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にれっちのつれづれ日記

本州最北端の小児科医にれっちの独り言(^^)

ホクナリンテープは咳止めではありません:再掲載です

2020-09-18 09:30:13 | 病気のはなし

★とても大切なことなので、過去の記事を再掲します★

マイコプラズマやRSウイルスなど咳が主要症状の感染症が増えてくると、来院時に胸にホクナリンテープ(一般名ツロブテロール貼付剤)を貼っているお子さんを見受けることが多くなります。
「お子さんは喘息と言われたことがありましたか?」と聞くと「いいえ、咳がひどいので貼りました」というケースが大多数です。
「どこを受診して、どういう病名で処方されたのですか?」と聞くと、「耳鼻科です」とか「以前もらったのを貼りました」という答えが返ってきます。
「ホクナリンテープは本来は喘息で狭くなった気管支を広げる薬で、咳を止める働きはないって知っていますか?」と聞くと、「えっ?そうなんですか??」と初めて聞いたような反応をすることも多くみられます。
つまりは、気管支が狭くなっているという状態かどうかの確認もせずに使われていることがとても多いということです。

これは主に処方する医師の側の問題です。
以前のような(私自身もやっていた)「出ている症状を消してしまおうと、一つ一つの症状に薬を当てはめていく」治療をしたり、「なんとなく効果があったようだからと経験に頼って」薬を出すことが、目的に叶わない処方になるのでしょう。
簡単に言えば、鼻水が出たら鼻水止め(抗ヒスタミン剤)、咳が出るから咳止め(鎮咳剤)、痰があれば痰切り(去痰剤)、熱が出たり・喉が赤かったり・鼻汁に色がついたら抗菌剤、咳がひどかったらホクナリンテープ(気管支拡張剤)という、市販の風邪薬の医療バージョンのことです。

咳が出ると言っても原因は一つではないのですから、本来その機序(何故そうなる?)に応じて治療が組み立てられなければなりません。
もしも鼻水がうまくかめなくてすすり上げたり飲み込んでしまったりして、それを出すために咳をしているのならば、それは鼻掃除の咳ですから、咳を止めることが良い治療とは言えません。
部屋の湿度を高くして、水分を十分に摂って、去痰剤で鼻を柔らかくしたうえで、鼻水をかませたり吸ったりして喉に落ちるのを減らせば、咳は勝手に減っていくはずです。
鼻が詰まったり、喉がカサカサしたりして、それが刺激になっている咳も同じことですね。
そうした原因に対する対処をしているのにもかかわらず、咳が多すぎて辛くて困っているというならば、その時は鎮咳剤で和らげることも悪くはないでしょう。
一方で喘息があって気管支が狭くなって息苦しいために咳込んでしまっているのならば、鎮咳剤は役に立たず、気管支を広げてあげることで呼吸が楽になって、結果として咳が静まります。
ここがホクナリンテープ(気管支拡張剤)の出番です。

このいずれの場合にも、鼻水止めと呼ばれる抗ヒスタミン剤には出番はありません。
第一の理由は、鼻水は鼻に入ってきた異物を包んで外に排泄するためのもので、悪い症状(無くせばよい)とは言えないからです。
第二の理由は、抗ヒスタミン剤を使うと分泌が多少減りますが、それ以上に鼻や口が渇いて、かえって咳を誘発する可能性が高くなるからです。
では抗ヒスタミン剤は何のためにあるの?というと、アレルギー症状をコントロールするためと考えるのが良いでしょう。
花粉症、鼻炎、蕁麻疹などのアレルギーは、本来反応する必要のない物や状況に過敏に反応して起こっているので、身体にとって有益ではないので薬で症状を消すことが良い結果に繋がるのです。

一口に「たかが風邪」といっても、実はとても奥が深い、難しいものなんですよね。
医療者と患者さんが協力して、よりよい治療を行えるように、これからも努力していきたいと思います。


熱中症対策に水分補給は大事、でもスポーツドリンクには要注意!!

2020-08-11 20:58:24 | 病気のはなし

全国的に猛暑に突入してしまいました。

コロナでマスク着用も増えている中なので、熱中症がとても心配な状況ですね。

水分と塩分をしっかり摂りましょう!!というのは正しいのですが、問題はどうやって摂るかです。

水や麦茶などは水分は摂れるけれど塩分が入ってないから、スポーツドリンクがいいんじゃない??

そう思うあなた、実は危険です!!

