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英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

「全然辛いです」(『旅サラダ』ゲストの旅より)

2024-10-19 09:56:49 | 日記
テレビをつけた直後、「全然辛いです」という言葉が聴こえた。
思わず、ガクッと!(ちなみに、福井弁ではこういう状態を強いられることを、「はぐしをくらう」と言う。私は「はぐしをかく」だと思っていた)

 「全然」は、あとに続く打消しの語や否定的な表現を強調する時に使われる言葉だ。「全然、知らない」「全然、英語を話せない」など。
調べてみると、日本語学においては容認されていないが、《俗語として、肯定の強調として「とても」「非常に」と同様な使い方で用いられる》らしい。
 私見だが、「全然、大丈夫」「全然、平気です」という言い回しがよく使われていて、そこから、《肯定的強調》としても使われるようになったのではと。
 これも、推測だが、上記の「全然、大丈夫」というのは、「辛くないか?」「痛くないか?」という問いを受けて、「全然(辛くないです)。大丈夫です」という意味で、「辛くない」を省略して言ったのが、定着したのではないだろうか。

 『旅サラダ』の「ゲストの旅」コーナーで、岐阜・大垣市~養老町の観光・グルメを中村ゆりさんが紹介する旅レポートで発せられた言葉。
 続けてコーナーを見たが、観光・グルメを的確に伝えていた。偶々、辛さが強かったので発してしまった言葉だろう。

 グルメや旅のレポートは、その場その場の即時の感想を表現しなければならないので、大変だと思う。
 日頃気になるのは、以前も書いたが、「すごい」の使われ方。
 「すごい」は、“甚だしい”、“程度が大きい”という意味の形容詞。時には、“表現できないほど素晴らしい”というような意味で、「すごい!」「すっごい!」とか単独で感嘆詞的に使われることも多い。
 また、形容詞なので後に続ける名詞を“素晴らしさ”や“甚だしさ”を強調する用法もある。用例:「すごい景色」「すごい人」。

 なので、旅レポートやグルメレポートでは「すごい」が頻発する。実際、「ゲストの旅」の後の「海外の旅…バルト三国 ラトビア・リガ」コーナーでは、連発されていた。
 「すごい景色」「すごいオシャレ」とか。……この表現は《形容詞+名詞》なのでOKだと思われるが……
   ………「すごいオシャレ」はダメなような気がする。「オシャレ」は名詞として使われる(化粧などすること)が、形容動詞でもある(“気の利いた服装である”という物事の状態や性質を表現している)。「すごいオシャレ」の場合、「おしゃれだ」という形容動詞である(たぶん)。
 この形容動詞というのがくせ者でややこしい(まぎらわしい)。
 例えば「きれい」は形容動詞、「美しい」は形容詞。(”きれい”は「きれいだ」の語幹で、終止形は「きれいだ(きれいです)」で、“だ”を省略して語幹のみで使われている)
 形容動詞の大まかな見分け方は、「~だ」という表現が成り立つかどうか。
 (実は、「名詞+だ」と「形容動詞」の区別がつきにくいが、私もよくわからないので、説明は省略)

 で、問題なのは「すごいおいしい」「すごいきれい」だ。
 「きれい」は形容詞と思っている人が多い気がするが(私もそうだった)、形容動詞、形容詞のいずれも用言(自立語で活用があり、単独で述語と成れるモノ)である。用言を就職する場合、形容詞は連体形ではなく連用形にすべき。つまり、「すごくおいしい」「すごくきれい」というのが正しい。
 テレビでバラエティの芸能人が「すごいきれい」とか言うのは、これだけこの表現が氾濫している現在では仕方がないと思う(学者も“言葉は変化するモノ”と言っているし、新しい表現も続出している)。また、街角インタビューでは「すごいきれい」と発しても、字幕では「すごくきれい」と記されていることが多い。
 でも、最近では話のプロであるアナウンサー(キャスター)が誤用しているのが見られるようになったのは残念。

 《「全然」は否定的な強調のみ》という牙城は守ってほしいなあ。

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4 コメント

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つい、食い付いてしまいます (zoran)
2024-10-21 14:54:58
英さん、こんにちは。

こちらの記事をすべて読んでいるわけではないのですが、この手の話題は久々ではないでしょうか?大好きなので、つい、食い付いてしまいます。

さて、"全然"ですが、手元の電子辞書の大辞林によると、(少し省略しますが)第1の意味として「(否定的な語を伴って)全く」、第2の意味として「すべて/すっかり」で、肯定的に使っている漱石や龍之介の例が挙がっています。第3の意味として、「(話し言葉で)非常に/とても」が載っており、こちらが英さんお嘆きの用法ですね。

私としては調べてみて、肯定で用いられる第2の意味があり、漱石や龍之介の時代に使われていることを知り勉強になりました。とはいえ「"全然"の後は"否定"が続く」と教えられた認識はあり、近年主に若者言葉として"全然"が肯定表現の前で"非常に/とても"の意味合いで使われるのは抵抗はあるのですが、若者だけでなく年代問わず普通に使われるので、正直なところ"慣れて"きたせいか諦めつつあります。"すごい"+形用(動)詞も同様です。私自身も、「こんなとき、こうするのはあり?」なんて会話で「"全然"ありですよ!」なんて言ったりしていますから。

