カンボジア経済

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カンボジアLDC卒業に向けて 自由貿易協定利用の検討を

2024年06月06日 | 経済
 5月24日、日本貿易振興機構(JETRO)は、「カンボジアLDC卒業に向けて、EPA・FTA利用の検討を」と題するレポートを発表しました。著者は、ジェトロ・プノンペン事務所の藤田奈緒氏です。
 カンボジアは、2029年に後発開発途上国(LDC)から卒業する見込みです。LDC卒業により懸念されるのは、LDCに対して認められる優遇措置が受けられなくなることです。開発途上国・地域の経済発展を支援するため、それらの国・地域を原産地とする輸入品に対して低い関税率を適用する「特恵関税制度」を日米欧の先進諸国は設定しています。その中でも、特にLDC原産の産品には「特別特恵関税」が適用され、一部の例外を除いて、一律無税・無枠の優遇措置が与えられています。
 3年に1度、LDCリストの審査を行う国連開発政策委員会は、カンボジアがLDC卒業基準を満たしていると認定し、2024年3月にLDC卒業勧告を決定しました。卒業準備期間は、通常3年のところ、カンボジアは5年の準備期間を認められたため、正式にLDCを卒業するのは2029年となる見通しです。
 レポートでは、カンボジアのLDC卒業に伴う特別特恵関税資格の喪失に備えて、最恵国待遇(MFN)、一般特恵関税(GSP)、経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)等の税率を比較し、カンボジアからの輸出への影響を分析しています。
 その上で、実際に特別特恵関税を適用してカンボジアから日本へ輸入されている品目のうち、輸入額の大きかった上位10品目の各種関税率をみると、多くの品目で日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定・地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の利用により、無税措置が継続できるとしています。また、これらの協定で関税率が段階的に撤廃または引き下げとなる品目もあるとしています。例えば、革製バッグ類、合成繊維製女性用ズボン、革靴は、いずれもRCEP協定税率が現時点で無税ではありませんが、順次引き下げられて2036年4月1日からは無税となるとしています。
 カンボジアのLDC卒業に伴う特別特恵関税資格の喪失は、日系企業を含めてカンボジアの輸出産業には大きな課題となりつつあります。カンボジア政府は、自由貿易協定をより多くの国と締結するため努力を続けています。また、輸出企業には、既存の自由貿易協定を最大限活用して、低関税・無税での輸出を行うことが期待されます。
 このレポートは、品目別の税率表も含んでおり、大変わかりやすい好レポートです。ぜひご一読ください。

日本貿易振興機構のサイト
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2024/a3eb9133a429823d.html


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