英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

王位戦リーグ最終局 ~つまらない規定~

2015-05-19 17:06:20 | 将棋
昨日(18日)、王位戦リーグの最終局が行われた。
【白組】
佐藤康光九段(4勝1敗)○-●千田翔太五段(2勝3敗)
菅井竜也六段(4勝1敗)○-●横山泰明六段(2勝3敗)
伊奈祐介六段(0勝5敗)●-○松尾歩七段(3勝2敗)
 この結果、佐藤九段と菅井六段が4勝1敗で並び、両者のプレーオフへともつれ込んだ。他の4名は陥落。
 (今期より、リーグの順位決定規定(優勝、残留など)が変わっている。詳しくは後述)

【紅組】
木村一基八段(3勝2敗)○-●広瀬章人八段(3勝2敗)
山崎隆之八段(3勝2敗)○-●阿部光瑠五段(1勝4敗)
田村康介七段(2勝3敗)●-○佐々木勇気五段(3勝2敗)
 広瀬八段、木村八段、山崎八段、佐々木五段の4人が3勝2敗で並んだが、規定により広瀬八段が紅組優勝、挑戦者決定戦に進出、残留は山崎八段となった。(詳しい状況はこちら

 パッと思ったことは、「紅組の3勝2敗の広瀬八段が決定戦進出が自動的(強制的)に決まったのに、白組の4勝1敗のふたりがプレーオフを勝ち抜かなければならないの?」であった。しかも、木村八段(前年度挑戦者)は広瀬八段に勝ったというのに、優勝やプレーオフどころか、陥落してしまった。

 広瀬八段には申し訳ないが、
「勝ち抜いた」と言うよりは、「抽選勝ち」のイメージしかない。

 今期より改正された「各組の優勝、残留について」であるが、
「リーグ戦の優勝者はリーグ戦勝敗を優先とし、同星で並んだ場合、
(1)4勝1敗で並んだ場合、該当者が2名・3名に関わらずプレーオフを行う。<3名の場合は、前期成績(前期リーグ勝星>前期予選勝星)でシード者を決め、1回戦は残留決定戦を兼ねる)。
(2)3勝2敗で並んだ場合、該当する直接対決の成績>前期成績(前期リーグ勝星>前期予選勝星)で優勝者・残留者を決める。それでも差のつかなかった場合には決定戦を行う」

 「4勝1敗で並んだ場合、該当者が2名・3名に関わらずプレーオフを行う」…三者同率の時の下位の頭ハネがない点は評価できる。
 ところが、3勝2敗で並んだ場合が、ややこしい。しかも、ややこしいだけでなく、強引に優勝決定させてしまうという暴挙により、非常に納得のできないものとなってしまった。
 先にも述べたが、そもそも、3勝2敗というぬきんでた成績でないにも拘らず、プレーオフを行わないことが、非常におかしい。
 そのため、他の同率者との直接対戦成績や昨年度の成績などを照らし合わせて1名を選出するのであるが、この微妙な判定基準により、優勝になるか、リーグ陥落となるかが、他者の成績次第となってしまう。
 木村八段を例にとると、広瀬八段に勝った場合、
①.○山崎-阿部●、○田村-佐々木●の場合……3勝2敗の4者(木村、広瀬、山崎、田村)の直対関係から、木村八段が優勝、(広瀬八段残留)
②.○山崎-阿部●、●田村-佐々木○の場合……3勝2敗の4者(木村、広瀬、山崎、佐々木)の直対関係から、木村八段は陥落(広瀬八段優勝、山崎八段残留)
③.●山崎-阿部○、○田村-佐々木●の場合……3勝2敗の3者(木村、広瀬、田村)の直対関係から、木村八段が優勝(広瀬八段残留)
④.●山崎-阿部○、●田村-佐々木○の場合……3勝2敗の3者(木村、広瀬、佐々木)直対関係は三つ巴。前期成績は木村挑戦、広瀬リーグ4勝、佐々木予選敗退より、木村八段が優勝(広瀬残留)
という、かなり有利な状況であったが、四分の一の外れクジの②を引いてしまった。まさに、貧乏クジ!……≪そんな阿呆な!≫であった。
 同じく3勝2敗で陥落の佐々木五段、残留した山崎八段も釈然としないモノが残ったであろう。

 とにかく、最終局3局の結果の目は8通りあるが、その勝敗の組み合わせにより、優勝、残留、陥落が入れ替わるという状況であった。(広瀬八段が勝てば、すんなり優勝は決まるが、残留は山崎-阿部、田村-佐々木戦の勝敗の組み合わせで決まる)
 詳しい状況は、中継ブログの「各組の優勝、残留について」で、丁寧に紹介されている。(なかなかの労作だと思う)
 それに、3勝2敗の同率で並ぶ可能性のあった木村、広瀬、山崎、田村、佐々木のうち、山崎八段、田村七段、佐々木五段は挑戦の目がなくなっていて、最終局に勝っても、山崎八段、田村七段は50%で陥落、佐々木五段は75%で陥落というのも、如何なものだろうか?