というのは、スポーツドリンクは運動をした時の水分とエネルギー補給のためのものなので、表のように塩分が少なく、糖分たっぷりの物が多いのです。

熱中症予防に飲むなら、胃腸炎の時などに使う経口補水液(代表がOS-1)にしましょう。

ちなみに、500mlのペットボトルに塩1.5gと砂糖10gを入れて、レモン汁などでチョット味付けをすれば同等のものが格安で作れますよ!!


コロナ対策にポビドンヨードでうがい・・・ はお勧めしません!

2020-08-05 07:45:44 | 病気のはなし

大阪府の吉村知事が「コロナ対策にポビドンヨードでうがい」という発言をしたようですが、残念ながらお勧めできる対策ではありません。

ポビドンヨードは強力な殺菌性を持つ消毒剤で、手術など無菌的操作の必要な処置などの際には大きな効果があるのですが、人体に有用な細菌等も根こそぎ殺菌してしまうことや、主成分のヨード(ヨウ素)が甲状腺機能に影響を与えることから、感染防止のための頻回のうがいに使用することには問題があると言われています。

実際に健康な成人を対象とした実験では、①水でうがいをするグループ、②ポビドンヨードでうがいをするグループ、③特にケアをしないグループ(対照群)で、その後60日間でどれくらい風邪をひくリスクが変わるかを調べたところ、水のみでうがいをするとうがいをしないグループよりも風邪にかかる確率が下がったものの、ポビドンヨードでうがいをするグループは効果が認められなかったという結果が示されています。

今回の大阪府知事の発言の基になったのは、大阪府のはびきの医療センターの「府内の新型コロナウイルス宿泊療養所で軽症者41人に対しポビドンヨードを含むうがい薬でうがいを1日4回したところ、唾液のPCR検査の陽性率が9%になったが、うがいをしなかった患者は陽性率が40%だった」というデータのようですが、これは消毒をした口腔内で一時的にウイルスが消失したということであって、口腔内以外のウイルスに効果があるというものではないので、決して通常の予防対策として有効であるというものではありません。

中途半端な情報に振り回されて真似をしてしまわないように、まずは三密を避ける、近距離ならマスク(とメガネ)、適宜の手洗いやアルコール消毒を心がけるようにしましょう。

  >>> こちらが参考になります↓↓↓

『ポビドンヨードによるうがいは新型コロナを改善させる』は本当か?医師が解説(堀向健太) - Yahoo!ニュース

『ポビドンヨード(商品名イソジン)のうがいにより新型コロナウイルスの量が減る』という発表が、波紋を呼んでいます。現場の医師からみると、ちょっ...

Yahoo!ニュース 個人

 

 


チャイルドシート利用の時は、貴重品は後部座席に

2020-07-17 11:27:06 | 病気のはなし

また痛ましいニュースが、、、

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車内で熱中症か、乳児が死亡 生後11カ月、福井・永平寺 (共同通信社)

 16日午後1時5分ごろ、福井県永平寺町の30代の母親から、生後11カ月の女児が車内でぐったりしていると119番があった。町内の病院に搬送されたが死亡が確認された。熱中症とみられる。
 永平寺町消防本部によると、車は自宅の駐車場に置かれ、エンジンは停止していた。母親は、女児が2時間ほど車内にいたと話しているという。救急隊が到着した際には車外に出されていたが、ぐったりとして意識はなく、心肺停止状態だった。
 福井地方気象台によると、同日午後1時の福井市の気温は27.8度だった。

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「子どもを車内に残したってかまわないよね」って思って放置する親はいません。(もしもいたら虐待です)

たまたまいつもとは違った手順を踏んでしまったために、子どもを降ろすのを忘れたことを忘れた(ここがポイント!!)ことから起こる事故です。

これは注意していれば防げるものではなく、「忘れたことに気づくための手順をルーティン化する」ことしか個人ができる予防方法はありません。

そのための具体的な方法の一つが、「貴重品は後部座席に置く習慣をつける」ことです。(ネットで見つけた方法です)

そうすれば、貴重品を取り出すときに必ずチャイルドシートが目に入りますよね。

誰にでもすぐに実行できて、お金もかからず、デメリットは面倒なだけ。

ぜひ痛ましい事故を防いであげてください。

でも、これだけITが進化しているのですから、チャイルドシートに子どもが乗っていたら、エンジン切るときにアラーム鳴るとか簡単にできるんじゃないのかと思うのは、私だけなんでしょうか。。。


夏です!水遊びにはライジャケを忘れずに!!