言葉の"誤"用法はたくさんあり、例えば"ら抜き言葉"など、もちろん文法的には間違っているのですが、いちいち気にしていると憂鬱になるので基本的には流すようにしています。しかし、テレビから聞こえてくると「✕✕"ら"れる」などと訂正してさしあげていますが。

そんな私ですが、気になっている、聞きながせないでいる"誤"用法が思いつくだけで3つあります。

1つ目は"有効的(ゆうこうてき)"です。これこそ英さんの記事にある形容動詞絡みの"誤"用法で、"有効だ/な/に"という形容動詞の語幹"有効"に"的"を付けた"誤"用法です。スポーツ中継における解説者の発言によく出てきます。"友好的(だ/な/に)"という形容動詞があるので、その音に引きずられて"有効的"と言ってしまうと何かで読みましたが、全て"有効だ/な/に"と言うべきでしょう。どうしても"✕✕的"と言いたいならば、ほぼ同じ意味の"効果的"を使えばよいのですよ。"名詞+的"は正用法ですが、"形容動詞の語幹+的"は恐らく誤用法です。申し訳ないですが、これを耳にすると"✕✕っぽいなぁ"と思います。ぜひ、実況のアナウンサーに訂正してほしいと思いますし、中継前の打ち合わせで「"有効的"はダメですよ。"有効"か"効果的"と言ってくださいね。」って教えてあげてほしいと思います。

2つ目は"可能動詞+ことができる"です。可能動詞とは、動詞に"できる"の意味を加えたもので、"立つ"→"立てる"、"走る"→"走れる"などです。例を挙げないと分かり難いですが、たとえば「"書ける"ことができる」などです。この場合、「書ける」か「書くことができる」と言うべきです。可能動詞に含まれる可能の意味と、"できる"が持つ可能の意味が重複しています。"頭痛が痛い"みたいなものです。これは、NHKを始めとしてテレビ局のアナウンサーでも使うので、がっかりします。

3つ目は、「✕✕"が"売っている」の類です。本来、目的語になる名詞を主語にしていうときは"受け身"表現を使うべきで、「✕✕が"売られている"」と言うべきですが、"売る"だけでなくいくつかの動詞でこの言い方を耳にします。これもかなり普通になってきていて残念です。NHKのアナウンサーも使っていたので、意見を送ったことがあります。

テレビ番組ではよく字幕を用いますが、"ら抜き言葉"はほとんど"ら"を入れて字幕にしています。2つ目、3つ目は字幕もそのままが多い印象です。
それだけ"普通"になっているのでしょう。

長くなり申し訳ありませんでした。

最後に、今日の王将リーグの羽生・菅井戦、菅井さんも好きだし最近絶不調なので応援したいのですが、羽生さんも絶不調なのでやっぱり羽生さんに勝ってほしい、と思ってしまいます。
返信する
コメント、ありがとうございます ()
2024-10-21 16:30:11
>zoran さんへ
>つい、食い付いてしまいます... への返信

 zoranさん、こんにちは。
 食い付いていただき、ありがとうございます。
 《また、細かいこと言っているな》と、皆に呆れられるかなと思っていました。

 「全然」については、仰る通り《これで大丈夫か?》という問いかけに、「全然」を肯定的に使用するのは、私も仕方ないかなあと思っています。

 「有効的」については、全く同感です。
 「友好的」と音と「効果的」という意味の近似に引っ張られて、発っしてしまう誤りという指摘も全く同感です。(これ、“誤用”と書きたかったのですが、“有効的”という言葉自体がないので、誤用と言えるのかどうか……でも、普通、誤用と言いますよね)
 ところが、「ゆうこうてき」とタイピングして返還しようとすると、変換候補に「有効的」が表示されるのです。「有効的…効き目がある。効力がある」(『標準統合辞書』)と。

 この衝撃的事実には大いに疑問を感じるのですが、この「有効的」については、ちらっと書いたことがあります。

 「スポーツ中継、その責任」(2014年10月14日記事) https://blog.goo.ne.jp/ei666/e/4c73a4f5f60bc6a6e9f3b80d1e7c837f
 バレーボール中継で、解説の竹下佳江氏が頻繁に使うんです。「有効的」と。
 《“効果的”か“有効”と言った方が良い》と書きました。
 竹下氏は誰かから指摘されたのかもしれませんが、現在はあまり使わなくなっている気がします。
 ところが、最近、実況アナウンサーが時々使うんです。

