ヒヨコ・イン・ザ・ワールド

Fukunosukeとhiyokoが綴るブログ。バリ島旅行記とスペイン旅行記だったのですが、最近は色々増えました。

バリ旅行2006(その11:タートルリリース)

2006-06-29 23:39:23 | バリ旅行2005&2006
■(その11)タートルリリース■


アマヌサに行くにあたり、事前にゲストリレーションにアクティビティ・メニューを
送ってもらいました。その中に、「タートルリリース(海ガメの解放)」というプロ
グラムがあって、とても興味を惹かれました。
そこには、こんな風にプログラムの紹介がされています(概要抜粋)。



「バリでは、毎年沢山の海ガメ達が乱獲、殺戮されています。法規制や取締りの強化
など、政府主導で様々な取り組みがなされてきましたが、残念ながら一向に成果は
上がっていません。“タートルバリ”というNPOでは、2000年以降、この問題に
あたり、独自の活動を続けています。そのひとつが“タートルリリース”プログラム
です。これは、密猟者に捕獲された海ガメをブラックマーケットから買い取り、再び
海に解放するというプログラムです。アマヌサのビーチは、この海ガメのリリース
ポイントに指定されています。海ガメを買い取る資金としてUSD25を寄付していた
だければ、その資金で海ガメ買い取り、買い取ったカメはお客様自身の手で海に放し
ていただきます(ただし、海ガメがブラックマーケットに出回っている時のみ)。」




へー、なんだか面白そう。カンボジアのお寺で、かごの鳥をお金を払って空に放して
やるというのがあるけど、ちょっと似ているかも。観光客相手のショーかも知れない
けど、やってみようか。と言う事で、ゲストリレーションに申込みのメールを送りま
した。



アマヌサに着くと「海ガメ、入手できます。」との報告。翌日、ビーチで寝そべっ
ていると、ビーチボーイから、"Your turtle is ready."と声が掛かりました。















「うわぁ、おっきい!」理由もなく手のひらサイズの小ガメを想像していた僕らは仰天。

だけど、見るからに元気がなく弱っている感じ。NPOの人にその事を言うと、
「うん、この海ガメは、捕らえられてから10日間、水も食べ物も与えられていな
いんだ。でも、海ガメはタフな生き物だから、きっと大丈夫。」


「そうなんだ...」


「甲羅のここを見て。傷があるね。これは密漁されるときに、ガン(モリ?)で
やられた痕なんだ。それから、両前足に開いている穴。これは、ここに紐を通して、
縛り上げておくために穴をあけられちゃったんだ。」


「うわ、ひどいね...、かわいそうに。」



本当にひどい目に遭ってきたということは、すぐにわかりました。これが単なる
観光客向けのショーではなく、大変に真面目なプログラムであることも。







「さぁ、海ガメを海に返してあげましょう。一緒に持って。」

そうは言われても、こんな大きな海ガメに触れるのも持つのも初めて。
どうしてもおっかなびっくり、腰が引けてしまいます。







何とか水打ち際まで運んで、砂浜に下ろすと、手前の一匹は、力を振り絞って海に
向かって進んで行きます。だけど、後ろの一匹は、なかなか動くことができません。

「ガンバレ! ガンバレ!」家内は励ましています。







最初の一匹は、何とか自力で水辺にたどり着きました。彼(彼女?)の目には、自分を
捕まえて、ひどい目に遭わせた人間が、また何故か自分を海に戻そうとしている姿が
映っていたはずです。こんな複雑不可解な行動をする人間を、どんな思いで見ていた
のでしょう。








もう一匹は、ダメみたいです。一人では這って行く気力がないみたい。だけど、
家内が甲羅を押して、顔を水につけてやると、ようやく、ひとかき、ふたかき、
動き出しました。





先の一匹はもう行ってしまいました。もう一匹も、ゆっくり、ゆっくり、海に向かって
泳ぎだします。






真ん中の染みみたいなのが、遅れていった一匹の影です。
「ガンバレ、ガンバレ!」







南から北に流れる潮に流されながらも、沖へ、より深い海へと進んで行きます。






ようやく、海ガメの影が見えなくなり、とりあえず波に洗われて浜に打ち上げ
られる心配はなくなりました。後は彼らの命の力次第。ガンバレ。
NPOの人は、カメ達に向かって"Never come back!"と叫んでいました。
本当にそうあって欲しいものです。







夜、部屋に戻ると、プログラム参加の記念品が置いてありました。放してあげた
海ガメ達は、今頃何処にいるのかな。人間のいない、遠い所まで行けるといいね。



タートルリリースプログラムは、密漁そのものを無くす事はできません。かえって
密猟者が仕事に精を出すだけだという意見もあります。しかし、他にどうしようも
ない状況において、確実に一つの命を救う方法であることも事実。


実際に自分で海ガメを放し、失われていたかも知れない命が海に帰っていく様を
みると、これはこれでとても意味のある事だと思えてきました。またアマヌサに行く
機会があれば、もう一度参加したいと思います。



*その12へ続く