2020-07-10 14:40:30 | 病気のはなし

いよいよ夏が来ましたね。

新型コロナの流行でなかなか遠出はできないといっても、やはり暑い夏は水遊びがやりたくなりますよね。

そんな時必ず忘れてほしくないのが「水の事故」です。

子どものことを注意してみているから大丈夫???

いえいえ、その注意が外れてしまった一瞬に起きるのが事故なんです。

だから「万が一水に落ちても溺れて命を失わないように準備する」のが大事。

水遊びにはライジャケを忘れずに!!



カゼに抗菌剤は不要です:抗微生物薬適正使用の手引き第2版

2020-07-07 15:05:06 | 病気のはなし

厚生労働省が「漫然とした、根拠のない抗微生物薬の使用による副作用の発現や耐性の増加を防ぐため」に策定した「抗微生物薬適正使用の手引き」が昨年末に改訂されました。

今回はその内容について、ダイジェスト版から小学校入学前のお子さんの急性気道感染症(カゼや気管支炎)の部分を紹介します。

1.感冒・鼻副鼻腔炎: いわゆる鼻カゼのことです
◎下記をすべて満たす場合は、抗菌薬は不要
 ・症状は鼻汁、鼻閉、発熱、軽い咳(のいずれか)
 ・呼吸障害はない
 ・全身状態が良い
 ・熱が3日以内
 ・鼻汁は10日以内
 ・湿性咳嗽(湿った咳)が10日以内

2.急性咽頭炎: のどが真っ赤になったり、扁桃腺に膿のようなものがつく
◎溶連菌感染症を疑う場合以外は、抗菌薬不要
下記の症状が急激に出てきたときは緊急受診を!!
 ・痛みでつばも飲み込めない、口を開けられない
 ・首を動かすことができない
 ・呼吸困難や喘鳴(ゼーゼー)

3.クループ症候群: 主に夜間にみられる犬やオットセイが鳴くような咳、声かすれが特徴
◎診察で軽症と判断されたなら特別な治療は不要
◎安静時に吸気性喘鳴(息を吸うときにゼーゼー・ヒューヒュー)があれば、吸入やステロイド内服
下記の症状が出たときは緊急受診を!!
 ・呼吸が早く荒い
 ・苦しくて横になっていられない
 ・肋骨の間やのどの下(鎖骨の間)が息を吸うときに凹む
 ・顎を突き出すような姿勢、よだれ

4.急性気管支炎: 痰が絡む場合も乾いた咳だけの場合もあります
◎百日咳・クラミジア・マイコプラズマを除けば、原則抗菌剤は不要
◎発熱や咳が長引く、聴診で呼吸音に異常がある、全身状態が良くない場合は検査が必要

5.細気管支炎: 主に2歳未満で、ゼーゼー・ヒューヒューして呼吸が苦しくなりやすい
◎RSウイルスなどによりおこり、年齢が幼いほど重症になりやすい
下記の症状が出たときは緊急受診を!!
 ・呼吸が早く荒い、顔や唇の色が悪い(青白い)
 ・苦しくて横になれない、水分を取れない
 ・肋骨の間やのどの下(鎖骨の間)が息を吸うときに凹む


マスク着用での運動は危険です

2020-06-10 15:21:43 | 病気のはなし
新型コロナの流行で、マスク着用が当たり前のようになっていますが、これからの季節はちょっと気を付ける必要があります。
マスクをすることで呼吸がしづらくなり、そのために酸素の取り込みや二酸化炭素の掃き出しが不足したり、呼吸による熱放散ができないために体温が上昇したりして、マスクを着用しているだけで熱中症の危険度が高くなるからです。
特に運動をするときにマスクをつけていると、そうしたマイナス面が大きく影響しやすくなるので注意が必要です。
マスクをすることで飛沫拡散を減らして周囲への感染を防ぐことは大切ですが、ソーシャルディスタンス(およそ2m)を意識すればよいのですし、接触感染についても、むやみに手で顔を触らない、沢山の人が触れる場所を触ったときはなるべく早めに手洗いかアルコール消毒をする、ということで対応ができます。
青森県内で全く患者さんが見つかっていない現状なのですから、「なにがなんでもマスク着用」と考えずに、状況に応じて上手に利用していきましょう!

2歳未満の子どもにマスクは不要、むしろ危険!