 「れる」「られる」は本当にややこしいですよね。
 特にラ行五段活用はその極地です。
 そもそも、「れる」「られる」に4つの意味(使用法)があるのが問題なのですが(尊敬、可能、受け身、自発)。
 「られる」に《尊敬》の意味を強く感じる人が多くて、それを避けるために、「食べれる」という言い方が増えたようですね。
 それに、派生したと考えられる《可能動詞》も紛らわしさに拍車をかけています。
 「走る」はラ行五段活用で、五段活用+「れる」で《走ることができる》という意味になります。
 ところが、五段活用には可能動詞(下一段活用)が派生して存在しているので、「走れる」も存在します。
 この「ハシレル」という音に引っ張られて、「食べれる」もOKと思ってしまうようです。

>「"書ける"ことができる」
 これは初耳です。そんな手間のかかる言い方で間違えるのは、残念です(笑)
 私がよく耳にするのは「書けれる」ですね。

>「✕✕"が"売っている」
 これは確かによく耳にしますし、もしかしたら、私も言っているかもしれません。
 この用法は、もしかしたら、認められるのかもしれませんね。
 というのは、「水が飲みたい」とか「スイカが好き」という表現があります。
 この時の「が」は格助詞ですが、その使用法として
 〔一〕主語を示す
 の例として「水が飲みたい」「手紙が書きにくい」が挙げられています。
 補足説明として、《欲望・好意・可能を表す「が」の示す語を対象物とよぶこともある》と記されています。1985年重版なので、相当以前からこの使い方はあったようです。
 でも、この説明の意味がよく分からないんですけど…
 この使用法は、私は《目的物を強調したいときには「を」の代わりに「が」を使う》と解釈しています。
 私の場合、「○○が好き」を「○○を好き」という方に抵抗を感じます。

 ……羽生九段、少し旗色悪いです……午後4時30分
返信する
補足です (zoran)
2024-10-21 18:35:47
英さん、返信ありがとうございます。

少し補足します。あくまで私の私見です。

「可能動詞+ことができる」の例で挙げた"書けることができる"は、実際に耳にした良い例が思いつかず適当に挙げただけなので、よく聞くわけではありません。例えば「食べる」で挙げると「食べられる+ことができる」になるのですが、実際に使われるときは「食べれる+ことができる」になりがちで、"ら抜き言葉"も絡んでしまうために、複雑になるのを避けるために単純な例を選びました。ただ、意外と「可能動詞+ことができる」の表現はテレビなどで聞かれると思うので、ちょっと意識して聞いてみてください。

"ら抜き言葉"問題は仰る通り「れる・られる」に4つの用法・意味があるために、"可能"の意味をはっきり表すために、むしろ"ら抜き言葉"が"有効的"である(ワザとです)という説があり、"なるほど"と思っています。

格助詞"が"の問題は仰る通りだと思われますが、私は「水が飲みたい」は許容しますが、「スイカが好き」には異論があります。"好き"は形容動詞の語幹で正しくは「スイカが好きだ」なので「スイカが美味(だ)」と同様の表現であり、"目的語になる名詞+が+動詞"の形ではありません。「スイカを好む」の意味で「スイカが好んでいる」を許容するなら矛盾はないのですが、恐らく許容されないでしょう。文字通り、「"主語:スイカ"が(目的語は省略されているが)何かを"動詞:好いている"」の意味に取れてしまいます。例えば若干無理矢理な会話ですが「ここの砂地を好む植物はあるかな?」「スイカが好んでいるよね。」などです。「○○を好き」は私の感覚では本来"ない"表現で、「○○が好き」と「○○を好き」で「○○を好き」に抵抗があるのは自然だと思います。

残念ながら、先ほど羽生さんは負けてしまいました。(18:25)
返信する
こじつけになりますが ()
2024-10-21 20:34:57
>zoran さんへ
>補足です... への返信

 早速の補足、ありがとうございます。

 zoranさんと私の日本語に対するアンテナや周波数が近くて、嬉しいです。
 白状すると、私が“あれこれ日本語検定”があるとすると、私は三段でzoranさんは五段といったところでしょうか?

>意外と「可能動詞+ことができる」の表現はテレビなどで聞かれると思うので、ちょっと意識して聞いてみてください。

 了解しました。意識してみます。

 「スイカが好き」という表現について、私なりに掘り下げてみました。
 ちょっと、論点がズレている気がしますが、「スイカが好き」
 「スイカが好き」という場合、「スイカを食べるのが好き」とか「スイカの味が好き」とか「スイカの皮の縞模様が好き」とか、好きの理由が省略されている(直観的に無意識に)。
 対象が.の場合は、少し複雑かも。
 「○○さんが好き」の○○が羽生九段やスポーツ選手の場合は、羽生九段や○○選手の将棋(プレイ)とか人柄とか顔が好きとなります。要素が複数の場合もあり。
 恋愛対象の場合は、すべて好きの場合もありますし、顔や性格の良さが他の欠点を凌駕して好き(総合的に好き)だと言えるのでしょう。
 「○○が好き」というのは、本来、何かの対象要素を省略して発生した表現。しかも、そういう思考をするのは人間はものすごく多いので、省略が定着した……なんて、こじつけを考えました。
 文法的にはzoranさんの仰ることが正しいと思います。zoranさんの主張を否定する意識は、全然ありません。

 ああ、1勝11敗…… 
 
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