 結果的に、4勝1敗で佐藤九段と菅井六段のプレーオフとなった白組も、佐藤九段、菅井六段の勝敗の組み合わせによって残留の顔ぶれも変わっていた。
 特に、1敗だった両者がともに敗れた場合、5者同率の可能性もあった(5者同率の場合は千田五段の優勝、四者同率の場合は佐藤九段の優勝)。


 2敗での同率は複数局必要である考えられる。今回の規定変更は、日程上の都合か、対局数を増やさない為か……
 とにかく、規定変更でリーグ戦の面白みが減少したのは間違いない。千日手指し直しの、木村八段-広瀬八段の熱戦も、他の対局が終了した時点で「広瀬優勝」が決定していたのだから(木村八段は「勝っても陥落」が決定していた)。
 もし、対局料の削減が目的だとしたら、方向性を間違えている。対局料を減らしたいのであれば、「予選の参加資格制限を設ける」とか、「予選1、2回戦は対局料なし」にすればよい。

 
 

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8 コメント

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わかりません (zoran)
2015-05-21 23:11:30
英さん,こんばんは。
この件については,英さんの説明や中継ブログの説明を読んでもよく分かりません。というより,ちゃんと読んで理解しようという気力が湧きませんし,棋力も足りません。(苦笑)
前期のリーグ表を見ると順位があったのに,今期は順位がないのですね。順位をなくし,複雑な規定でリーグ優勝者や残留者・陥落者を決めるのですね。プロになるのも,順位戦の昇級・降級も,順位が全ての将棋界なのに,なぜ「同勝星の場合は,順位の上位2名でプレイオフ」としないのでしょうね?その方がすっきりするし,プレイオフも1局で済むのに。で,プレイオフを想定して,対局数を予定し対局料や賞金を決めればよいのでは,と思います。
棋戦によって挑戦者の決め方を変えて特色を出そうとするのはよいと思いますが,王位戦はリーグを2つに分けるせいで1リーグの人数が少数になり,その上実力伯仲ですから勝星が並ぶ可能性が大きくなるわけで,この方式自体にいささか無理があるように感じるのですが,どうなのでしょう?
とにかく,前期の結果や予選の結果が,順位決め以外で次の期(今期)に影響するのは納得できません。理解が間違っていたらすみません。
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ほぼ同感 ()
2015-05-22 00:09:45
zoranさん、こんばんは。

 zoranさんの解釈はほぼ合っていると思います。
 私も、連盟の人間ではないので、本当のことは分からないのですが、「対局数を減らせるところは減らす」というのが連盟の基本方針のようです。
 ならば、それこそ、同率の場合、順位を優先させればいいと思うのですが、1位、2位、3位4名というリーグ構成なので、成績、順位とも同じというケースが生じやすいという事情があります。(かなり過去ですが、1組5名で行われ、同成績が生じやすい状況でした。それを解消するため、1名増やしたのですが、それでも、起こりやすい状況はあまり解消されませんでした)
 1敗と2敗で方式が違うのは、おそらく…「4勝1敗で頭ハネは気の毒」、「3勝2敗なら、規定で頭ハネされても文句は言うな」ということなのでしょう。
 それに、2敗同率の場合は、3勝2敗が4名や5名という場合もあり得、順位優先で2名に絞ろうとしても、上述したようにうまくいかない可能性がある。なので、この際、乱暴ではあるが、今年の規定でプレーオフなしの順位決定システムを考案したと考えられます。

 個人的には、少人数で順位優先、あるいは、直接対決の勝敗優先は、1敗すると挽回が難しいので、優勝者決定は、同率なら無条件で再戦が嬉しいです。
 直接対戦勝敗優先の場合、挽回が難しい理由は、
http://blog.goo.ne.jp/ei666/e/92e6937dc3ea2c7603a7e4917c9a256d
の、女流王位戦の項で述べてあります。

 頑張って、規定を考えたのだとは思いますが、「失敗」だったように思います。
 本戦や決定リーグの肝心なところで対局数を減らすして面白くなくなるより、1次予選段階で対局数を減らす(参加資格の制限)か、予選1回戦の対局料を減らすべきだというのが、私の主張です。
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勝負師だから (かみしろ)
2015-05-26 09:13:25
これなら同率の時はじゃんけん、の方がまだ納得いくんじゃないかしら。
プレーオフだけ非公式戦扱いの30分切れ負けのトーナメントにするとか。
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がっくりとしか ()
2015-05-26 15:25:22
かみしろさん、こんにちは。

