降って湧いたようなユーロ売りの波に、戸惑っている方々も少なくないかと思います。実は私もその一人ではあるのですが、7月9日と9月6日の安値を結ぶことで描ける下値トレンドラインは、まだ割り込んでおらず、かろうじて上昇の目は残っています。
1.38以上はどうしても追いかけられなかった直観は、結果的に合っていましたが、押し目買いの水準として考えていた1.3550が、このように素通りされた上に、僅か2日で2週間分の大幅上昇を帳消しにしてしまった事実は、無視できません。上昇している下値トレンドラインに接する水準ではもう一度だけ買いを模索しようとは思っていますが、戻り売りを前提としたワンチャンス程度にしか考えられなくなってきました。
ところで、やや唐突ながら今回はドルのファンダメンタルについて少し考えてみました。
特に、対ドルでのユーロ買いが行き過ぎた背景を今一度思い起こしてみると、欧州圏の堅調な経済指標結果と、アメリカ経済指標の冴えない結果が続いたことによるコントラストによって、ユーロが過剰に魅力的に見えたことに加えて、FRBの金融緩和長期化懸念が一層この流れに華を添えたのは事実でしょう。
さらに、現在ドルの動きを支配している要素として、米債の動きが作用し過ぎている印象があります。特にアメリカに関しては一時、デフォルト懸念を抱えただけに、致し方ないのは事実ですが、リスク許容度の観点から考えれば、許容度が向上しても米債は売られる運命にあり、米債の下落だけを見てリスクを煽る論調は、相場観を見失う根源になるかもしれません。
つまり、こうした健全な債券の下落は、良い意味での金利上昇を招き、立派なドル買いのモチベーションになるのは必至です。
これまで、対ユーロでのドル売りが、スイス買いや円買い、金買いの根拠とされてきた側面があり、見れば見るほどリスク回避の流れでしたが、米債の下落が健全な流れであると言われ始めた場合、これらが売り込まれる可能性は大きく、その影響で今度はユーロが売り込まれる可能性も否定できません。
金利の影響はやがて為替で調整されるため、一方的なドル買いにはならないとは思いますが、この1,2か月間で刷り込まれた、金利上昇=債券下落=リスク回避という自動化された思考回路にとらわれ過ぎると、思わぬドツボにはまってしまう恐れがあります。
それぞれの相場の動きには必ず相反する作用があって、初めて金融市場が成り立っていることを忘れず、今そのどちらが背景となっているのかを冷静に判断してゆきたいと、改めて思っているところです。そう考えると今後、米債の下落というリスクを連想させる動きでも、これまでの「ドル懸念によるドル売り」というロジックから、手のひらを返すような「金利上昇でドル買い」といったコメントの逆襲がありそうな気がしています。