英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『低価格競争』 クローズアップ現代

2009-09-20 20:45:02 | 時事
 小学校の社会の時間、流通の仕組みを習いました。
 農作物や工業製品を商店(小売業)で買うのですが、商店は生産者から直接仕入れるのではなく、いくつもの問屋(卸売業)の手を経て、店頭に商品(製品)が並ぶのだと。
 だから、消費者が手にするまでに、生産時の価格にいくつも利潤を積み重ねられるので、値が高くなってしまう。価格を下げるには作業の効率を高める方法の他に、流通の仕組みを改善するのも一つの方法であると教科書に書かれていた記憶があります。
 「おお、なるほど!」と思ったものです。

 中学では、需要曲線・供給曲線があって、その交点が価格になると習った記憶があります。

 私の経済の知識はこんなものです。大学で専攻しないまでも、勉強すればよかったと思っています。


 さて、少し前になりますが、『クローズアップ現代』が「低価格競争」テーマにしていました。
 失業率は過去最悪、ボーナス・給与減で、消費者の節約志向が強まり、消費減(売り上げ減)が続いている。小売りの現場では、価格を下げて消費者を引き付けようとしている。
 とにかく、「安くなければ買わない」「安くなければ売れない」ということで、価格の下落に拍車がかかっているという状況なのだそうです。

 ジーンズ880円、カップ麺68円といった驚くべき低価格。これは、単に卸業者やメーカの卸値を買いたたいているのではなく、独自にプライベートブランドを開発して価格を下げているというのです。
 通常の製品は、原価+メーカー利益+広告宣伝費+物流費+卸利益+小売利益で製品価格が決まります。これに対して、プライベートブランドは直接メーカーに委託するため、広告宣伝費と卸利益をカットでき、大量発注するため、減価やメーカー利益も圧縮できるので、約30%価格を下げられるというのだそうです。

 番組では、大阪のスーパー3社が共同でプライベートブランドを開発した例を取り上げています。大手食品メーカーと同じ品質のコシヒカリごはん3食パックが298円という自信の価格で売り出されています(通常は100円高)。
 企画部長(役職名は不明)に当たるN氏が、「自信を持ってお奨めできる価格」と胸を張っていました。

 一見、流通の無駄を無くした合理的な方法に思えます。消費者も喜んでいるようです。
 でも、本当にそうでしょうか?
 今まで関わってきた卸業者や広告業はカットされ、メーカーにしてももうけを押さえられています。メーカー、卸業、広告業者も消費者なのです。結局、購買力が低下することになるのではないでしょうか。

 番組は追跡して取材を続けています。その企画部長N氏が市場調査してきた結果、同じような大手メーカーごはんパックが同じ価格で売られていたそうです。
 そりゃそうですよね、ライバルも対抗してくるのは当然の結果です。その結果、ライバル系列も同じように低価格によって苦しむ者が増え、購買力低下に陥ります。

 そして、N氏は「来月投入する新商品の価格では、絶対に負けられない」と考えているそうです。大手食品メーカーを訪れ、価格の調整(下げろ)を打ち合わせします。
 重役会議でも次のような安直な言葉が出ます。「もう少し安く売って、利益が出るように」……○呆ちゃうか?

 仕方ないと思いますが、目先しか考えない戦略です。もう社会全体が蟻地獄ですね。「景気が悪いので、価格を下げるしかない」確かに、そうなのかもしれませんが、それでは景気は良くならないと思います。
 新政府に望むことの一つに、「雇用対策」が挙げられますが、いくら政府が補助金を出したりして、税金をばらまいても、改善はできない。低価格傾向のデフレスパイラルを解消しないと、根本的な解決にはなりません。
 食品について例が上がっていましたが、これが工業製品だともっとたちが悪くて、メーカー自体が中国に発注、あるいは、中国に生産拠点を移しています。


 番組は進みます。
 低価格傾向が続く中、新たな対抗策を打ち出す企業があるとのこと。

 大阪に本社がある大手菓子メーカー、発売から40年間ロングセラーを誇る看板商品のリニューアルに踏み切ったそうです。実名を挙げてもかまわないと思うのですが、NHKさんが固有名詞を出さないので、一応それ一部伏字にします。江○グ○コのポッ○ーです。
 実は、先月、1箱168円から150円に値下げしたばかりだそうです。

 「価格以外で商品をアピールする方法はないか?」
 購買層に近い若い社員を集め、検討チームを結成。
 おお、さすが、江○グ○コ!

