英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2024王位戦 第1局 藤井王位-渡辺九段 その6

2024-07-15 10:53:56 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」


 この両図は、下図の△4七角に対して、玉を下に逃げたか上方に逃げたかの違いで分かれた兄弟図と言える。
 両図とも、先手玉にも後手玉にも詰めろが掛かっているが、手番を持っている先手が後手玉を詰ませば勝ち←かなり当然。
 両図とも評価値(勝利確率)も共に99%(変化図0は実際には評価値99%と示されてはいないが、下図の△4七角に対する候補手▲3九玉の評価値が99%となっていた)。
 これまでの流れとこの評価値から、“渡辺九段の勝利”は間違いないように思えた。
 しかし、これはAIが示す“評価値が同じ99%”というだけで、実際の“勝ちやすさ”(負けやすさ)は、この両図では相当な違いがある。


(両図を再掲載します)

 この両図では、後手玉を詰ます難易度が桁違いに違うのである(妥当な数値化は分からないが)第13図の方が50倍くらい難しい。
 変化図0は、先に示した▲2一金の他に▲2二銀、▲2二金、そして▲4一同龍など多くの詰み筋があり、2一や2二に金や銀を捨てる変化は直感的に浮かびやすく、その後の詰みも容易である。
 しかし、第13図は詰みは▲4一同龍のみで、龍切りは不安感を伴い、その後の詰みも容易ではない。さらに、▲2一金や▲2二銀や▲2二金なども一見詰みそう。詰ます筋が▲4一同龍しかないならば、渡辺九段なら1分で詰みを読み切るのは容易だが、この状況だったのは不運としか言いようがない。(上記で詰ます難易度を"50倍”と述べたが、状況を加味すると、詰ます難易度は100倍、いや"200倍”かもしれない)
 不詰めの例を上げると、

 変化図3は「その5」で挙げた詰み。「図以下、平凡に▲2二金△1三玉▲2五桂で詰むし、▲2一銀(△同玉なら▲2二金)△1三玉▲2五桂でも詰むし、▲1三銀と気前よく捨てても△同玉▲2五桂△1二玉▲2二金で詰む」と述べたが、変化図3-2では詰まない。6九の馬筋が後手玉の詰み筋を否定している。

 第13図に戻って、この局面から後手玉を詰ます正解手は▲4一同龍のみ。
 △4一同金は▲2二銀以下容易に詰むので、△4一同玉。

 鈴木九段は▲5二金以下の詰みを解説したが、▲3二銀△同金▲5二金△3一玉▲4二金打△2二玉▲3二金△1二玉▲2四桂以下詰む。また、▲3二銀では▲3二金と打って△同金▲3三桂△同金▲4二銀△同玉▲3三歩成△同玉▲3四歩でも詰む。
 変化図0-2より、▲5二金△同金に▲同桂成△同玉▲6四桂(変化図4)を鈴木九段は示していたが、▲5二同桂成りでは▲3二銀(変化図4-2)でも▲3二金でもよい。

 変化図4-2以下△4二玉(△5一玉)▲5二桂成△同玉▲6三銀△同玉▲7五桂以下の詰みがある(▲3二金と打つ筋もほぼ同様の手段で詰む)

 変化図4に戻って、以下△6二玉▲7一銀△6三玉▲7二銀△5四玉▲4五金(変化図5)△6四玉▲5五銀△7五玉▲8五金△7六玉▲8六金(変化図6)で詰む。

 変化図4の局面を頭に浮かべれば、以下の詰みは容易であるが、第13図で1分将棋で、藤井王位相手に千日手局、指し直し局を2日がかりで指し続けた後では、"超”が5つ付くほど難易度が高い。
 まして、他に詰む筋がチラつく局面である。

 冒頭で、《互いの玉に詰めろが掛かっている場合、手番がある方が相手を詰ませば勝ち》と述べたが、他にも《取りあえず、自玉の詰めろを解除しておいて、次に詰ます》という手段もある。
 こういう場合、将棋がもつれることが多いのだが、秒読みの妥協策としてはしばしば用いられる。

 そういうケースを想定した場合、第12図で玉の逃げる時、下方に逃げると受けが困難で、情報に逃げた方が受けが利き易いので、反射的に上方の2七に逃げたのだろう。この時点で、馬の利きを通す△3七歩成が見えても、第13図でそこまでマイナスに作用するなんて、考えなかったのだろう。

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