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北方領土問題で何を言っても叩かれる日本政府 - 中国中央テレビと産経新聞が何故か同じ論調

2010-11-02 | いとすぎから見るこの社会-対アジア・世界
メドベージェフの北方領土訪問に関する報道を見る限り、
日本では根本的に「外交」への誤った理解が多過ぎると感じる。

声高に喚けば相手が折れてくれると言わんばかりの
幼稚な強硬論を平気で垂れ流す人々を信頼してはならない。

「日本に可能な選択肢は限られている」と分析した
日本経済新聞が最もまともである。
日本にはエネルギー資源確保という新たな弱みもある。

ロシアとはどのような相手なのか、何故歴史に学ばないのだろう。
約束を守らないし、国益追求のためには如何なる手段をも用いる国である。
日本のように情緒的なお人好しではない。

現実問題として彼らには軍事力とカネしか効かない
日本に何を言われても蚊に刺された程度でしかない。

もし日本が外交を理解しているなら、
中露のいずれかと妥協してでもこの両者の関係をこじらせようとするだろう。
(朝鮮戦争で分かるように、もともと中露は仲が悪く相手を信頼していない)
そのような器用さがあるかどうかは別として。

▽ ロシアのリアルポリティークは筋金入り。人権など歯牙にもかけない。





『コーカサス国際関係の十字路』(廣瀬陽子,集英社)


「ロシアとの経済協力を再検討」仙谷長官(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101102-OYT1T00501.htm

”仙谷官房長官は2日午前の閣議後の記者会見で、ロシアのメドベージェフ大統領が
 北方領土の国後島を訪問したことに対する日本の対応について、「今、適切な措置
 をどう考えるか検討している。シベリア、サハリン、北方4島も含めた経済開発の
 協力を軸にして日露関係が進んでいるが、この種の行動があった時に何を効果的に
 なし得るか、改めて考えないといけない。二者択一ではない」と述べ、経済協力の
 あり方を再検討する考えを示した。
 菅政権の対露外交に批判が出ていることについては、「菅政権になってから弱くな
 ったという話ではなく、ここ数年、日本側のアプローチもそれほど強かったとはみ
 ていない」
と反論した。
 片山総務相は「日本国内の対露感情をかなり変えることになった。ロシアにとって
 得策だったのか」
と批判した。玄葉国家戦略相も「わが国の原則的な立場とは相い
 れない。国民感情を逆なでし、大変遺憾だ」と述べた。自見金融相は「北方4島は
 第2次大戦後、ソ連軍が進駐し、軍事的に占拠された。大統領が来たことは大変遺
 憾で、強い怒りさえ感じる」と語った。”

 → 意外に日本政府側からは正論が多いのですが
   それでも国内外から叩かれざるを得ません。

   自民党政権も大してロシアに圧力をかけられなかった。
   ましてや原油高で経済が潤い、すっかり自信をつけた
   今のロシアに日本の言い分が通る筈はない。


露大統領が国後訪問 実効支配強化、鮮明に(産経新聞)
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20101102079.html

”【モスクワ=遠藤良介】ロシアのメドベージェフ大統領は1日、旧ソ連・ロシアの
 国家指導者として初めて、日本の北方領土を訪問した。大統領は国後島でインフラ
 (社会基盤)の整備状況を視察し、今後も政府の積極的な資金投下を続ける考えを
 表明。北方領土交渉を棚上げし、実効支配を強化するとの意思を鮮烈に示した。
 沖縄・尖閣諸島近海での中国漁船衝突事件に続き、日本の外交姿勢が根本的に問わ
 れる事態
だ。
                   ◇
 インタファクス通信などによると、大統領は訪問先のベトナムから空路、極東ユジ
 ノサハリンスク経由で国後島に入った。同島の中心地の古釜布(ユジノクリリスク)
 近郊にある地熱発電所や水産加工場、建設中の港湾施設などを視察。「ここの生活
 はロシア中央部と同様に良くなる。資金を投入することが大事だ」と述べ、199
 1年のソ連崩壊後に進んだ人口流出を食い止めるべく発展を加速させる決意を示し
 た。
 北方領土訪問の計画は9月末、中国漁船衝突事件で日中関係が悪化していた最中に
 浮上した。尖閣をめぐって日中関係が悪化しているすきを突き、圧力を強め出方を
 探っている形だ。

 大統領は今月中旬、横浜で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出
 席するために訪日する予定で、そこでの日露双方の出方が注視される。
 北方領土をめぐり、ロシア側は現在「いかなる真剣な交渉も行われていない」(外
 交筋)との認識でいる。他方、千島列島(クリール諸島)と北方四島では2007
 ~15年の「社会経済発展計画」(計画投資額179億ルーブル=約468億円)
 に基づく大規模なインフラ整備が進む。領土問題をめぐる日露関係の構図は根本的
 に変化しつつある。
                   ◇
  ■首相「訪問は遺憾」
 菅直人首相は1日夜、メドベージェフ露大統領の北方領土訪問について「北方四島
 はわが国固有の領土という姿勢は一貫している。それだけに訪問は遺憾だ」と語っ
 た。首相官邸で記者団の質問に答えた。前原誠司外相は同日、ロシアのベールイ駐
 日大使を外務省に呼び抗議した。これに対しロシアのラブロフ外相は、日本の抗議
 は「受け入れられない」と反発。ボロダフキン外務次官が河野雅治駐露大使にロシ
 ア側の立場を説明した。〔以下略〕”

 → ロシアの外交は米中とよく似ていて、
   所詮は国内問題の派生に過ぎない。

   日本に及ぼす影響などさして気にしないのが実態だ。
   「ロシア国内の選挙目当てパフォーマンス」
   とする分析が最も正しい。


▽ 日本国内の外交論は昔から「独善」と「対外過敏」の二極しかない。





『日本の外交―明治維新から現代まで』(入江昭,中央公論新社)


「民主党は政権失う可能性、素人外交」中国TV(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101102-OYT1T00404.htm

”【北京=佐伯聡士】中国中央テレビは1日夜、報道番組「東方時空」で、ロシアの
 メドベージェフ大統領が北方領土の国後島を訪問したことに関する特集を放映し、
 「(日本の)民主党は政権を失う可能性がある」とする同テレビの馬暁霖特約評論
 員の論評を伝えた。
 馬氏は「この件を通して、菅政権が外交の素人であることがさらに証明された。こ
 の1年余り、民主党政権は普天間基地のため米国との関係が行き詰まり、領土問題
 をめぐりアジアの隣国との関係が混乱した」と批判。また、「北方4島をめぐって
 ロシアとの関係が徹底的に損なわれれば、すでに30%台に落ち込んだ支持率の回
 復は非常に難しくなる」「米国を怒らせ、アジアの国との関係が行き詰まった後、
 ロシアとの交渉の余地が失われた場合は、かつてないほど孤立し、民主党が早めに
 政権を失うことになる」などと指摘した。”

興味深いのは、日本政府に敵対的な中国メディアと
民主党政権を快く思わず批判を強める産経新聞が
同時に菅政権の外交政策を叩くという「意想外のシンクロ」である。
両者ともに不本意なことだろう。

尖閣諸島で俄に日米の連携が強まったのに不満を持った中国メディアが
喜んで日本の新たな苦境を囃しているという図式である。
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