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日本経団連の三村明夫副会長「京都議定書は外交上の失敗」- 業界益を国益と錯覚し、環境シフトを阻害

2009-05-29 | いとすぎの見るこの社会-地球環境を考える
新日本製鐵は確かに偉大な企業で、
世界最高水準の高品位鋼板は日本の誇りです。

しかし同時に、国内鉄鋼業の全盛期は既に過ぎ去ったこと、
韓中印の猛追撃を受けて苦しい競争に巻き込まれていること、
各地でリストラを行わざるを得ず収益も低迷していること、
そして雇用維持力の顕著な低下、全て否定できない事実です。
(正社員の採用は減少、非正規労働力を使い捨て)

それでも過去の栄光が脳裏にあるので、
今回のような「勘違い発言」が出てしまうのです。

ここで事実をはっきり書きましょう。
国内鉄鋼業の利益と日本の国益は、全くの別物です。
温室効果ガス削減に真剣に取り組まない企業は、
市場からの退出を宣告される運命にあります。

日本の鉄鋼業は、常に技術革新と経営革新を続けない限り、
世界市場で生き残ることはできません。
(グローバルニッチの日本製鋼所のような例外はあるけれど)


経団連:「京都議定書は失敗」副会長が政府批判(毎日新聞)
http://mainichi.jp/life/money/news/20090523k0000m020100000c.html

”2020年までの温室効果ガス削減目標(中期目標)設定に向けた議論が大
 詰めを迎える中、経済界が政府に対する批判と牽制を強めている。政府の、
 「地球温暖化問題に関する懇談会」のメンバーを務める日本経団連の三村明
 夫副会長(新日本製鉄会長)は22日、東京都内で講演し、90年を基準年
 に二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指すことを決めた京都議定書を、
 「外交上の失敗だ」と批判。政府が6月に決める中期目標は、慎重に検討す
 べきだとの考えを示した。
 中期目標を巡っては、経団連が12日、政府が示した「90年比4%増」か
 ら「25%減」の6案のうち、最も緩い「4%増」の支持を表明。これに対
 し斉藤鉄夫環境相が「世界の笑いものになり、国際社会での地位をおとしめ
 る」と批判していた。
 この環境相発言に対し、日本鉄鋼連盟の進藤孝生環境・エネルギー政策委員
 長(新日鉄副社長)は22日の会見で、「たとえ世界の笑いものになろうが、
 国民に過剰な負担にならないように国益を主張するのが行政責任者の役割だ」
 と厳しく反論。高い削減目標の設定を主張する環境省などを「国益に沿わな
 い」と牽制し、国際競争力や経済の実態に見合った現実的な目標の設定を求
 めた。【三沢耕平、大場伸也】
 毎日新聞 2009年5月22日 21時34分”

 → 国益を掲げて軍事費を予算から分捕ろうとした
   かつての帝国陸軍の姿を彷彿とさせます。

   「国民に過剰な負担」というのは嘘で、
   「我々鉄鋼業への過剰な負担」が本音です。
   つまりここには業界益と国益の混同があります。

   鉄鋼業が行うべきは、日本の高い効率化技術を
   排出権取引もしくは排出量取引で収益化し、
   「途上国での鉄鋼生産の効率化が必要」
   と強く主張して国際社会と賢く交渉することです。

▽ 環境問題は、既に経済戦略と表裏一体です(=無策な愚か者は不利)





『排出権取引とは何か』(北村慶,PHP研究所)


温室ガス:経団連の「4%増」支持に注文 駐日英大使(毎日新聞)
http://mainichi.jp/life/money/news/20090528k0000m020066000c.html

”ディビッド・ウォレン駐日英国大使は27日、東京都内で開かれたアジア調
 査会主催の講演会で、2020年までの日本の温室効果ガス削減目標(中期
 目標)で政府が検討する6案のうち、日本経団連が最も緩い「90年比4%
 増」を支持したことについて「この目標では、国際交渉で日本の評判を傷つ
 けることは間違いない」と批判
。政治主導でより高い目標を掲げるよう訴え
 た。
 大使は、英国政府が同国の経済団体の提言を受けて、同34%減の中期目標
 を策定したことを紹介。「経団連が支持する『4%増』は間違ったシグナル
 を送ることになる」
と指摘した。そのうえで「日本は技術革新の経験を生か
 し、政策転換する時だ。政治のリーダーシップが求められる」と述べ、麻生
 太郎首相の決断に期待を表明した。【柳原美砂子】
 毎日新聞 2009年5月27日 20時20分”

 → 案の定、無策と保守退嬰ぶりを見透かされ、
   言われるべくして言われた一言です。
   日本経団連には国際情勢の正確な見通しや
   自己革新力が欠けていると言われても反論できません。


経済同友会:温室ガス削減目標「7%減」案を支持(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090519k0000m020115000c.html

経済同友会は18日、地球環境問題に関する提言書をまとめ、2020年の
 日本の温室効果ガス削減中期目標について、政府が示す6案のうち「90年
 比7%減」が妥当とする考えを示した
。日本経団連は最も緩い「4%増」を、
 日本商工会議所は「1%増~5%減」をそれぞれ支持しており、財界3団体
 で意見が分かれた。
 政府の検討委員会は4月、4%増▽1%増~5%減▽7%減▽8~17%減
 ▽15%減▽25%減--の6案を提示した。同友会は、国連の「気候変動
 に関する政府間パネル」(IPCC)が示した「先進国で25~40%の削
 減が必要」との指摘を重視。「簡単ではないが、国民全体が責任を持って努
 力することが不可欠」「持続可能な成長のための投資でもあり、積極的な姿
 勢で取り組むべきだ」
と主張している。
 桜井正光代表幹事は、19日にも斉藤鉄夫環境相に提言書を提出。近く麻生
 太郎首相にも面会を求め、米国や欧州にも同水準となる目標設定を促すよう
 働きかける。【三沢耕平】
 毎日新聞 2009年5月19日 0時52分”

加盟企業の所属業界の違いもあるのでしょうが、
経済同友会の方がより正確に事態を見通しています。

「Yes,but」(賛成だが、条件がある)の交渉でないと
世界に通用しません。愚か者扱いされて孤立するだけです。
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