>これなら同率の時はじゃんけん、の方がまだ納得いくんじゃないかしら。
>プレーオフだけ非公式戦扱いの30分切れ負けのトーナメントにするとか。

 まだ、その方が良いような気がします。
 でも、タイトル挑戦がらみが、予選の1回戦よりも軽い扱いというのも納得できないので、通常以上に盛り上げるべきだと思います。
 本文でも述べましたが、対局数や対局料を減らすのが目的なら、予選参加資格を厳しくすべきですね。

 木村八段は状況を知らず、感想戦終了後に周囲に尋ね、ダメ、しかも、陥落と聞いて、がっくりしたようです。
 競争相手の広瀬八段に勝ち、他の二局の絡みで4分の1しかない悪い目が出てしまった木村八段、気の毒でした。
返信する
今回の規定の変更に付いて (kazutoyo0626)
2015-05-29 11:56:37
私も結果に対して違和感があり、
腑に落ちないものがあったので中継ブログを読み直してみました。
白組は伊奈さん以外の5人が3勝2敗で並ぶ可能性もあって、
その場合はお互いの勝敗数も全て一緒なので、
前期の成績に迄遡って千田さんがリーグ優勝になるみたいでしたね。
結果的には佐藤9段と菅井さんのプレーオフになりましたが、
それ以外の可能性に対する結果も、
概ね納得出来る範囲だったように思います。
次に紅組ですが、広瀬さんが負けた場合4通りの可能性があり、
その内の3つまでが木村さんリーグ優勝、広瀬さん残留というものでした。
唯一山崎さんが勝って、佐々木さんが田村さんに勝った場合のみ、
広瀬さんリーグ優勝、木村さん陥落という事で、
その確率の低い可能性が現実の結果となった訳ですね。
この違和感は何なのでしょうね?
白組5人同星の場合前期リーグ優勝の千田さんが勝ち残るのに、
前期挑戦者だった木村さんは、リーグ優勝どころか、
リーグ陥落なのですから。
完全に公平なルールというのは無いと思いますが、
今回のこの釈然としない改正は、
改悪と言われてもしょうがないような変更だったと思います。

棋士側としては、渡辺棋王みたいに、
「運に左右されたくなかったら4勝以上しなさい
って事なんでしょうね。」
とあっけらかんとして受け入れるのが、
精神的に一番楽なのでしょうが、
それでも当事者の木村さんにすれば、
そんな風に割り切れるものではないように思いますね。
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重い結果の分かれ目のはず ()
2015-05-29 17:29:43
kazutoyo0626さん、こんにちは。

>紅組ですが、広瀬さんが負けた場合4通りの可能性があり、その内の3つまでが木村さんリーグ優勝、広瀬さん残留というものでした。

 ええ、木村八段は千日手指し直し局を勝ったというのに、4本のうち1本しかない外れクジを引いてしまい、陥落という結果でした。
 しかも、本人が全く関与できないくじ引きでした。これなら、まだ、4人が自分でくじ引きをした方が、ましでした。

 渡辺棋王の「運に左右されたくなかったら4勝以上しなさいって事なんでしょうね」という考え方は、なるほどとは思いますが、やはり、割り切れないですよね。
 くどいようですが、挑戦者決定戦進出やりーぎ残留に関わる重要なことを、抽選みたいな規定で決定してしまうことは、ばかげていると思います。
 対局数を減らすのなら、予選の段階で絞るべきだと思います。
返信する
挑戦者は広瀬八段 (岡本哲)
2015-06-09 03:44:09
 6月8日の挑戦者決定戦の結果は広瀬八段の勝利でした。

 菅井六段後援会会員にとっては残念な結果でした。
ルールのおかげで佐藤九段へのリベンジができたのがせめてものなぐさめです。
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快刀対妖刀 ()
2015-06-09 16:44:07
 岡本さん、こんにちは。
 肉を切らせて骨を断つ菅井六段と相手の太刀を受けながら間合いを計り一気に切り込んでくる広瀬八段。快刀対妖刀の一戦は、馬を作り合う力戦で大熱戦になりましたが、終盤、広瀬八段の妖気を切り裂き切れなかった菅井六段が力尽きた感がありました。
 菅井六段は残念でしたが、この悔しさを昇華して、もう一段高みに登るような気がします。
 菅井六段が小学5年の時、準決勝で勝ち将棋を落とし、悔しさを必死にこらえる姿を今でも覚えています。
 翌年もベスト4に勝ち残り、準決勝を勝ち、決勝に進んだのも嬉しい記憶です。
 挑戦権を争った広瀬八段、菅井六段、佐藤康九段、山崎八段、木村八段、松尾七段、千田五段、誰が挑戦してきても大変だと思いましたが、広瀬八段ですか……手ごわいですね。頑張ります(私が頑張っても関係ないのですが)。
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