英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

世界陸上

2009-09-03 23:45:50 | スポーツ
 いつもながらの「今更ながら」ですが、世界陸上です。
 衆議院選挙が強烈過ぎて、世界陸上なんて遠い過去の出来事のように感じます。私自身の記憶や感動もややぼやけてしまいましたが、よろしければ、お付き合いください。

 ★短距離編
 やはり何といっても、ウサイン ボルトでしょう。別次元の走りでした。9秒58!
 タイソン ゲイの9秒71もすごいタイムなのですが、それを全く問題にしないような走りでした。3位のアサファ パウエルはさらに離された感がありましたが、9秒84は立派なタイムです。やはり、この3人が抜きんでているようです。
 ゲイが完調でなかったのが残念です。とくに、スタートに影響が出たようです。予選でも、スタート直後は、他のランナーに後れをとっていました。後半の伸びは、他のランナー(ボルトを除く)を寄せつけないものがありました。
 もちろん、他の有力ランナーは競うように力を抜いて、余裕を見せようとしていました。しかし、それを差し引いても、ゲイの後半の伸びは良かったです。ただ、ゲイは後半もほとんど力を抜かずに走っていたのは、全力投入の精神ではなく、走りにブレーキをかけると、かえって足の故障に響くからなのでしょう。完調のもと、二人の競り合いを見たかったです。

 決勝も驚きましたが、準決勝も度肝を抜かれました。ボルトは50m過ぎから、力を抜き始め、75mぐらいからは、完全にリラックスして走っています。それでも、他のランナーが離れていきます。準決勝なので、他のランナーが力を抜いているようには見えません(2位のベイリーは多少、力を抜いていましたが)。
 その走りで、タイムは9秒89!。
 日本記録は伊東浩司氏が1998年に出した10秒00。朝原宣治氏は10秒02、現エースの塚原直貴氏は10秒09。
 つまり、ボルトは鼻歌混じりに走って、日本の歴代エースたちが、一生懸命走りベストの走りをしても、ボルトに全く追いつけないことになります。
 この時点で、決勝でボルトが全力で走れば、世界記録の更新は間違いないように思いました。

 ただ、8割の力で走れば、スピードも8割になるかというと、そうではありません。また、速く走ろうと、必死に走れば一番いいタイムが出るかというと、そう単純なものでもありません。たとえば、9割の力で10秒で走った(秒速10m)として、100%で走れば9秒という計算ができますが、実際にはそうはなりません。
 速く走ろうという意識が強いと、余分な力が入って、フォームも硬くなり、筋肉の力がスムーズに推進力に転化しません。力まず、それでいて、筋肉を無駄なくスムーズに動かす、これができたとき、最高の走りとなり、最速タイムが出るのです。
 だから、流して9割で走っても、力みがないので9割5分ぐらいのピードが出てると考えます。
 準決勝の後半、かなり流して走って(見た感じ9割強)9秒89なので、全力で走れば単純に1割弱タイムが縮まって、9秒3ぐらいは簡単に出そうな気がしますが、そう単純なものではありません。

 それはさておき、今回のボルトの次元の違う走りは、そんなクドクドした理屈を吹き飛ばすものだったと思います。今回は、苦手と思われていたスタートも克服してきて、トップクラスの反応速度でした。


 さて、北京五輪のジャマイカの強さを見せつけられた日本のコーチが、その秘密を探ろうと、ジャマイカの練習を視察に行ったそうです。しかし、そこで見た風景は、20~30年前の日本と変わらない練習風景だったそうです。ただ走るだけ、しかも、グラウンドやシューズなど練習環境もよくないそうです。肩透かしを食った気分だったそうです。
 特筆すべきは、ジャマイカの陸連の取り組み方。短距離だけしか力を入れておらず、長距離は見向きもしないそうです。とにかく、素質あるものを見出し、集め、切磋琢磨させる。それだけです。
 ただ、そんな中にも、短距離の理論があるそうで、それは、鍛えれば、ピッチは速くなる。しかし、それには限界があって、人類には一定の壁がある。実際、ボルトとゲイのピッチ数は同じだそうです。つまり、ストライドの差=速さの差なのです。このストライドが素質と考えるそうです。なので、ジャマイカの男子選手はみな大きいそうです。


 さて、日本選手についてですが、ほとんどの選手が自己新どころか、シーズンベストにも及ばないタイムでした。
 何が原因か?

①日本選手権が調子のピークで下降線だったり、故障した
②大舞台で、力が発揮できなかった

 大まかに言うと、この二つだと思っていました。
 ①の場合は、なかなか、そういう情報は表に出しませんから、前日や当日にならないとわからないという場合もよくあります。
 調子がいいという場合、特に、予選は割と余裕を持って通過して、インタビューでも、かなり手ごたえの良いような言葉を発していても、2次予選、準決勝の方がタイムが悪いことがよくあります。
 これは、緊張や興奮で、精神的にも肉体的にも消耗してしまったのではないかと考えていました。夏の暑さ、国外のレースという要素もありますし。

 しかし、原因はそれだけではないようです。
 2次予選、あるいは、準決勝になると、周りが速くなります。自分はベストの走りをしているのに、周りに前を走られる。「おかしい」「こんなはずでは」とか「もっと速く走らないと」と力みが出て、走りが硬くなります。
 国内レースではこういう経験はありません。海外のレースを経験しているとは思いますが、慣れていないのでしょうか?とにかく、そういった状況でも走りが硬くならないメンタル的なトレーニングを重視すべきだと思いました。
 日本人にとって短距離は厳しい種目です。が、せめて、自己ベスト、シーズンベストに近いような悔いのないレースをしてほしいです。
コメント (7)
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