984年6月から1988年12月まで実施されました。1,249基の遺構が発見され、墓888基・火葬遺構46基・集石遺構104基・土坑197基等が検出されています。

 これらの遺構から、鎌倉時代中期~室町時代の人骨467体が出土しました。これらの人骨は火葬人骨で、国内でも最大級の火葬遺構だと推定されます。出土人骨の報告は、聖マリアンナ医科大学(当時)の森本岩太郎[1928-2000]・現聖マリアンナ医科大学の平田和明・現順天堂大学の工藤宏幸により報告されています。

 森本岩太郎等による分析では、成人骨348体・小児人骨32体・性別及び年齢不明人骨87体の合計467体にものぼりました。この内、成人骨で性別推定ができた92体の内訳は、男性60体・女性32体でした。また、死亡年齢が推定できた36体の内訳は、壮年13体・熟年21体・老年2体でした。

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写真1.一の谷中世墳墓群450号墓(左)と451号墓[磐田市教育委員会(1993)『一の谷中世墳墓群』より改変して引用]

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写真2.一の谷中世墳墓群450号墓近接[磐田市教育委員会(1993)『一の谷中世墳墓群』より改変して引用]

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写真3.一の谷中世墳墓群450号墓出土火葬人骨:頭蓋骨片[磐田市教育委員会(1993)『一の谷中世墳墓群』より改変して引用]

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写真4.一の谷中世墳墓群450号墓出土火葬人骨:四肢骨片[磐田市教育委員会(1993)『一の谷中世墳墓群』より改変して引用]

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写真5.一の谷中世墳墓群451号墓近接[磐田市教育委員会(1993)『一の谷中世墳墓群』より改変して引用]

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写真6.一の谷中世墳墓群451号墓出土火葬人骨[磐田市教育委員会(1993)『一の谷中世墳墓群』より改変して引用]

 この一の谷中世墳墓群出土火葬人骨を観察すると、骨に歪み・捻れ・亀裂が認められるため、白骨化させたものを火葬にしたのではなく、死体をそのまま火葬にしたと推定されます。また、すべての部位が検出されていないので、火葬後に、収骨(拾骨)していることも推定されます。状況からは、別の場所で火葬を行い一部を収骨(拾骨)して、墓に埋葬した火葬墓でしょう。

*一の谷中世墳墓群に関する資料として、以下の文献を参考にしました。

  • 磐田市教育委員会(1993)『一の谷中世墳墓群遺跡』、磐田市教育委員会
  • 森本岩太郎・平田和明・工藤宏明(1993)「一の谷中世墳墓群遺跡出土人骨について」『一の谷中世墳墓群遺跡:本文編』、磐田市教育委員会、pp.471-503

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