2020-05-25 18:25:47 | 病気のはなし
新型コロナの流行で、マスクと手洗いはすっかり定着したようですが、ちょっと気になるのが小さいお子さんのマスクです。
マスクは、自分が感染しないための手段ではなく、他人に感染させないための手段です。
感染の可能性が極めて低く、周囲の大人から感染するのが圧倒的多数な乳幼児においては、マスクの効果はあまり高くない上に、呼吸がしずらくなるマイナス面もあるため、世界的にも赤ちゃんや幼児期早期(2,3歳まで)の子どもへの使用は不要・危険と考えられています。
お子さんのコロナ感染を防ぐのは、大人のマスク、手洗いと環境の消毒、そして不要不急な場への外出・参加を控えることです。
まだまだ第二波、第三波が心配される中、自分が出来ることをしっかりやって備えましょう!

 ●日本小児科医会のパンフレットは下↓↓↓をクリック!

コロナが心配なら、検査よりも行動自粛が大事です

2020-05-10 20:27:17 | 病気のはなし
先日の十和田市立中央病院のコロナ院内感染、一旦落ち着いたように見えて、当初PCR検査陰性だった濃厚接触者がその後発病し陽性に転化しました。
もともとPCR検査の感度(陽性的中率)は高くても70%、つまりは感染しても30%の人は検査で見逃されるのですから、ある意味当然起こりえることだったと言えると思います。
病院側もそんなことは十二分に承知していたでしょうから、最初の検査で陰性となった後も自宅待機を続けていたそうで、今回の件での周囲への感染拡大の可能性は低そうです。
このことから私たちが学ばねばならないのは、「PCR検査陰性は非感染の証明には全くならない」ということです。
そして、周囲への感染拡大を防ぐには、風邪かなと思ったら自宅待機すること に尽きるということでもあります。
幸いにも感染しても、症状がない不顕性感染やごく軽症で済むことが圧倒的に多いことが分かっています。
先ずは自宅で待機して経過を観察、症状が重くなって行ったり、長引いたりするようなら医療機関や保健所に相談をするようにしましょう。
ちなみにどんぐりでは、発熱しているお子さんでも、2週間以内に住居地外への外出や来客等がない、あっても感染の可能性は低いと思われる場合には診察を行っています。
症状が心配な時には、まず代表電話24-5656に連絡して相談をしてくださいね。

人から言われたからじゃなく、自分で考えて決める

2020-04-28 13:22:16 | 病気のはなし
新型コロナの全世界的流行で、多くの方々が「コロナは怖い」と感じながら生活していることと思います。
ただ、ちょっと気になるのは、あちこちで「非難」の嵐が吹いていることです。

●県外への移動を避けましょう! ・・・ 県境や主要駅での検温、県外からの人お断り、県外ナンバーへの嫌がらせ、、、
●三密を避けましょう! ・・・ 公園の閉鎖、マスクをしない人への非難、営業を自粛しない店舗への非難、、、
●感染者発生! ・・・ どこのどいつだ、濃厚接触者は誰だ、関連あるかもしれないやつは来るな、、、

確かに不安な気持ちは分かるのですが、少し冷静になって考えなくては、これではまるで魔女狩りですよね。

でも、
●県内なら安心なわけではないし、県境をまたいで通勤している人がいます、出張や営業車で県外ナンバーの人もいます。
●外出すべてがダメじゃなくて密な接触を避けましょうです、マスクよりフィジカルディスタンス(2m以上)が大事です、営業しなければ倒産する心配だってあります、、、
●感染したくてした人はいません、誰が感染しているかわからないからどこで感染するかはわかりません、疑い始めたら人を見たら泥棒と思えになってしまいます。

また、国が決めたことや専門家の見立てが、正しいことばかりとは限りません。(もちろん責任逃れのような言動は非難されるべきですが)
特に「お題目」や簡単な解説だけを鵜呑みにしてしまうと、本当に必要なことが見過ごされてしまうことだってあります。

ここで大切なのは、人から言われたことを鵜呑みにするのではなく、それを
自分の頭の中でもう一度よく考えてから行動に移す
ことです。

私は次のように考えます。
●県外への移動を避けましょう! ・・・
  県内外を問わず、移動に伴ってウイルスを運んでいるかもしれません

●三密を避けましょう! ・・・
  出来れば外出を控え、必要な外出時は他者との距離を2mとりましょう

●感染者発生! ・・・
  今まで以上に「自分が他人に感染させない」ことを意識しましょう