英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『HERO(2007年映画)』

2015-07-05 21:09:40 | ドラマ・映画
 昨日、『HERO (2007年映画)』が放映された。
 今月18日に封切られる映画の宣伝であることは明白で、それに乗せられるのはシャクなので、観ないつもりでいたが、やはり気になって、9時10分過ぎからではあるが、観てしまった。最初の10分強は視聴できなかったが、再視聴なので問題ないであろう。

 やはり、おもしろい。
 被告の犯行、証人(証言)の嘘を立証する材料などははっきり覚えているので、面白味は半減しているはずなのだが、キャラクターが魅力的で、このドラマの核である主人公・久利生の信念に共感し(“感化”されると言った方が良いかも)、ドラマに引き込まれてしまうのだ。


久利生の信念・信条
・自分の仕事は、加害者に遺族の悲しみや自分の犯した罪の重さを気づかせること
・相手弁護士が蒲生のように敏腕であるほうが、裁判がより精密になり、真実を明らかにできる
・梅林の傷害致死事件の裁判をしているのであって、代議士の花岡の裁判をしているのではない(花岡は単なる証人としか考えていない)
・大物代議士の汚職事件と同じくらい、殺人を犯して逃げた罪は“巨悪”である



巧妙な各要素の絡み
①雨宮の韓国語会話ノート
 雨宮が日常会話や調査するための会話(韓国語)をあらかじめノートにまとめておいたのだが、久利生の変な行動を弁護するため、久利生の人間性・信念なども韓国語に訳していた。
 それを雨宮がトイレに行った時に、久利生が読んで心にグッとくる。
②一見、余計な要素に思えた通信販売
・被害者のフィアンセの部屋に、変な通信販売品が置いてあるのを雨宮が見て、久利生がフィアンセ宅に通っていたことに気づく。
「クヨジャ ノチジマセヨ」…韓国のイケメン検事(イビョンホン)が告げた言葉で、雨宮が大切に思っていた言葉でもある
 「プロメッサ ノミセパラーレ」…雨宮の言葉を受けて、久利生が告げたスペイン語
 お互いに≪はぁ?≫と理解不能だったが、いつものバーで流されていた通信販売の新製品・自動翻訳機をマスターがさりげなく使用し、翻訳。
 翻訳機のディスプレーには、韓国語は「彼女を放してはいけません」、スペイン語は「約束します 放しません」と表示された。でも、ラストのキスシーンはやや短絡的。

 ……韓国で久利生が食べ損ねた“チョングッチャン”も「あるよ」と料理を始めるマスター、相変わらず、さりげない大活躍。

③歯医者の駐車場
 調査の疲労により駐車場で眠りこけてしまう雨宮。彼女がひっくり返らないよう横に座り支える久利生。単なる“いちゃつき”シーンかと思えたが、梅林と花岡の証言の矛盾の証拠が隠されていた

④放火犯
 単なるどうしようもない連続放火犯と思われたが、梅林が犯行現場付近にいた証拠を持っていた


 芯がしっかりしており、ストーリーも緻密で巧妙であった。
 しかし、ひとつだけ不満がある。
 駐車スペースの件で証言の矛盾を突かれた花岡が「わざわざ、こんなつまらん裁判に出向いてきてやっている」と吐き捨てたのに対し、被害者とそのフィアンセの悲しみを力説した(上述の久利生の信念に基づき)。
 非常に心に響く心だったが、更なる偽証の証拠が突きつけられたにもかかわらず、花岡の心には届かず、退廷させられる際「認めんぞ、こんな裁判は」と捨て台詞を吐く。

 花岡が改心しなくても構わないが、梅林の心情がどうだったかは重要なはずだ。
 神妙な顔で久利生の言葉を聞いていたが、花岡の退廷を残念そうに見ていたように感じた。判決を言い渡された時はまた神妙な顔で聞いていた。
 単に“罪状が重い”という悲しみ(悔しさ)のようにも思えたし、判決に“犯した罪を悔いた”ようにも思われる。 まあ、煙草(箱)を踏みつけられたくらいでキレて、殴る蹴るで死に至らしめた非道な被告なので、久利生の言葉で改心するというのも無理があるのかもしれない。
 ただ、最後に検察の仲間が駆けずり回って見つけた証拠画像を裁判の最中に提示して落着というのは、映画の盛り上げとしては正当なのかもしれないが、久利生の信念を尊重するのなら、最後に久利生の熱弁を持ってくるべきなのではないか……と意地悪な突っ込みをしてしまう。
 「ストーリーの序盤から中盤にかけて、他のメンバーのおちゃらけ、ドタバタ劇をちりばめる」のが、『HERO』(映画、ドラマとも)の魅力なのであるが、私はあまり好きではないので、メンバーの活躍が見せ場になるのを突っ込みたくなったのかもしれない。


 映画(2007年版)の後、最新映画の宣伝がされたが、第2シーズンの低落ぶりを思い出してしまった。
 今度の映画では持ち直していることを願う。


【ストーリー】ウィキペディアより
6年ぶりに虹ヶ浦から東京地検・城西支部に異動となった検事・久利生公平はある時、目下離婚調停真っ最中の芝山に代わり、芝山が起訴した傷害致死事件の公判検事を任されることになる。早期に決着がつくと思われていたが、容疑者が一転無罪を主張するという事態に見舞われてしまう。その容疑者を刑事事件無罪獲得数日本一の敏腕弁護士・蒲生一臣が弁護し、冷静な法廷戦術で久利生を追い詰めていく。そんな中、久利生はこの事件が山口県・虹ヶ浦支部赴任時に因縁があった代議士・花岡練三郎の贈収賄事件の鍵を握っていることを特捜部より知らされる。久利生と雨宮は捜査の過程の中で韓国・釜山へ向かいながらも奔走する。

やがて傷害致死事件の裁判は贈収賄疑惑の今後の展開を左右する裁判として全国民の注目を浴びるようになる。花岡の疑惑を何としても証明したい特捜部。互いを守るためにアリバイを工作する被疑者達。大きな事件を前に浮足立つ城西支部の面々。今までに無い危機を迎えた久利生は、それぞれの思いが絡むこの裁判を前に検事生命を掛けた一世一代の大勝負を仕掛ける。
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