人類学のススメ

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私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟11(石器のレプリカ作製)

2010年05月08日 | D1.私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟[

 発掘調査では、人類学は、木村 賛先生(当時、京都大学)と私の2人が担当しました。と言っても、私はまだ駆け出しで何のお役にもたてません。木村 賛先生は、有名なイスラエルのアムッド洞窟の第二次発掘調査にも参加されており、経験豊富な人類学者です。色々と、教えていただきました。

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ドゥアラ洞窟65.石器のレプリカ作製中の木村 賛先生(当時、京都大学。その後、東京大学を経て、現在、石川県立看護大学学長)

 ドゥアラ洞窟の発掘調査は、いくら発掘しても、出てくるのは石器と獣骨ばかりで、人骨は出土しません。そこで、赤澤 威先生から、出土石器のレプリカを作製するよう依頼されました。当時の人類学では、学ばなければならないテクニックとして、基本である人骨の観察・計測・接着復元以外に、写真の撮影・現像・焼き付け、X線の撮影・現像・焼き付けと、レプリカの作製が重用視されていました。

 私は、このレプリカ作製の方法は、出発前に、教えを請うていた国立科学博物館(当時)の佐倉 朔先生に懇切丁寧に教えていただいていました。佐倉先生は、私の父と同じ年で時に厳しく時に優しく指導していただきました。

 早速、木村 賛先生と私は、宿舎の地下に机や資材を持ち込み、石器のレプリカ作製を行いました。当然ですが、発掘調査には参加し、その発掘調査の後や休みの日に作製しました。

 以下に、石器レプリカ作製の手順を説明します。

 まず、石器の半分を粘土に埋めます。この作業は、丁寧に行わないとうまく型がとれません。そして、埋め込んだ石器に離型剤として、石けんやシャンプーを水で薄めたものを刷毛で塗ります。これは、レプリカ作製のためにシリコンを使うのですが、そのシリコンと石器が離れやすくするためのものです。

 その後、シリコンをかけます。粘土には、シリコンよりも一回り大きい場所に、石膏が流れでないようにする枠をつけます。この枠は、木村 賛先生が缶を切って作製したものです。

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ドゥアラ洞窟66.粘土に石器半分を埋め込み、シリコンをかけた状態

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ドゥアラ洞窟67.シリコンをかけた上から、石膏を流し込んだ状態

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ドゥアラ洞窟68.型の半分ができた状態。これから、石器のもう半分の型をとる。

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ドゥアラ洞窟69.石器のもう半分に、刷毛で離型剤を塗り、シリコンが流れでないように、粘土で枠を作った状態

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ドゥアラ洞窟70.石器のもう半分に、シリコンをかけた状態

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ドゥアラ洞窟71.石器のもう半分のシリコンの上に、石膏をかけた状態

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ドゥアラ洞窟72.半分ずつ完成した雌型を割った状態。これから、中の石器を取り出す。

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ドゥアラ洞窟73.完成した雌型に、歯科用硬石膏を流し込み、レプリカを作製する。

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ドゥアラ洞窟74.石器のレプリカ。硬石膏のバリがあるので、これをきれいに削る。

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ドゥアラ洞窟75.実物の石器(左上)と石器のレプリカ(右上)

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ドゥアラ洞窟76.木村 賛先生と私の合作でできた石器のレプリカの型。 


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