『週刊ダイヤモンド』8月19日合併号－生成ＡＩで四人に一人の雇用が失われる、日本を含む先進国が深刻

ダイヤモンドの合併号はかなり良かった。
「四つの厳選IT資格」は検証が必要ではというところだが
「海外の高収入&ホワイトな資格」は面白い着眼点。
他には格安でパイロットになれるという話は重要だろう。
正直、資格偏重は間違っているとは思うのものの。。


さて、マーケットに関しては田中泰輔氏の寄稿が秀逸で、
通常の株式特集よりも遥かに鋭いので強力にお薦めしたい。
氏の指摘する通り日本株はほぼ円安と米国株で説明できるもので、
現下の米の高金利と逆イールドから景況悪化と円高が懸念されるとの主旨。
完全に同意できる分析と、確信を持って断定出来る。

合併号の最後に読者からの声が載っているが、
いかにも初心者の投資家が株式投資が楽しくて仕方がないとする話が出ている。
これこそ明白な割高の証左であり、かつてジョセフ・ケネディが売りに走った時と
酷似している危険信号である。直近の二週間も改めて証明されたではないか。


このエントリーのサブタイトルは23頁の「数字は語る」より。
榎並氏は注目すべき論考を何度も出している方だが、
ゴールドマンサックスのレポートを引いて
日本を含めた先進国の方が生成ＡＩで雇用が代替される率が高く、
24～25％の労働者の雇用が失われる可能性があるとしている。
他方、創出される雇用もあるとのことだが、デジタル化の進む経済は
極僅かな人数で付加価値増を独占することが計量分析から分かっており
はっきり言って過剰な期待は禁物であると思う。

『週刊ダイヤモンド』2023年8/12・19合併特大号 (資格＆副業＆学び直し)

ところで、最も問題が大きいのは佐藤優氏の連載。
ウクライナからの穀物輸出合意において
欧米側は貧困国に僅かな穀物しか届けていないと
ロシア側の主張をそのまま繰り返すプロパガンダの代弁となっている。

挙げられている貧困国は人口の少ないアフリカの国ばかり、
中国に比べたら10分の1にも届かない小国だから
「率」で語ることがそもそもロシアのプロパガンダの一環である。
記事中にもあるロシアの要求項目を見れば、
ロシアが貧困国の窮状を利用して自らの交渉手段としているのは明白だ。

また、ウクライナからの穀物輸出が困難になった元凶は
愚かなプーチンによるウクライナ大規模侵攻であり、
プーチンの存在こそが穀物輸出を妨げた大元である事実に一言も触れない始末。

因に氏は、軍事分析で有名なJSF氏から完全にイジラれる対象になっており
ロシア語のできないトッドやミアシャイマーを称賛する自己矛盾を嘲笑されている。
（編集部は両者の誌上対論を検討されると良いのでは）

若い読者は騙されることなく、これがロシア式のプロパガンダなのだから
ロシアでまともな経済活動が難しいことをよくよく理解すべきである。

ロシアは強権的で、一度手に入れたものは返そうとしないこと、
法律は権力側が利用して道具とするためにあることは
以下の本で詳細に説明されているからこちらを読んだ方が有益だ。

▽ まだ著述に慣れていない印象だが、対ロ外交において注目すべき鋭い考察

『ロシアの眼から見た日本 国防の条件を問いなおす』（亀山陽司，NHK出版）

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次週は東洋経済に注目、ナイトタイム特集は竜頭蛇尾の気配濃厚だがホテルの特化戦略を見ておきたい。

▽ ただ、富裕層インバウンド市場をどうして分析しないのか。。

『週刊東洋経済』2023年8/26特大号 (沸騰するインバウンド　復活するナイトタイム)

▽ ダイヤモンド特集は手取りの減る日本人の苦境が背景（安倍以降は実質賃金急落なので実態はもっと深刻）

『週刊ダイヤモンド』2023年 8/26号 (手取りが増える大全)

▽ エコノミストでは遂に、「老朽マンション」の特集が組まれてしまった！

『週刊エコノミスト』2023年 8/29号【特集:空き家＆老朽マンション】 週刊エコノミスト編集部

重要なのは「タワマンの修繕積立金 “異常に安価”なカラクリ 長期では急激な上昇必至」。
（矢張りこうなるだろうと思っていたが、予想以上に深刻になるかも。。）