 それで出てきた答が「量を増やすこと」でした……………………………………って、それ、同じやないかい!

 「すぐ、なくなっちゃうって声があったんですよ。それで、もっと量が多くならないかなあって」(プロジェクトチームの女性社員)
 小学生か、きみは!

 検討の結果、1本の長さを5ミリ長くし、1箱の本数も2本増やした………そうです………。11%増量した上に図書カードのプレゼントも付けて、お得感をアピールしたそうです。

 開発企画部長のN氏「いたずらに消耗戦を仕掛けるというよりは適正な価格、新しい付加価値をプラスする」と言っていますが、言っていて矛盾を感じないのでしょうか?

 「エコ」の必要性に迫られている現代ですが、低価格なので大量に販売しなければ利潤が出ません。大量生産、大量販売、大量消費のどこがエコなんでしょうか?ゴミ問題も解決しません。以前、レジ袋云々で放電しましたが、レジ袋だけエコにしても仕方がないでしょう。


 画面はスタジオに転換し、経済ジャーナリストが解説します。
「消費者が買えなくなっている」いろいろ、数値を出して、平均的な4人家族で1日1000円でおかずを賄わないといけないそうです。そういう現状では、低価格志向に走らざるを得ないと力説。まあ、力説されるまでもなく、実感しています。

 同じ内容で安かったら、安いものを買うのは当たり前なのです。だから、、それの歯止めをするには、メーカーやスーパーの売り手の方が意識を変えないといけないのではないでしょうか?いい加減、低価格競争の消耗戦をやめませんか?

 さらに、中国餃子問題で食の安全性を重要視した時期もあったのですが、最近は「安全性よりも価格」と言った思考が強まってきていると警告していました。


 番組は、もうひとつさらに、「価格の下落は農作物の生産者を直撃している」と紹介。納豆の生産者T氏が、スーパーのチラシを見て釘付けになってます。
「ああ…○○が57円だ。…57円が出てきたわ………ごじゅふぅ…ななえん……」

 T氏は生産納豆の半分をスーパーに卸しています。スーパーと組むことで大量の販路を確保できるメリットがあるからです。
 3年前、製造原価は35円で、スーパーの販売価格が100円で、T氏の利益が推定35円(スーパー等の利益は30円)でした。現在は、原料費や燃料費の高騰で原価が45円になっていて、値下げが進んでいます。スーパーの販売価格が70円だとT氏の利益はほとんど0だそうです(スーパーは利益を確保)。

 外食産業の低価格競争も農家等に痛手。大手ハンバーガーチェーンにレタスを納入する化工場は、年間で一定の価格で一定量のレタスを納入する契約を結んでいます。一定量(大量)のレタスを販売できるメリットがありますが、最近では、その契約価格は抑えられる一方で、契約料だけが増え続けているそうです。
 さらに、作物が不作であっても、契約料は納めなければならないので、他の農家から高い価格(4倍の価格の時もある)で購入するはめになるそうです。1日100万円の赤字を出しながら、契約を守ったそうです。

 番組では、割と収入のある家庭でも将来に不安を感じて、買い控えている。政府がしっかりした将来の展望を提示する必要がある。
 国内だけではどうしようもないので、アジアの成長力を国内に取り込む努力をしなければならないと、一応の方向性を示していました。

 「クローズアップ現代を見て、暗くなるの巻」でした。

 今回の私の主張は、世界的な競争力については完全に無視しています。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする